SECがバイナンスとコインベースを提訴、ビットコインにはプラスか【Weekly Review:6/3~6/9】

今週、SECがそれぞれ「世界最大」「アメリカ最大」の暗号資産取引所バイナンス、コインベースを提訴。数年後に「暗号資産業界を変えた週」として記憶されるのだろうか──先週からスタートしたテーマ別に1週間のニュースを振り返る「Weekly Review」。今回はもちろん、SECの提訴がニュースの中心となりました。

SEC、バイナンスとコインベースを提訴:終わりの始まりか、新しいフェーズの幕開けか

6月5日にバイナンスを、翌6日にコインベースをSECが連邦証券法違反の疑いで提訴。米政府と規制当局は、暗号資産と業界を完全に掌握したいと考えているのか、失地回復を狙うSECのスタンドプレーなのか?

SEC、バイナンスとジャオCEOを提訴

米証券取引委員会(SEC)は6月5日、暗号資産取引所バイナンス(Binance)、バイナンスUSの運営会社、バイナンスの創業者兼CEOのチャンポン・ジャオ(Changpeng Zhao)氏を連邦証券法違反の疑いで提訴した。

バイナンスコイン(BNB)、およびステーブルコインのバイナンスUSD(BUSD)の提供が未登録の証券の提供にあたり、またステーキングサービスは証券法に違反しているという。

バイナンス提訴でアルトコインに打撃──ビットコインも2万6000ドル割れ

米証券取引委員会(SEC)がバイナンス、ジャオCEOなどを提訴したことで、アルトコインは大きな打撃を受けた。

訴状は、バイナンスが多数の未登録証券を提供したとしており、バイナンスコイン(BNB)、ステーブルコインのバイナンスUSD(BUSD)のみならず、ソラナ(SOL)、カルダノ(ADA)、ポリゴン(MATIC)、コティ(COTI)、アルゴランド(ALGO)、アクシー・インフィニティ(AXS)、ファイルコイン(FIL)、コスモス(ATOM)、サンドボックス(SAND)、ディセントラランド(MANA)の名前も挙げられていた。

SECのバイナンス提訴、コインベースでも起きる可能性──独投資銀行アナリストが指摘

ドイツの投資銀行ベレンベルク(Berenberg)のアナリストであるマルク・パルマ―氏は、SECが以前にビットトレックス(Bittrex)とクラーケン(Kraken)に対してかけた容疑と一部が共通していると指摘し、コインベース(Coinbase)も今後同様の容疑で提訴される可能性があると述べた。

SECのバイナンス提訴による市場急落で約450億円が清算

暗号資産トレーダーはこの24時間で約3億2000万ドル(約450億円)の損失を被ったことがCoinGlassのデータで明らかになった。米証券取引委員会(SEC)が5日、暗号資産取引所バイナンス(Binance)を連邦証券法違反の疑いで提訴し、暗号資産価格が急落したためだ。

バイナンスからの流出は7億ドルに──メタバーストークンは大きく下落

米国証券取引委員会(SEC)が連邦証券法違反の疑いで暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンス(Binance)とその創設者CZことチャンポン・ジャオ(Changpeng Zhao)氏を訴えた後、暗号資産市場の動揺は翌6月6日になっても収まる気配がない。

Nansen.aiのデータによると、バイナンスからの全プロトコルでの流出は、24時間で7億1900万ドル(約1002億6000万円)に達した。

SEC、コインベースを提訴──前日のバイナンスに続き

米証券取引委員会(SEC)は、米大手暗号資産(仮想通貨)取引所コインベース(Coinbase)を連邦証券法違反の疑いで提訴した。前日にはバイナンス(Binance)を同様に提訴している。

SECによると、コインベースは未登録でブローカー、取引所、清算機関を運営し、顧客の勧誘、注文の処理、入札の許可、仲介を行っていたという。

SEC、バイナンスUSの資産凍結を要求

米証券取引委員会(SEC)は6月6日、バイナンスUS(Binance.US)に関連する資産を凍結するための一時的な差し止め命令を裁判所に要請した。具体的には、バイナンスUSの持ち株会社および運営会社であるBAM Management US HoldingsとBAM Trading Servicesに関連する資産の凍結を求めている。

アメリカにはデジタル通貨は不要、すでにドルがある──FTXとバイナンスの類似性も示唆:ゲンスラーSEC委員長

ゲンスラー委員長はまた、自身のアプローチが暗号資産をめぐる法的ポジションを混乱させているとの批判を否定、バイナンス(Binance)のチャンポン・ジャオCEOに対する訴えと、FTX創業者のサム・バンクマン-フリード被告に対する刑事事件の間に類似性があることも示唆した。

SEC提訴でコインベースからの純出金額が6億ドルに

ブロックチェーン分析企業ナンセン(Nansen)のデータによると、コインベースからの過去24時間の純出金額は6億ドル(約840億円、1ドル140円換算)に達した。出金総額は13億8000万ドル、入金総額は7億7100万ドルで、大幅な出金超過が発生している。なお、データにはビットコイン(BTC)の送金額は含まれていない

提訴の核心は「トークンは証券か、商品か」:バーンスタイン

暗号資産(仮想通貨)のトークンが、証券なのか商品なのかが、アメリカ証券取引委員会(SEC)が暗号資産取引所のバイナンスとコインベースに対して行った提訴の核心だと投資会社のバーンスタインは6月6日の調査報告書で述べている。

SEC、2020年からバイナンスUSを調査

米証券取引委員会(SEC)は、少なくとも2020年からバイナンスUS(Binance.US)を調査していたことが、6月7日に公開された裁判所提出書類で明らかになった。

バイナンス、ジャオCEOの保有会社に120億ドル送金:SEC

暗号資産取引所バイナンス(Binance)のチャンポン・ジャオCEOと同社幹部のグアンイン・チェン(Guangying Chen)氏は、その持ち株会社を通じて数十億ドルの顧客資金を受け取ったと米証券取引委員会(SEC)は新たな裁判資料で主張した。

ビットコイン動向:SECの提訴はプラス?

2大取引所がSECから提訴されたことは、ビットコインにはあまり大きな影響を与えなかったようだ。むしろ複数のアルトコインが「証券」と指摘されたことで、ビットコインにはプラスになると見る向きもある。

ビットコイン、今後1年間は堅調に推移する可能性が高い:JPモルガン

ビットコイン(BTC)の需要は、世界最大の暗号資産(仮想通貨)であるこのトークンの次の半減期を前に、今後1年間は堅調に推移する可能性が高いと、JPモルガン(JPMorgan)は6月1日の調査報告書で述べている。

ビットコイン、2万7000ドルを回復──SECによるバイナンス、コインベース提訴はビットコインにプラス?

暗号資産(仮想通貨)価格は6日、米証券取引委員会(SEC)が前日にバイナンス(Binance)を提訴したことを受けて大幅に下落し、さらにバイナンスに続いて、コインベース(Coinbase)を提訴したにもかかわらず、ビットコイン(BTC)を筆頭に回復した。

ビットコイン保有者は5月に利確していた:ゴールドマン・サックス

ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)は、5月のオンチェーン統計はビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)の複雑な状況を示していると、6月5日のレポートで発表した。

コホートグループのイーサリアム残高はほとんど変化していないが、10万BTC以上の残高を持つビットコインアドレスは月間31%の減少を見たとレポートは述べている。

ビットコイントレーダーは2つの提訴にもパニックを起こしていない──ボラティリティ指標で判明

アメリカ証券取引委員会(SEC)による大手暗号資産(仮想通貨)取引所のバイナンス(Binance)とコインベース(Coinbase)の提訴は、ビットコイン(BTC)に精通したトレーダーの間に不穏な空気を呼び起こさなかったことが、オプションベースのインプライド・ボラティリティ指標から判明した。これは、今回の提訴が予想され、すでに織り込み済みだったことを示している。

業界動向:Keep Going!

業界に激震が走った今週、それでも歩みが止まることはない。チャンスと捉える動きもある。

SWIFTとチェーンリンク、十数の大手金融機関と複数のブロックチェーン接続をテスト

銀行間の国際決済をサポートするSWIFT(スイフト:国際銀行間通信協会)と、ブロックチェーンに実世界のデータを提供するチェーンリンク(Chainlink)は、6月6日に発表されたプレスリリースによると、数十の金融機関と協力し、複数のブロックチェーンとの接続方法をテストするという。

保険料も保険金もビットコインで──生命保険スタートアップが1900万ドル調達

バミューダに拠点を置く生命保険会社Meanwhile Insurance Bitcoinは、ビットコインを中心に発展するエコノミーを見据え、AI(人工知能)を活用したビットコイン(BTC)建て保険を開発するために1900万ドル(約26億6000万円、1ドル140円換算)を調達したと6月6日、発表した。

米アーク、値を下げたコインベース株を大きく買い増し

暗号資産(仮想通貨)取引所コインベース・グローバル(Coinbase Global)の第2位の大株主であるキャシー・ウッド(Cathie Wood)氏のアーク・インベストメント(Ark Investment)は、アメリカ証券取引委員会(SEC)が提訴したことで株価が暴落した後、コインベースへの投資を大きく増やした。

ぺぺコインは危険な椅子取りゲームだった:調査報告

ペペコイン(PEPE)の投資家の大半は、初期の参加者が利益の大部分を得たため、椅子取りゲームをしている状態になったことがSingularityDAOの新しい調査報告で明らかになった。

初期の参加者の利益獲得の後はトークンの流動性が大幅に失われ、投資家の大半は有意義な利益を得ることができなかったと報告書は指摘している。

イーサリアム、次のアップグレード「デンクン」の範囲決定

イーサリアム開発者たちは6月8日、「デンクン(Dencun)」と呼ばれる次のアップグレードの範囲について合意した。

今年後半に予定されているアップグレード(ハードフォークとも呼ばれる)には、データ用ストレージの追加や手数料削減を目的とした5つのイーサリアム改善提案(EIP)が含まれる。

One More Thing

最後にあまり注目は集めなかったが、気に留めておきたい記事をもう1つ──。日本では6月1日に改正資金決済法が施行。年内のステーブルコイン発行が期待されている。その動きと関連しているのかどうか…

ステーブルコインのサークル、シンガポールで認可取得

サークル・シンガポール(Circle Singapore)は6月6日、シンガポールでデジタル決済トークンサービスのための主要決済機関(Major Payment Institution:MPI)の認可を取得したと発表した。

シンガポール金融管理局(Monetary Authority of Singapore:MAS)の認可を得たことで、サークル・シンガポールはシンガポールにおいてデジタル決済トークンサービス、クロスボーダー送金サービス、国内送金サービスを提供できるようになったという。


今週取り上げたテーマは大きく、

  • SEC、バイナンスとコインベースを提訴
  • ビットコイン動向
  • 業界動向

の3つ。先週は「ステーブルコイン」「NFT」「セキュリティトークン/RWA」「アルトコイン」でしたので、ガラッと一変しました。前回からテーマ別にまとめることにしたものの、実は「週ごとに、皆さんの興味を引くような変化があるだろうか?」と心配していましたが、まったくの杞憂でした。

ちなみに、先週から使っている冒頭の写真は「テーマ別」にかけて「テーマパーク」のイメージ写真です。

|文・編集:増田隆幸
|画像:Shutterstock