三菱UFJ、GO-NET事業停止へ──米アカマイとの超高速決済JV

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)と、米アカマイ・テクノロジーズが共同で設立し、超高速オンライン決済ネットワークの開発を進めてきたGO-NETが、事業を3月をめどに停止する。

三菱UFJは2月22日、Global Open Network Japan(GO-NET Japan)が事業停止に向けた準備を開始することを発表した。今後、取引先などとの協議を行い、GO-NET Japanの清算手続きを進める。MUFGは、GO-NETの事業停止の背景として、新型コロナウイルスのパンデミックによる決済件数の伸び悩みなどをあげている。

「今後拡大を予定していた IoT(モノのインターネット)事業では、GO-NET Japanの高速大容量のブロックチェーンを必要とする市場を捉えきれず、事業化には想定より時間を要する見通しとなりました。この結果、長期に亘り事業の黒字化が見込めないことから、GO-NET Japan の事業を停止することが望ましいとの判断に至りました」(発表文)

GO-NETは、アカマイの独自ブロックチェーンを活用し、三菱UFJが主導してきた超高速オンライン決済ネットワークの開発企業で、同ネットワークは毎秒10万件の決済取引を処理できる能力を持つ。

今後、IoT(モノのインターネット)の社会実装が進み、あらゆるデバイスを通じて少額決済を行う環境が整備されれば、毎秒100万件や1000万件まで処理能力を拡張できるとしていた。

自販機のタッチ決済を開始した2021年

(MUFGとアカマイが2019年4月に開いた共同記者会見に出席した亀澤氏(左)とレイトンCEO(右)/撮影:coindesk JAPAN)

MUFG社長の亀澤宏規氏(当時副社長)と、アカマイのトム・レイトン(Tom Leighton)CEOは、2019年4月に都内で記者会見を開き、GO-NETの事業構想を発表。

昨年(2021年)7月には、国内大手飲料メーカーと連携し、自動販売機でクレジットカードをかざして行う「タッチ決済」を開始する計画を明らかにした。飲料自販機を中心に、アミューズメント施設・コインパーキング・食券販売機などでの利用拡大を進める事業計画を公開していた。

当初の計画では、将来的には、コンビニエンスストアやドライブスルー、フードコートなど、少額タッチ決済と親和性の高い決済取引でも同サービスを展開する予定だった。昨年7月時点で、GO-NETは2029年までに飲料自販機の決済市場で約30%のシェアを獲得し、約130億円の売上目標は据えていた。

三菱UFJ信託が進めるブロックチェーン事業

三菱UFJグループ全体では、ブロックチェーン技術を軸に置いた次世代金融基盤の開発は着々と進められている。現在主導しているのは三菱UFJ信託銀行で、同行はデジタル証券(セキュリティトークン)の発行・管理をブロックチェーン上で行うことができる「Progmat(プログマ)」を開発してきた。

Progmatでは、日本円に連動するステーブルコインを発行できる機能や、事業会社や個人がデジタル資産を管理するウォレット機能が搭載される計画で、世界的に人気が高まっているNFTにも対応していく方針だ。

セキュリティトークンは、不動産や企業などが保有する動産、社債などを裏付けるデジタル証券で、国内の金融大手各社がこの仕組みを活用した新たな投資商品の開発を進めている。

|取材・テキスト:佐藤茂
|トップ画像:MUFGの亀澤宏規社長/coindesk JAPANが2019年4月に撮影