米SEC委員長の発言、ビットコイン現物ETFには不利な展開

米SEC委員長の発言、ビットコイン現物ETFには不利な展開

米証券取引委員会(SEC)のゲーリー・ゲンスラー委員長の先日のコメントを受け、一部のデジタル資産運用家は、ビットコイン(BTC)ETF(上場投資信託)誕生に向けた今年上半期の興奮は、早まったものであろうと考えるようになっている。

アスペン・セキュリティー・フォーラムにおける3日の講演の中でゲンスラー委員長は、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)で取引されているビットコイン先物をもとにしたETFに好意的な態度を示唆した。

「委員長の発言からは、純粋なスポットビットコインETFがまもなく誕生することはなく、先物商品には検討の可能性があるということがはっきりしてきた」と、ビットコインETFの申請をSECに行った暗号資産運用会社ヴァルキリー・インベストメンツ(Valkyrie Investments)のスティーブン・マククラーグ(Steven McClurg)氏は語った。「このことは間違いなく、我が社における議論と、商品ロードマップを方向づけることになるだろう」

ビットコイン現物よりは先物

暗号資産界の多くは、ゲンスラー委員長がビットコイン先物を含む投資商品を好むだろうと見込んでいたが、本人がその選好を明言したのは今回が初めてであったと、ブルームバーク・インテリジェンスのETFリサーチアナリスト、ジェームズ・セイファート(James Seyffart)氏は指摘した。

委員長の発言を受けて、ビットコイン先物を含む申請が相次ぐと考える人たちもいる。アトランタにある資産運用会社インベスコ(Invesco)は5日、先物、グレイスケール・ビットコイン・トラスト(GBTC)、カナダのビットコインETFを含むETFの申請を行なった。

ビットコイン現物のETFよりもビットコイン先物を優先することのメリットははっきりとしないと、マククラーグ氏は語る。

「カナダはビットコインETFの立ち上げが可能で、アメリカの人たちは仲介業者を通してそれを購入でき、カナダのETFを含むアメリカのETFを作ることができるのに、アメリカでビットコインETFを作ることはできないという非常に奇妙な状況だ」(マククラーグ氏)

連邦規制当局の規制を受けたビットコイン先物は、州ごとに規制されるスポット取引所のビットコインにもとづいたものより、規制による保護がより多くもたらされるとゲンスラー委員長は考えている可能性がある。

「そうは思えない。(中略)スポットビットコインと先物市場には明確な関係があるからだ。何をしても、関係する市場と重なる部分が出てくる」とセイファート氏。「1番大きいのは、先延ばしになるという点だと考えている」

ビットコイン先物商品は運用がより複雑で、コストも多くかかるだけではなく、市場もそれを求めていない可能性があると、セイファート氏は指摘する。

BTC投資信託の需要

これまでのところ機関投資家は、CMEでのビットコイン先物の取引よりも、GBTCなどのクローズドエンド型投資信託の方に集まっていると、セイファート氏は説明した。

「ビットコイン先物は成長しており、その速度も健全なものだが、GBTC取引にははるかに及ばない」とセイファート氏。「ドローダウンや、ビットコイン価格を下回る価格で取引されていることを考慮しても、GBTCの運用資産高は250億ドルなのだ」

投資家がビットコインETFを求めていることを示す各調査結果の他にも、ソフトウェア企業マイクロストラテジー社の株がビットコインETFの代わりのような機能を果たしていることも、市場がビットコイン先物価格にもとづく投資商品を求めていることの証拠だと、セイファート氏は語った。マイクロストラテジーは大量のビットコインを保有している。

コモディティ先物には、マイナスのプレミアムで取引される可能性もあると、マククラーグ氏は指摘した。

「先物は必ずしも、スポット市場で起こっていることを正確にトラッキングする訳ではないことを考慮すると、(先物ETFは)個人投資家にとって安全ではないと考えている」と、マククラーグ氏。

業界の今後の対応

ゲンスラー氏の今回の発言を受けて、SECはビットコイン先物ミューチュアルファンドを承認し続け、ビットコイン先物にもとづくETFも承認する可能性が高いと、セイファート氏は見ている。

「ミューチュアルファンドのメリットは、手に負えなくなったり、サイズが大きくなり過ぎたり、何が起こっても、ファンドをクローズすることができる点だ。ETFではそれができない」とセイファート氏は説明する。

ETFを提供するテウクリウム(Teucrium)は、ビットコイン先物だけにもとづくETP(上場取引型金融商品)を申請した唯一の企業であると、セイファート氏は付け加えた。しかし、テウクリウムはフォームS-1を提出しただけで、フォーム19b-4の提出によってSECによる審査をスタートした訳ではない。

19b-4の提出後、申請についてSECが決定を下すための期間は240日間である。19b-4の審査期間が最初に終了する、投資ファンドVanEckの19b-4提出からは、11月で240日を迎えるが、セイファート氏は、SECがVanEckの申請を却下し、そして今年中から2022年初頭にかけてまでその他の申請も却下する可能性があると考えている。

VanEckのガボール・ガーバックス(Gabor Gurbacs)氏によれば、VanEckは、ビットコイン先物が存在する前に、ビットコイン先物ETPを申請した最初の企業の1つであり、ビットコイン先物ミューチュアルファンドも申請している。

「先物の運用にはコストがかさみ、CMEのような取引所レベルでは、マージン要件も極めて高い」と、ガーバックス氏は語った。「毎月先物契約をロールしなければならないが、これにはコストがかかり、ボラティリティも加わる」

VanEckの将来的戦略についてガーバックス氏はコメントを控えたが、先物に伴うコストや複雑性にも関わらず、将来的により多くのビットコイン先物にもとづいたETF申請が提出されることを見込んでいると語った。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Gensler’s Preference for Bitcoin Futures Products Is Likely Bad News for a Spot BTC ETF

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