ステーブルコインとは【暗号資産の基礎知識】

ステーブルコインとは【暗号資産の基礎知識】

「ステーブルコイン」とは、価格を安定させるためにその価値が法定通貨や金(ゴールド)など、別の資産クラスにペッグされている暗号資産のことだ。

ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などの暗号資産には、多くのメリットがある。その中でも最も根本的なものの1つは、送金のために仲介業者を信頼する必要がないという点であり、これによって世界中の誰にでも使える機会が開かれる。

しかし、重要な欠点として、暗号資産価格は予測不可能であり、しばしば激しく変動する傾向があるのだ。

このために、一般市民にとって暗号資産は使いづらいものとなる。人は通常、安心と生活のために、自らのお金が1週間後にどれだけの価値を持つか知りたいものだ。

暗号資産の予測不可能性は、米ドルなどの法定通貨やゴールド(金)など、一般的に価格の安定した資産とは対照的だ。ドルをはじめとする通貨の価値は、時間をかけて徐々に変化していくが、暗号資産は当たり前のようにその価値が上下し、日々の価格変化はおおむね、より劇的なものとなる。

下のグラフは、ビットコインと米ドル(USD)の価格を、カナダドル(CAD)との関係で比べ、相対的な価格変動を対比したものだ。

対カナダドルでのビットコイン(黒)と米ドル(黄色)のボラティリティ
出典:Yahoo Finance、CoinGecko

ステーブルコインの基礎

ステーブルコインはその価値を、法定通貨を筆頭とした安定した資産と連動させることで、価格変動の問題に対処している。

ステーブルコインを手がける組織は通常、ステーブルコインを裏付ける単独の資産や資産のバスケットを安全に保管する「準備資産」を用意する。例えば、100万枚のステーブルコインを裏付けるために、昔ながらの一般的な銀行に100万ドルを保管する、という具合だ。

これは、デジタルステーブルコインが実世界の資産にペッグされる方法の1例だ。準備資産は、ステーブルコインの担保として機能する。つまり、ステーブルコイン保有者がトークンを換金したい場合には、そのトークンを裏付ける同価値の資産が、準備資産から取り除かれるのだ。

法定通貨ではなく他の暗号資産によって担保されながらも、ドルのようなメインストリーム資産をトラッキングするように作られた、より複雑なタイプのステーブルコインも存在する。

このようなメカニズムを用いる最も有名なステーブルコイン発行者であろうメーカー(Maker)は、ユーザーの暗号資産担保をロックアップする「ボールト(Vault)」(旧称:「CDP」担保付き債務ポジション)と呼ばれるサービスを使っている。

担保が確保されたことをスマートコントラクトが確認すると、ユーザーは新しく生成れたステーブルコインのダイ(DAI)を借りるのにそれを使うことができる。

3つ目のタイプのステーブルコインは、アルゴリズムステーブルコインと呼ばれるもので、こちらはまったく担保されていない。価格が目標に一致した状態に保たれるように、コインは焼却したり、生成されたりする。

例えば、ステーブルコインの価格が目標価格の1ドルから0.75ドルへと値下がりしたとする。そうするとアルゴリズムが自動的にコインの一部を焼却して希少性を高め、その価格を押し上げる。

このようなステーブルコインプロトコルは、成功させることが難しく、ここ数年でも試行錯誤を繰り返しては失敗に終わっているが、それでも起業家たちは、挑戦を続けている。

このモデルを使ったステーブルコインの数少ない実例の1つは、ブロックチェーンプロジェクト「テラ(Terra)」によるUSTだ。

ステーブルコイン担保資産の種類

前述のような枠組みを用いたステーブルコインは多種多様であり、担保されたステーブルコインの場合には、裏付けとして幅広い種類の資産が使われる。以下でその例を見ていこう。

法定通貨:ステーブルコインの担保として最も一般的なのは法定通貨である。その中でも一番人気は米ドルだが、トルコリラにペッグされたBiLiraなど、その他の法定通貨にペッグされたステーブルコインを試す企業も存在する。

貴金属:金(ゴールド)や銀にその価値が連動したステーブルコインもある。

暗号資産:イーサリアムネットワークのネイティブトークンであるイーサなど、他の暗号資産を担保とするステーブルコインも存在する。

その他の投資:テザーのUSDTはかつて、1対1でドルに裏付けられているということになっていたが、時間と共に担保資産の構成は変化してきた。
2021年に発表された内訳では、準備資産の半分近くがコマーシャルペーパーという、一種の短期社債であることが明らかとなった。

コマーシャルペーパーの発行者は公表されていないが、テザー社はすべてがA-2以上の格付けのものだと主張している。(A-2とは、スタンダード&プアーズ等の格付け会社から企業の借り手が受けられるものとしては2番目に良い格付けだ)

サークルのUSDCも同様に、連邦政府が保証する銀行の口座と並んで、不特定の「承認された投資」を担保資産として挙げている。(ちなみに口座自体に保険がかけられているかについては、明言されていない)

人気の高いステーブルコインは?

ステーブルコインの世界で起こっている実験的取り組みの一端を垣間見てもらうために、人気の高いステーブルコインをいくつか見ていこう。

ディエム(Diem)

ディエム(旧称:リブラ)は、世界的な巨大ソーシャルメディアプラットフォームのフェイスブックが提案したステーブルコインだ。まだ立ち上げられてはいないが、他のどのステーブルコインよりも大きな心理的インパクトをもたらしている。

中国を筆頭とする各国政府も現在、暗号資産にインスピレーションを受けた独自デジタル通貨を検討中である。その理由の1つは、フェイスブックが世界中に何十億ものユーザーを抱えた多国籍企業であり、ディエムが脅威となることを懸念しているからだ。

フェイスブックが立ち上げたコンソーシアムのリブラ協会は当初、リブラは米ドルやユーロを含む通貨「バスケット」によって裏付けられるとしていた。しかし、世界中の規制当局による反発から、協会は当初の野心的なビジョンを撤回。現在では、別々の法定通貨に裏付けられた、複数のステーブルコインの開発に尽力している。

最初のステーブルコインとなるディエムドルは、早ければ2021年内でのローンチが見込まれている。

テザー(Tether)

テザー(USDT)は、2014年にローンチされた最古参のステーブルコインの1つであり、これまでのところ最も人気のあるものだ。時価総額の点でも、暗号資産全体の中でとりわけ強力なものの1つとなっている。

USDTの主な用途は、2つの取引所での暗号資産価格が異なる場合に裁定取引のチャンスを生かすために、素早く取引所間で資金を移動させることにある。トレーダーは価格差から利益を得るのだ。

しかし、他の用途もある。例えば、ロシアにある中国の輸入業者は、中国による厳格な資本統制を回避し、国境を超えて何百ドル相当もの資金を送金するのにUSDTを使った。

USDTを手がけるテザー社は、姉妹企業のビットフィネックス(Bitfinex)がテザーから手に入れた資産を使って、8億5000万ドルの損失を隠していたとして、ニューヨーク州司法長官事務所との22カ月にも及ぶ法廷闘争に巻き込まれた。

この訴訟は最終的に、2021年2月23日に和解を迎え、テザーとビットフィネックスは1850万ドルの和解金の支払いを余儀なくされた。さらにテザーは今後2年間、USDTの準備資産について四半期ごとのレポート提出を義務付けられている。

USDコイン

2018年にローンチされたUSDコイン(USDC)は、暗号資産企業のサークル(Circle)とコインベース(Coinbase)が、センター・コンソーシアム(Center Consortium)を通じで共同で管理するステーブルコインだ。

複数の担保資産に移行する前のテザー同様、USDCは米ドルにペッグされ、現在の流通高は約260億ドルにのぼる。サークルは最近の投資家向けのプレゼンの中で、2023年までには供給高は1900億ドルに達すると見込んでいると語った。

サークルは2021年7月8日、特別買収目的会社(SPAC)であるConcord Acquisitionとの合併を通じてニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場する計画を発表。合併後の時価総額は45億ドル(約4900億円)と見られている。

このニュースは、FTX、デジタル・カレンシー・グループ(Digital Currency Group)、フィデリティ・マネージメント・アンド・リサーチ・カンパニー(Fidelity Management and Research Company)などの大手企業が参加した4億4000万ドルの資金調達ラウンドをサークルが締めくくったひと月後に報じられた。

ダイ

メイカーダオ(MakerDAO)プロトコル上で運営されるダイは、イーサリアムブロックチェーン上のステーブルコインである。2015年に生み出されたダイは、米ドルにペッグされ、イーサに裏付けられている。

他のステーブルコインとは異なり、ダイを分散型とすることをメイカーダオは意図している。つまり、システムのコントロールを任される中央権威は不在なのだ。変更不能なルールをエンコードするイーサリアムのスマートコントラクトが、システムを管理している。

しかし、このような革新的モデルには問題もある。例えば、メイカーダオを支えるスマートコントラクトが期待通りに機能しなかった場合にはどうなるのか?実際、2020年には攻撃の標的となり、800万ドルの損失を出した。

ステーブルコインに欠点はあるか?

ステーブルコインには、心に留めておくべき欠点がいくつかある。ステーブルコインはその仕組みのために、他の暗号資産とは異なる痛点を持っている。

準備金が銀行やその他の第三者機関に保管されている場合、カウンターパーティリスクという脆弱性がある。これは結局突き詰めると、次の疑問に行き着く。組織は本当に、主張通りの担保資産を保有しているのだろうか?

これは、テザーに対して頻繁に向けられた疑念だ。USDTと米ドルの間に、本当に1対1の裏付け関係が維持されているのかが、度々疑問視されてきた。

最悪の場合には、ステーブルコインを裏付ける準備資産がすべてのコインを換金するには不十分と判明する可能性もあり、コインへの信頼は揺らぐことになる。

暗号資産は、ユーザーの資産を信頼して預ける仲介業者を排除するために作られた。仲介業者はその性質として、ユーザーの資産をコントロールでき、一般的には例えば、取引を停止する力を持つ。しかし一部のステーブルコインは、取引を停止する能力を復活させている。

例えばUSDコインは、コインが不正に使われた場合には支払いを停止する仕組みを持っていることが明らかとなっている。USDCを手がけるサークルは、2020年7月、警察の命令で10万ドル相当のUSDCを凍結したことを認めた。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Sergei Elagin / Shutterstock.com
|原文:What Is a Stablecoin?

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