環境省がブロックチェーンを活用したクレジット取引市場「イツモ」創設、22年度からの運用目指す【気候変動×デジタル】

温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証する「J-クレジット制度」を、ブロックチェーンやIoTなどの技術を活用し、より使いやすくするための抜本拡充策が、環境省によって公表された。

この中で同省は、ブロックチェーンを活用したJ-クレジットの取引市場・ezzmo(イツモ)を創設、最速で2022年度からの運用開始を目指す方針を明らかにした。

「気候変動×デジタル」プロジェクトとは?

環境省 発表資料より

環境省が7月28日公表したのは、様々な課題が指摘されていたJ-クレジットを使いやすくするための施策。脱炭素社会の実現に向けて、「いつでも」「どこでも」「誰でも」環境価値の創出・取引ができるJ-クレジット制度にするため、「デジタル技術を活用した各種手続の電子化」、「ブロックチェーンを活用したJ-クレジットの取引市場・ezzmo(イツモ)」の創設を目指すというものだ(図参照)。同省は、「最速で2022年度からの運用開始を目指します」としている。

J-クレジットとは? 指摘されていた課題とは?

J-クレジット制度とは、省エネルギー機器の導入や森林経営などの取り組みによる、CO2などの温室効果ガスの排出削減量や吸収量を国が「クレジット」として認証する制度。創出されたクレジットは、低炭素社会実行計画の目標達成やカーボン・オフセットなど、様々な用途に活用できる。

J-クレジット制度 公式Webサイトより

この制度はいくつかの課題が指摘されていた。たとえば、各種申請手続きには書面が必要で、手続きは人手を介さなければならずコストがかかっていること、クレジット発行量が少ない中小企業や家庭は単独での参加が難しいことなどだ。

佐藤環境副大臣のリードの下で検討

そこで環境省はクレジット発行の手続きをスマート化し、リアルタイムでクレジット取引ができるようにするための環境整備に取り組んでいた。

佐藤ゆかり環境副大臣は昨年11月、「気候変動×デジタル」プロジェクトを会見で公表。この際、「J-クレジット制度」にブロックチェーンやIoTを活用することで、中小企業や家庭を含む日本全体(オールジャパン)が参加し、リアルタイムで取引できるような環境整備を目指す方針を示していた。

その後、同省は佐藤環境副大臣のリードの下、リアルタイム・透明性のある取引の実現、取引を通じた資金還流による地方創生、地球温暖化対策推進法に基づく算定・報告・公表制度などの関連システムとの連携の促進──を目指して検討。企業・プロバイダー・地域金融機関・自治体などに制度に関するヒアリングを実施したり、デジタル技術に知見のある事業者を集めたワーキンググループを開催したりして、現行制度の課題を深掘りし、解決策の取りまとめに取り組んでいた。その結果が今回発表された施策だ。

J-クレジット制度でのブロックチェーン活用のメリット

「ブロックチェーン活用のメリット」(環境省 発表資料より)

施策の中で、ブロックチェーンを活用することのメリットをいくつか紹介した上で、「J-クレジットでの活用可能性」についても言及。(1)高い改ざん耐性や信頼性が確保されたクレジット取引ができること(2)(スマートコントラクトを活用することで)申請・認証などの手続きの簡素化・取引などの自由化が図れること(3)J-クレジット以外の複数のプラットフォーム・企業を巻き込んだビジネスモデルが確立できること──を挙げている。

環境省は従来からブロックチェーンの活用に積極的で、昨年夏には、「ブロックチェーン技術を活用した再エネCO2削減価値創出モデル事業」の社会実装・商用利用に向け、再生可能エネルギーのCO2削減価値のリアルタイムC2C取引プラットフォームの実証に取り組むなどしていた。

文・編集:濱田 優
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