クレディ・スイスと破産したスリー・アローズの共通点【コラム】

クレディ・スイスと破産したスリー・アローズの共通点【コラム】

米銀最大手JPモルガン・チェースの分析によると、クレディ・スイスは2024年までに、80億ドルの資本不足に陥る可能性がある。

どのような試算でこの数字が導き出されたのか、一般人には到底理解が及ばないが、投資ツールを手がけるシーキング・アルファ(Seeking Alpha)が要約したとおり、予測される資本不足の原因は、低調な予測収益と高インフレ、リスク編重なバランスシートなどがあげられる。再編成を余儀なくされた場合の弁護士費用やコストも重しになるという。

度重なる失敗と暗い見通し

ブルームバーグの取材に答えた米金融大手ジェフリーズ(Jefferies)のアナリストもJPモルガンの見解に同意し、クレディ・スイスはこの先2〜3年で約90億ドルの資金を調達する必要があると語った。

つまりクレディ・スイスは、資産を売却するか、新しく株式を発行しなければならないのだが、現在の景気は、そのどちらをやるにもまったく適していない状況だ。

クレディ・スイスがこのような状況に陥った原因は、数々の失敗の連続だ。しかも、徹頭徹尾、完全に笑ってしまうような失敗の連続なのだ。破壊度の大きさと面白さでランク付けしたとすれば、トップに輝くのは、ヘッジファンドのアルケゴス・キャピタル・マネジメントの破綻との関わりだろう。

「ヘッジ」ファンドとは名ばかりで、アルケゴスはヘッジすることを怠るばかりか、基本的なリスク管理さえも満足にしていなかったようだ。アルケゴスの戦略は結局のところ、大量のレバレッジ、つまり債務を使って超大規模に買うことで値上がりさせた優良株のバスケットでのパンプ・アンド・ダンプ(吊り上げと売り叩き)であった。

聞き覚えがあるように感じたとしたら、スリー・アローズ・キャピタル(Three Arrows Capital)のことを思い出しているのかもしれない。こちらはビットコインをはじめとする暗号資産で、同じ戦略を使っていた。

バランスシートを膨らませるために少数の資産をレバレッジする戦略は、膨張させた資産を売却しなければならなくなり、誰も自分が吊り上げた価格で買いたがってはいないと気づくまでは上手くいく。

アルケゴスは最終的に約200億ドル相当の投資に失敗し、クレディ・スイスだけでも、そのうち55億ドルの損失を被った。アルケゴスの愚かな戦略を可能にした貸し付けを行なったいくつかの銀行の中でも、最も大きな損失額であった。ゴールドマン・サックスなど他の貸し手は、もっとはやく手を引いたのだ。

一方、スリー・アローズ・キャピタルの方は、約100億ドルの資金をダメにした。アルケゴスがスリー・アローズに勝っている点が他にもある。アルケゴスの経営陣はすでに、詐欺の罪で告発されており、米司法省は同社が市場操縦を行なったと考えている。もちろんスリー・アローズも、同じように告発されるかもしれない。しかし、行方をくらませたスリー・アローズの創業者とは対照的に、アルケゴスの創業者ビル・フアン氏は逃げたりはしていない。

スリー・アローズは、暗号資産業界では最も重要なファンドと考えられていたが、アルケゴスの方は、伝統的金融の世界における多くのヘッジファンドの1つに過ぎなかった。

しかし、いくつかの類似点もある。まず、単純に比較できるものでもないのだが、数字が衝撃的なほど似ている。次に、もっと重要な類似点もある。2010年代、投資銀行家たちは、暗号資産の世界でお金を動かしていた無謀な奴らと同じような、完全に無能な投資をしていたのだ。

無能さという悪

何よりも恥ずかしいのは、事後分析から、クレディ・スイスの失敗はあらゆる点で、「詐欺的、あるいは違法な行為」と言うよりは、ただの無能さの結果であったということが判明した点。

もちろん、礼儀正しい社会の標準で言えば、それはまだマシなことと考えられるだろう。しかし、ここでは、銀行家の話をしているのだ。大っぴらには言えないかもしれないが、間抜けなカモよりも、ペテン師のような銀行家の方が好ましいに決まっている。

クレディ・スイスのヘマの歴史は、あまりに多岐に渡るので、ここで詳細をお伝えすることはできないが、アルケゴスで損失を出すのと同時に、推計17億2000万ドルの損失を出したイギリスの金融企業グリーンシル・キャピタル(Greensill Capital)の問題にも巻き込まれていた。

クレディ・スイスはさらに現在、税金詐欺で捜査を受けている。おまけに、クレディ・スイスのプライベートバンカーは、ジョージアの元首相から8億ドルをだまし取ったとされているのだ。

クレディ・スイスはまた、自社従業員にスパイ行為をおこなっていたして非難を受けており、2020年にはCEOが辞任に追い込まれた。その後就任したCEOも、さらなるスキャンダルや失態を受けて、わずか2年後に辞任している。

こうなると、クレディ・スイスの株をもっと買いたいと思う人、バランスシートがスイスチーズと同じくらい穴だらけな会社の責任を負うために、お金を支払いたいと考える人がいるとは想像し難い。最悪のシナリオでは、この先数年で、クレディ・スイスは破綻するかもしれないのだ。

安心なことに、少なくとも今のところ、アナリストらはクレディ・スイスが、2008年のリーマン・ブラザースのようなシステミックリスクとは考えていない。

それでも、クレディ・スイスの無能さが、現代のバンキング業界に体系的に存在すると考えることもできる。銀行のリスクエクスポージャーを説明するのに、政府による銀行救済策のモラルハザードを指摘できるかもしれない。

あるいは、巨大銀行が大きな間違いを繰り返すのは、権力の集中によって、意見の多様性が損なわれるからかもしれない。そうなると、権力の集中度が低い金融システムの方が、より良い結果を生むということになる。

しかし、今のところは、愚かさは単に愚かさなのだという、安心できる考えを楽しんでおこう。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:YueStock / Shutterstock.com
|原文:What Credit Suisse and Three Arrows Capital Have in Common

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