NFTとAIの出会いがやってくる【オピニオン】

NFTとAIの出会いがやってくる【オピニオン】

NFT(ノン・ファンジブル・トークン)は、暗号資産エコシステムにおいても最も重要なトレンドの1つになっている。第1世代のNFTは、所有権の象徴や委譲、自動化といった重要な性質、そしてNFT市場インフラの基盤構築に重点を置いていた。

最もシンプルな形態のNFTであっても、驚くほどの価値を捉えられるが、NFT市場の盛り上がりによって、信号と雑音を区別するのが、比較的困難になっている。

しかし、NFT分野が進化するに伴って、NFTの価値提案は静的な画像や文字から、より動的で知的なコレクション品へと移行するべきだ。人工知能(AI)が、次なるNFTの波に影響を与える可能性が高い。

私たちはすでに、ジェネラティブアート(コンピュータソフトウェアのアルゴリズムなどによって生成される芸術作品)という形で、NFTとAIの合流を見ている。しかし、その可能性ははるかに大きなものだ。AIの機能をNFTのライフサイクルに組み込むことで、これまでに見たことのない形態のインテリジェント・オーナーシップへの扉が開かれるだろう。

インテリジェント・オーナーシップ

NFTは現在、美術品やコレクション品などの現実世界の分野をデジタルで表現したものにおおむね留まっている。魅力的ではあるが、そのようなビジョンは非常に限られたものだ。

NFTを考えるさらに魅力的な方法は、デジタル所有権(オーナーシップ)の基本構造としてである。所有権を表すことには、コレクション品よりもずっと幅広い用途がある。実世界では所有権は主に、静的な記録として表されるが、デジタルのオンチェーンの世界においては、所有権はプログラム可能で、構成可能、そしてもちろん、インテリジェントなのである。

インテリジェント・デジタル・オーナーシップがあれば、その可能性は無限大だ。NFTの最もよく知られる用途の1つである、コレクション品の文脈でこれを考えてみよう。

制作の背後にあるインスピレーションを説明するために質問に答えたり、特定の文脈に合わせて答えを変えられるような、自然な言語で会話可能なデジタルアートNFTを想像して欲しい。

あなたの感情やムードに合わせて、常に満足のいく体験を提供するNFTを思い描くこともできる。ウェブサイトとやり取りする中で、ユーザーの体験を改善するためにどの所有権を提示するべきか決定できるような、賢いNFTウォレットはどうだろう?

小説家ウィリアム・ギブスンの有名な言葉「未来はすでにここにある。ただあまり均等に分配されていないだけなのだ」にならって、インテリジェント・デジタル・オーナーシップを、現在のAIとNFTのテクノロジーで実現可能なものと考えてみるべきなのだ。NFTはデジタル所有権の基本構造として進化する可能性が高く、知能はその一部であるべきだ。

AIとNFT

インテリジェントNFTを現在のテクノロジーでどのように実現するかを理解するために、AIの分野が現在のNFTとどのように交差する点を持つかを理解する必要がある。NFTのデジタル表現は、画像、動画、文字、音声といったデジタルフォーマットに依存している。これらは、様々なAIの分野と見事にマッチする。

ディープラーニングは、データセットから知識を一般化するために深い神経ネットワークに依存するAIの分野である。ディープラーニングの背景となる考えは、1970年代には存在していたが、そのメインストリームへの普及のきっかけとなった多くのフレームワークやプラットフォームによって、ここ10年で爆発的に成長した。インテリジェントなNFTを実現するために、非常に重要な分野が、ディープラーニングには存在する。

コンピュータビジョン:NFTは現在、主に画像や動画に関わるもので、そのために、コンピュータビジョンの進歩を活用するのにうってつけだ。ここ数年、畳み込みニューラルネットワーク(convolutional neural networks:CNN)や敵対的生成ネットワーク(generative adversarial neural networks:GAN)、さらに最近ではトランスフォーマーといった技術が、コンピュータビジョンの境界を押し広げた。

画像生成、物体認識、シーン理解は、次なるNFTテクノロジーに応用できるコンピュータビジョン技術の一例である。ジェネラティブアートは、コンピュータビジョンとNFTを組み合わせるのに、分かりやすい領域だろう。

自然言語理解:言語は、認知を表現する基本的な形であり、所有権の形態を含む。自然言語理解(natural language understanding:NLU)は、ここ10年におけるディープラーニングでの最も重要なブレークスルーのいくつかの中心にあった。

GPT-3などのトランスフォーマー・パワーリングモデルといった技術が、NLUの世界で新たなマイルストーンに到達した。質問応答、要約、感情分析といった分野が、新しい形態のNFTにとって重要となり得る。言語理解を既存形態のNFTに重ねることは、NFTの双方向性とユーザー体験を高めるためには、簡単なメカニズムのように思われる。

音声認識:音声インテリジェンスは、NFTに大きな影響を持ち得るディープラーニングの3つ目の分野と考えることができる。CNNや回帰型ニューラルネットワーク(recurrent neural networks:RNN)などの技術が、ここ数年間で音声インテリジェンスの分野を前進させた。

音声認識やトーン分析といった能力が、興味深い形態のNFTを支えることができるだろう。音声NFTは、スピーチインテリジェンスにとってぴったりのシナリオに思われる。

AIとNFTが交わる場での3つの重要なカテゴリー

言語、視覚、スピーチインテリジェンスにおける進展が、NFTの可能性を広げる。AIとNFTが交わる場で解き放たれる価値は、NFTエコシステムの多くの側面に影響を与えるだろう。現在のNFTエコシステムには、AIの能力を組み込むことで即座に考え直すことのできる3つの基本的なカテゴリーが存在する。

AIが生成するNFT:これは、AIテクノロジーの最近の進歩から恩恵を受けることのできるNFTエコシステムの最も分かりやすい部分だろう。コンピュータビジョン、言語、スピーチといった分野でディープラーニングの技術を活用すれば、今までにないようなレベルでNFTクリエーターの体験を深めることができる。

現在私たちは、ジェネラティブアートなどの分野でこのトレンドを目にすることができるが、使われるAIの技術という点でも、取り組むユースケースという点でも、比較的限られたままである。

近い将来には、AIが生むNFTの価値がジェネラティブアートを超えて、より一般的なNFTの有用性のカテゴリーへと広がり、最新のディープラーニング技術を活用するための当然の手段となるだろう。

このような価値提案の例は、最先端のディープラーニング手法をNFT作成ですでに実験的に活用しているRefik Anadolなどの、デジタルアーティストに見ることができる。

Anadolのスタジオは、GANなどの技術を使う点でパイオニアであり、量子コンピュータにも手を出し、驚くべき視覚作品を生み出すために、数億の画像や音声クリップでモデルをトレーニングしている。Anadolが最近検討しているメカニズムの1つが、NFTなのである。

NFTに組み込まれたAI:AIをNFT作成に使うことはできるが、だからと言って、インテリジェントなものになるとは限らない。しかし、もしそうだとしたら?

AIの能力をNFTにネイティブで組み込むことは、これら2つの魅力的なテクノロジートレンドの合流によって解き放たれるもう1つの市場である。言語やスピーチの能力を組み込んで、ユーザーと対話したり、質問に答えたり、特定の環境とやり取りできるNFTを想像してみて欲しい。Alethea AIやFetch.aiといったプラットフォームが、すでに取り組みを始めている。

AI優先のNFTインフラ:NFTのためのディープラーニングの技術の価値は、個々のNFTのレベルだけでなく、エコシステム全体で反映される。

NFTマーケットプレース、オラクル、NFTデータプラットフォームといった基本的要素にAI機能を組み込むことで、NFTのライフサイクル全体で徐々にインテリジェンスを可能にするように、基盤の準備を整えることができる。

オンチェーンのデータセットから抽出したインテリジェント・インディケーターを提供できるNFTデータAPIやオラクル、ユーザーにスマートなおすすめを提供するためにコンピュータビジョンの手法を使うNFTマーケットプレースを想像してみて欲しい。データとインテリジェンスAPIは、NFT市場の重要な要素となるだろう。

AIはあらゆるソフトウェアの状況を変えており、NFTも例外ではない。AIの機能を組み込むことで、NFTは所有権を表す基本的な構造から、インテリジェントで自己進化的な形態、あるいはより豊かなデジタル体験や、NFTクリエーターと消費者にとってより高い有用性を実現する所有権を表すものへと進化できる。

インテリジェントNFTの時代には、斬新なテクノロジーのブレークスルーは必要ない。コンピュータビジョン、自然言語理解、スピーチ分析の最近の進歩を、NFTテクノロジーの柔軟性と組み合わせれば、NFTエコシステムにインテリジェンスをもたらす実験のための優れた舞台はすでに提供されている。


ヘスース・ロドリゲス(Jesus Rodriguez)は、暗号資産向け市場情報プラットフォーム、IntoTheBlockのCEOである。主要テック企業やヘッジファンドなどで、指導的役割を果たした経験も持つ。活発な投資家、講演者、作家であり、ニューヨークのコロンビア大学で客員講師も務めている。


|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock.com
|原文:The Coming Convergence of NFTs and Artificial Intelligence

おすすめ記事: