ジェンダー平等を実現するために、いかにブロックチェーンを活用できるか?【国際女性デー】

デネル・ディクソン(Denelle Dixon)氏はステラ開発財団(Stellar Development Foundation)のCEO兼エグゼクティブ・ディレクター。同財団は世界の金融インフラをつなぐオープンソースのブロックチェーンネットワークであるステラ(Stellar)の開発と発展をサポートする非営利団体だ。ディクソン氏は以前はモジラ(Mozillar)のCOOを務めていた。

ブロックチェーンは世界を変える

ブロックチェーンには世界を変えるパワーがある。世界をつなげるパワー。世界をより公平で、よりオープンにするパワー。ブロックチェーンは、かつてなかった方法で大規模な金融包摂を促進し、経済参加を解き放ち、金融サービスを民主化する可能性を持っている。

よりアクセスしやすく、オープンな金融システムを作るためにブロックチェーンを使うことで、我々は、特に現在のインフラから取り残されたり、十分なサービスを受けていない人々にパワーを与えることができる。

それはつまり、ブロックチェーンを使って、経済的に最も取り残された人々にパワーを与えることを意味する──女性だ。そして3月8日の国際女性デーは、ブロックチェーンが女性にもたらす影響を議論をするには最適なタイミングだろう。

なぜなら現実的には、女性は既存の金融システムから不釣り合いに除外されているから。女性は世界的に、男性よりも高い割合で銀行サービスを十分に利用できていないか、あるいは、まったく利用できていない。

文化的あるいは地域的な規範、金融教育の欠如、公共セクターでの雇用の不足といった数多くの要素のために、女性はしばしば金融サービスを利用したり、金融サービスへのアクセスを持っていない可能性が高い。

そのために多くの女性──一般的に銀行を利用できない成人女性──は、貯金を自宅に保管したり、日常的な支払いのためだけに長距離を移動するといった、非効率で不安定な金融的な選択肢に依存せざるを得ない。

しかし研究は、女性が金融サービスにアクセスできると、その波及効果はそうした女性のみならず、家族、コミュニティ、そして国家にとってもパワフルなものになり得ることを明らかにした。

幅広い金融サービスへのアクセス可能で、それらを利用できることは、女性たちや女性たちが率いる企業の経済成長への貢献を高めるのみならず、女性の自立にも貢献する。女性個人および家計のリソースをより良く利用することが可能になり、家計や企業の脆弱性が緩和される。

つまり、大規模な金融包摂によって女性にパワーを与えることは、ほぼすべての人にとって良いことだ(国連も同じ意見。国連の持続可能な開発目標の目標5を確認してみてほしい)。では、いかにして我々はそれをブロックチェーンを使って実現するのか?

ステラ開発財団では、ブロックチェーンはパラダイムを変換させ、より大規模な金融包摂の世界において、いくつかの重要な方法で十分なサービスを受けられていない人々──特に女性にパワーを与えることをサポートできると考えている。

金融包摂はアクセスギャップを埋めることから

女性はしばしば、インフォーマル・セクター(非公式な経済活動分野)での収入、身分証明の欠如、不十分な担保、移動の制限、限られた金融リテラシーといった体系的な問題のために伝統的な金融サービスから遮断されている。

だがブロックチェーン技術──新しい方法でアイデンティティを生み出し、法定通貨と仮想通貨の交換サービスを提供する場を提供する──には、そのギャップを埋め、女性と女性が暮らすコミュニティに金融サービスを利用可能にする新しいアイデアがある。

ブロックチェーン技術は、世界の既存の金融ネットワークにおける金融取引をデジタル化する、統一された普遍的な方法を提供することによって、これを実現する。

ブロックチェーンは国境を取り除き、開放性を生み出し、正式な金融システムとの相互運用性を確保し、十分な銀行サービスを受けられない女性がよく利用するような非公式の金融ネットワークさえも取り込む。

例えば、ハイブオンライン(Hiveonline)が国際NGOのCAREの村内貯蓄貸付組合(VSLA:Village Savings and Loan Association)と共同で行っている取り組みを見てみよう。

CAREのVSLAは現在47カ国で女性を中心に670万人を対象している。VSLAは巨大な非公式の金融ネットワーク。いかなる国際的、ときには地域的な金融インフラとさえまったくつながっていない。

個人、特に女性が伝統的な金融を利用するための障壁を認識し、ハイブオンラインはVSLAの取引をオンラインで行うためにブロックチェーンを使い、参加者のアクティビティの変更不可能でアクセス可能な記録を作り出している。記録は金融機関と共有可能な金融履歴を作り出し、より良いクレジット、保険、貯蓄商品へのアクセスを可能にする。

ハイブオンラインは、女性のような銀行サービスを十分に、あるいはまったく利用できない人々から構成される非公式な金融コミュニティと公式の金融システムの間をつなぐ。これがブロックチェーンのパワー──金融サービスと世界の金融インフラを公平なアクセスとなるような形でつなぐことができる。

出典:HIVEプロジェクト

時間とお金を節約

ジェンダー間の賃金格差(世界的に見ると、女性は平均で男性よりも0.23ドル賃金が低い)と、女性が労働市場にアクセスしようとする時に直面する困難にもかかわらず、女性の移民労働者は世界の6000億ドル以上の送金の半分を担っている事実は力強いものだ。

この比率は女性が家族にとって、おそらく特に海外で働いている場合でさえ、大切な役割を果たしていることを証明している。しかし現在の国際金融システムでは、送金には時間もコストもかかる。

ブロックチェーンはそうしたクロスボーダー決済をより迅速に、より低コストにできる。送金コストは、数ドルから何百ドルではなく、わずか1セントにも満たない。送金には数日ではなく、数秒しかかからない。

スマートフォンにアクセス──多くの場合、女性にとって金融機関よりもアクセスしやすい──することによって、女性は収入をより簡単に送金したり、投資できる。一方、時間、コスト、そしてもちろん労力を節約できる。だが、私はジェンダーギャップは情報格差にも及んでいると認識している。

経済的自立に力を与える真の所有権

金融サービスへのアクセスの欠如はしばしば、不平等や従属関係と密接に関連している。ブロックチェーンは多くの面で保有しているお金と価値の所有権とコントロールに関連している。所有権は経済的自立に力を与える。女性にとって、所有権は新しいレベルの主体性を意味する。つまり、自分自身で決断するという力を持つことを意味する。

金融包摂を促進するためにブロックチェーンを使うことに、我々が関心を持つ理由は明らかに数多く存在する。

そして国際女性デーにあたって、我々は、ブロックチェーンはジェンダー平等を推進するさらなる金融包摂を実現する可能性をどれほど持っているかを示したい。

女性は国際経済の健全性と発展の核。大規模な金融包摂は、お金を貯め、資産を築き、日々の生活をより楽にする安全な場所を与えることで、女性、家族、コミュニティを貧困から救うきっかけとなり得る。つまり、子供たちの健康の増進、より公平な教育、労働市場への参加の拡大、より多くの女性起業家や女性経営者につながる可能性がある。

女性、そしてすべての取り残された人たちは、国際金融システムに平等にアクセスすべきだ。この取り組みは我々のミッションの核。ステラ開発財団では、我々は世界を変えることを望んでいる。

ブロックチェーンは金融包摂を実現し、女性と世界のための経済参加に力を与えることを証明することに我々は力を注いでいる。

皆で力を合わせれば、実現できる。

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
写真:Denelle Dixon
原文:How Blockchain Can Be Used to Promote Gender Equality