【Consensus2019】「仮想通貨の便利さはテロリストに機会をもたらす」米財務省・次官が警鐘

ハッカー集団による仮想通貨の盗難が世界的に増え続ける中、各国当局は迅速により強固なマネーロンダリング(資金洗浄)の防止策を作り上げることができるのか?

「Consensus2019」カンファレンスで2019年5月13日10時10分(現地時間)に行われた「米国の制裁とアンチマネーロンダリング(AML)を理解する:デジタル通貨の世界が知るべきこと」のセッションに、米国財務省のテロリズム・金融情報分析担当次官のSigal Mandelker氏が登壇した。

Sigal Mandelker氏が登壇。

「送金のスピード、迅速な決済、世界規模での拡大、匿名性の向上など、ユーザーや企業にとって最も魅力的な(仮想通貨の)機能のいくつかは、世界に脅威をもたらすテロ支援国家やテロリストに機会をもたらす可能性がある」

Sigal Mandelker氏は、世界各国がテロ組織として警戒しているイスラム原理主義組織ハマスがビットコインでの寄付を受け入れ始めたことを例に挙げながら、仮想通貨におけるマネーロンダリングやテロへの資金提供を防ぐため規制を遵守すべきとの考えを示した。

財務省のFinCEN(Financial Crimes Enforcement Network=金融犯罪執行機関連絡室)によると、この2年間で15億ドル(約1,640億円)相当の仮想通貨がハッキングにより盗難されている。

ハッカーは2年間で15億ドル相当の仮想通貨を盗んだ。

「テロ支援や武器の拡散につながる革新的な製品やサービスの悪用を望む者はいないだろう」(Sigal Mandelker氏)

マネーロンダリング対策の取り組みは国際的な協調の下に進められてきたが、近年、仮想通貨をめぐる対策は急務となっている。2018年3月のG20(20か国財務大臣・中央銀行総裁会議)で議論が深まり、7月のG20共同声明では10月までにマネーロンダリングやテロ資金対策を審査する国際組織「FATF(金融活動作業部会、本部パリ)が仮想通貨に関する国際基準を明確にすることを求めた。

G20での要請を受けて、FATFは2018年10月に勧告の改正を発表。仮想通貨交換業者、ウォレット業者、新規仮想通貨の公開による資金調達「ICO」などのサービス業者に対して、マネーロンダリングやテロ資金対策が課されなければならないことを規定した(参考:「FATF 勧告 – 金融庁」)。Sigal Mandelker氏によれば、2019年6月にはFATFが最新のガイダンスを採択する予定だという。

「(仮想通貨業界において)ビジネスを成功させるには、最初からアンチマネーロンダリングと制裁のコンプライアンスに基づく強い基盤の上にビジネスモデルを構築する必要がある」(Sigal Mandelker氏)

CoinDeskが主催する「Consensus2019」は、ニューヨークで開催されているブロックチェーン・仮想通貨をテーマにした世界最大級のカンファレンス。この領域をリードする企業トップや開発者が集まり、2019年5月13日〜15日の3日間にわたり(米東部時間)さまざまなテーマで議論やプレゼンテーション、ワークショップ、ネットワーキングが行われる。

米ニューヨークで開催の「Consensus 2019」の会場外観。

過去にはTwitter創業者でありモバイル決済サービスSquareCEOのジャック・ドーシー氏やSEC(米国証券取引委員会)委員長、デジタル・キャッシュの考案者として知られるデヴィッド・チョム氏などが参加した。CoinDesk Japanは5月30日、Consensus2019報告会を開催する。

文:久保田大海
編集:佐藤茂
写真:CoinDesk Japan