GAFA繁栄の3つの大弊害。それでも人がデータを提供する理由【増島雅和弁護士】

GAFA繁栄の3つの大弊害。それでも人がデータを提供する理由【増島雅和弁護士】

Brady Dale
公開日:2019年 4月 17日 06:00
更新日:2019年 9月 17日 11:21

グーグルやアマゾンなどの巨大プラットフォーマーに対する規制強化の動きが強まっている。政府は今年3月にGAFA(Google、Amazon.com、Facebook、Apple)の体制を検討する準備室を立ち上げた。6月に開催されるG20大阪サミットの議長国である日本は、巨大IT企業をめぐる議論の主導権を取る狙いがあるとも言われる。

膨大なデータを利用して、デジタル領域における覇権を握り、独占的な地位をさらに強めているGAFA。政府は公正な競争環境を整備するためのルール作りを進めていく方針だ。

GAFAは株式市場でも圧倒的な規模を誇る。4社を合わせた時価総額(グーグルは親会社アルファベットの時価総額)は3兆ドル(336兆円)を超え、世界第5位の経済大国イギリスのGDPを上回る。CoinDesk Japanは、M&A(合併・買収)や企業再編、資金決済法、個人情報保護、知的財産権などに詳しい森・浜田松本法律事務所の増島雅和弁護士に話を聞いた。

森・濱田松本法律事務所の増島雅和弁護士

GAFAはいずれ崩れ去るのか?

──「GAFA覇権」とも言うべき巨大プラットフォームの力が強まる一方、それに伴う社会的課題が見られるようになってきました。

増島:デジタルプラットフォームというビジネスモデルは、複数種類の異なるプレイヤー群のニーズをマッチングさせることで価値を生み出すモデルです。データを中央に集めてマッチングさせますので、 経済的には効率性の高いものです。 マーケットというのは常にそのような構造になっているわけですが、 中央に集中した方が分散型よりも効率が良いということになります。

GAFAはいかんという流れがありますが、こうした中央集権的なものがなくなるのかというと、なくなる方向に行っていないし、今後もプラットフォームというモデルは重要なものであり続けると思います。

グーグルやFacebookの他にも、ライドシェアでも大きな動きが見られます。移動におけるプラットフォームは、リアルだけれども結局のところは先ほど指摘したデジタルプラットフォームの要素を全て持っています。

サイバー空間で完結しようがしなかろうが、またデバイスの形が変わろうが、データを集中する場所があって、そのデータを処理することによって予測をすることで価値を高めるという基本的なモデルは、引き続き残ると思います。

人工知能(AI)がここまでパワフルになり、予測マシンとしての可能性に対して社会の期待が高まるなかで、あまり「プラットフォームはなくなる」という議論をしている人は多くないように思います。AIはデータを食べさせないと予測できませんから、データが集中的に集まる中央集権的なモデルに合うという話になってきます。

怠惰・便利と中央集権との相性

──AIが中央集権的モデルに合致する一方、実社会ではローカルな経済圏をつくろうだとか、分散化の動きが見られるようにもなってきました。

増島:AIが中央集権型であるのに対して、ブロックチェーンは分散型です。ブロックチェーンによってデータを分散して保存できるという世界があり得るわけですが、これと予測マシンとしてのAIとはどのような関係に立っているかというと、やはりデータの位置づけについて基本的な方向性が異なるということなのかもしれません。

世界はこれからどちらに向かうのかと聞かれたら、人は基本的に怠惰で便利な方に流れる傾向にあります。あえてデータを分散させて、「個人は自律的にすべてを決めていくもの」としていくのは、一部の意識の高い人には受け入れられるのかもしれません。

一方、残りの9割の人は楽で便利な方法が良いと思うのではないでしょうか。自分のことを全部自分で決めていく、自分のデータを自己責任で全部管理していくというのは、理想的かもしれませんが、結構大変なことなのです。

プラットフォームが崩れ落ちて、ブロックチェーンを用いてデータが分散的に管理されていて、個人が自律的にベンダーへの情報提供を選ぶ世界が来るという世界は、僕の人間観が悲観的なだけなのかもしれませんが、怠惰な人類の歴史を振り返ると、ちょっと考えにくいように思います。

インターネットの初期に、「検索」というビジネスモデルが生まれました。サイバー空間はメッシュ型でどこかに中心(ハブ)があるということはありませんでした。

しかし、検索というモデルが登場し、そこにいったんクエリ(query=「問い合わせる」の意味で、ITではソフトウエアに対するデータの問い合わせや要求を文字に表現すること)という形でデータが集まり、そこから別の場所に飛ぶという形になると、ネットワークに強力な中心(ハブ)ができます。

これに対し、分散型の概念を持つブロックチェーンがGAFAに対して一撃をくらわすということを想像する人も出てきています。そのようなことはあるかもしれませんが、ブロックチェーンネットワークの中でまた誰かが覇権を握るということが起こり得るのだと思います。「これからは分散だ」と言う人の多くは、今までの中央を否定するものの、自分が新たな中央の主体になりたいと思っているだけなのかもしれません。

電気通信事業法上のGAFA規制

──日本政府はどこまで本気で、GAFAを規制しようとしているのでしょうか?

増島:国は結構、難しい立場にあると思っています。GAFAだけを狙い撃つというロジックは成り立ちませんよね。GAFAは確かに日本でも大きな存在ですが、ならば楽天は、ヤフージャパンはどうなんですか?という話になりますよね。

日本のローカルなプラットフォームも、大量のデータを獲得・駆使してマーケティングをしているわけです。その意味で、やっていることの本質は、GAFAとあまり変わりませんよね。GAFAを抑圧しても自分の国に返ってくる話で、自国の新しいビジネス基盤が弱くなってしまいます。

日本は欧州などよりももう少しアメリカ側に立って全体を見ようしていますから、別にGAFAをぶっ潰せみたいな話にはなっていません。それよりも、コア拠点が外国にあって国内には単にマーケティング部隊しかないグローバル企業と、日本国内に拠点を置く企業との間でのイコールフッティングの問題に着目していると思います。

問題の一つが税金で、これら海外拠点企業は日本からずいぶん儲けているのに日本に税金を払わない。もう一つは、電気通信事業法上の問題。この法律は国内に電気通信設備を持たない企業には適用されないわけです。この法律は基本的に通信の秘密を守るためのルールですが、この点で日本と海外のプラットフォームには法適用のされ方が異なるということになっています。

例えば、グーグルやFacebookは、日本はマーケティング拠点であって、電気通信設備は置いていませんというふうにしています。しかし、彼らの提供するメッセージングサービスやSNSをはじめとする通信サービスは電気通信事業法上、監督されても良いのではという議論が生まれます。このあたりの議論を、国がどう進めていき、規制を整備していくのかがポイントになっていくでしょう。

GAFAにおける3つの問題

──それでは、GAFAに対してどんな規制が考えられるのでしょうか?

増島:日本からプラットフォームが生まれて国外に出していくということは国益になるわけですから、政府はプラットフォームモデルそのものにネガティブなことを言っているわけではありません。ただ、プラットフォームの力が強大になる中で、その弊害が明らかになりつつあるというのが現状です。

問題は大きく分けて3つあります。

1つ目は、プラットフォーム上でのビジネスに依存している小さな企業に、プラットフォーマーがご無体な条件を押しつける優越的地位の濫用というもの。プラットフォーム上の取引に対して一律に消費者にポイントを付けるということを言いつつ、その原資をプラットフォーム上の事業者に押し付けるといったことが考えられます。

2つ目は、プラットフォーム上でユーザーデータ利用におけるデータ保護の問題。ユーザのさまざまなデータを解析してユーザをプロファイリングして売り上げにつなげていくという手法を取る際に、ユーザに何を事前に知らせておかなければならないのか、といった点が問題となります。

3つ目は、プラットフォーム上で行われた当事者間の取引についてです。プラットフォームのさまざまなデータ解析や検索機能、決済システム等の提供などの助力があって初めて当事者間に取引が生じるというのに、その取引についてはプラットフォーマーには一切責任がありませんというのが、現行法における原則ということになっています。これは本当に公正なのか?プラットフォームもこれらの取引から利益を上げている以上は、何らかの責任を分担するべきなのではないか、という議論です。

営業秘密のアルゴリズム

──このGAFAをめぐる問題解決の糸口はあるのでしょうか?

増島:いずれの問題も、サイバー空間においてアルゴリズムによって行われているものであるため、リアル空間からは何が行われているのか見えにくいという点が、問題の解決を難しくしています。

検索や格付けといった仕組みは、アルゴリズムを少し変えるだけでどの情報を目立つ位置に出すかが大きく変わってくるわけですが、どのようなアルゴリズムになっているのかは外からは分からず、また変更が公正に行われたものであることを担保する仕組みがあるわけではありません。

さらに、プラットフォーマーはその上でビジネスをする事業者と秘密保持義務を締結していますから、なにか不公正なことがあったとしても事業者はなかなかそれを外部に言い出せません。仮にそのようなことをしてプラットフォームから追い出されでもしたら業績が急落してしまいますので、黙っているしかないわけです。

アルゴリズムについては、プラットフォーマーサイドはこれは営業秘密であるという立場から、その内容の開示強制は不適切であるという考えを持っています。秘密保持義務についても、それ自体は実務としておかしなわけではないわけです。だからといって、透明性と公正性という価値がないがしろにされたままでよいのかというと、そうではないだろうということになります。

両者のバランスを適切に取る方法を模索していかなければならないわけですが、そのためには行政が果たすべき役割が大きいように思います。プラットフォームは、ものによって提供するサービスや何をマッチングするのかといった点が大きく異なります。

一義的に定義することは難しいですが、社会的影響が大きなプラットフォームを指定して、指定したプラットフォーマーに透明性と公正性を確保した形でビジネスを行うための計画を出してもらい、その計画が遵守されていることを行政がモニタリングする、といった形での新たなガバナンスの方法が模索されてもよいのではないかと考えています。

インタビュー/構成:佐藤茂
編集:浦上早苗
写真:多田圭佑
取材協力:北原美和