米国初のビットコイン先物ETFが意味すること──現物ETFは実現するか

米国初となるビットコイン先物ETF(上場投資信託)は19日(米現地時間)、ニューヨーク証券取引所で取引を開始し、投資家からの力強い需要が見られた。

これは、ある程度の市場の成熟と、米証券取引委員会(SEC)からの一定の受け入れ姿勢を示唆する事態だが、この金融商品の形態が投資家にとって適切なものなのか、ビットコイン(BTC)の現物価格と連動したETFがいつ登場するのかという、新しい疑問も浮かび上がっている。

背景

資産運用会社プロシェアーズ(ProShares)のビットコイン(先物)ETFは19日に取引を開始。幅広くアクセス可能で、規制を受けたビットコイン投資商品を立ち上げるための8年間の取り組みが、遂に成果を上げた。

なぜ重要なのか?

ビットコインETF支持者たちは、このような金融商品の立ち上げを何年も求めてきた。遂にその願いが叶ったが、完全な形ではない。ビットコインの先物価格に連動したビットコイン先物ETFとなるからだ。

確かに意義のある展開ではあるが、現物価格に連動したビットコインETFほどの関心や、資産流入を受けることはないだろう。そもそもビットコイン現物ETFは可能なのか、その立ち上げを実現するために何が必要なのかという、新たな疑問も浮かぶ。

疑問

私は2月、2021年にはアメリカで遂に、ビットコインETFが登場するかどうかの疑問を提起した。

当時の私の結論は、「うーん、もしかしたら」というものであった。

SECがビットコインETFを承認するのではと、相当の期待と盛り上がりがあったことは確かだ。ビットコインETF推進派は、2018年以来のビットコイン市場の変化と、アメリカでの新政権の誕生、規制を受けた先物市場の成長などを理由として挙げていた。

そして、彼らは正しかったのだ。アメリカでは初となるビットコイン先物ETFが実現した。しかし、現物価格と連動したビットコイン現物ETFの登場にはまだ時間がかかりそうだ。

(米グレイスケール・インベストメンツは19日、世界最大のビットコイン信託「グレイスケール・ビットコイン・トラスト(GBTC)」を、ビットコインETFに変更する申請を行った)

次の展開は?

初のビットコイン関連ETFの立ち上げをめぐる競争は終了した。次に続くのは誰か、そして今回のビットコイン先物ETFを手がけるプロシェアーズが、先発者としての力強い優位性を得るかどうかに、全注目が集まっている。

次に立ち上げられるビットコイン先物ETFはインベスコ(Invesco)のものになるはずであったが、同社は18日、承認申請を取り下げたことを発表した。

そうなると、早くて10月25日に立ち上げられるヴァルキリー(Valkyrie)とVanEckのビットコイン先物ETFが次となり、プロシェアーズは熱狂の最初の波を、約1週間にわたり独占することができる。

少なくともヴァルキリーは、早期立ち上げに向けて動いている。18日夜時点では発効後修正版目論見書を提出してはいないが、ティッカーシンボルをアップデートし、価格情報を追加して、ブルームバーグの情報ターミナルのデータチームに初期上場情報を送っている。これらはすべて、立ち上げ準備が整っているサインだ。

立ち上げのためには、ヴァルキリーにはSECからの明確な許可が必要となるが、許可を受ければ、プロシェアーズにかなりすばやく続くことができる。

ブルームバーグ・インテリジェンスのアナリストは、「(SEC委員長の)ゲンスラー氏が何を期待するか説明した時に、すべてが始まった」と語った。

ビットコイン現物ETFはいつになるか?

はっきりしないのは、ビットコインの現物価格に連動したETFが立ち上がるかどうか、立ち上がるとしたらいつか、という点だ。

ゲンスラーSEC委員長の発言は、それがすぐには登場しないこと、間違いなく2021年中ではないことを示唆している。ツイッター上ではETF専門家たちが、2022年の第4四半期になるのではと予測している。ブルームバーグ・インテリジェンスのジェームズ・セイファート(James Seyffart)もこれに同意している。

「先物ETFを足掛かりと見ている」とセイファート氏は語る。「SECが今年、ビットコイン現物ETFを承認するかどうかについては、大いに疑問だ」

「Nate Geraci:グレイスケールのETF責任者は、議論は非常に単純なプロセスのように語っている(18:55分の部分)

SECによるビットコイン現物ETF承認に関しては、少し時間がかかるかもしれない。先物に連動した商品をしっかりと観察して、そこから次に進んでいくのは間違いない。2022年第4四半期を基準とするなら、私はそれ以前の方に賭ける」

ETF申請を行っている企業は、そうは思っていないようだ。

9月に先物ETFを申請したビットワイズ・アセット・マネジメント(Bitwise Asset Management)は先週、ビットコイン現物ETFの申請を行った。

同社CIOのマット・ホーガン(Matt Hougan)氏は、市場は現物ETFをサポートできるほど十分に成熟していると述べ、ビットコイン価格発見のための主要取引所としてシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)を挙げているビットワイズがまとめたデータを引用した。

グレイスケールのETF申請

タイミングが気になり続けている。ゲンスラー委員長やSEC職員たちは、ビットワイズやグレイスケールの申請で法的に義務付けられている期間中に、ビットコインETFをより許容するような姿勢に転換するだろうか?

その答えは、市場の成熟性に関するSECの見方にはまったく左右されないかもしれない。2018〜2019年にビットコインETF申請を許可した際にSECがしばしば挙げた2つの重要な問題は、成熟性と市場の監視だったが、ゲンスラー委員長の最近の発言は主に、投資家保護に重点を置いている。

ゲンスラー委員長は、現物ETFが対象に含まれる1933年の証券法と比べて、先物ETFが対象に含まれる1940年の投資会社法で法制化されている投資家保護に満足していると語った。

ビットコインETF立ち上げを目指す企業にとっての課題は、先物ETFと現物ETF、そしてそれぞれの投資家保護条項を比べるところにあるかもしれない。

最後に個人的な話を少しすると、ビットコインETFの話題を扱ったところから、私は規制関連の報道を担当するようになった。それでも、19日に(先物であっても)ビットコインETFが取引開始となったことには、いまだに本当に驚いている。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock.com
|原文:What to Make of the First Bitcoin Futures ETF Launch