「取引所」の定義を広げる──SECの提案に懸念の声

米証券取引委員会(SEC)は、「コミュニケーション・プロトコル・システム(CPS)」のSECへの登録と、記録、取引監視、報告を義務づける提案を発表した。

ここでのCPSとは、証券の買い手や売り手が「やり取り」する手段を提供するシステム、あるいはプラットフォームと定義されている。

この広範かつ新しいアプローチによって、暗号資産(仮想通貨)、その中でも特に分散型金融(DeFi)がSECの規制対象になってしまうのではないかという懸念が、暗号資産業界を吹き荒れている。

そうなれば、アメリカを拠点に暗号資産プロジェクトを運営するリスクを劇的に増加させるような執行行為が、絶え間なく押し寄せてくる可能性がある。

多くの懸念

アメリカの暗号資産市場に参加するすべての人が、声を上げることが不可欠だ。SECは4月18日まで、この提案に対するコメントを募集しており、すべての懸念を検討し、それに対処するまでは、最終的なルールをまとめることはできない。懸念は山積しているのだ。

出発点となる2つの大きな問題がある。

第一に、どのトークンが証券なのか?この長年の疑問に、SECの提案は明確な答えを与えてはいない。次に、SECはそもそも、この提案の範囲に暗号資産も含めようと意図していたのか?654ページに及ぶ提案のどこにも、暗号資産、DeFi、ブロックチェーンプロトコルは言及されておらず、疑問の余地が残るのだ。

SECは単純に、暗号資産は関係ないと明言することで、これらの問題を解決できる。そうしてくれることを、願わずにはいられない。

監視強化

ゲンスラー委員長の指揮のもと、SECは暗号資産への監視強化を行う意思を示してきた。鍵となるのは、その方法だ。法律、規制、執行といったアプローチが、暗号資産をSECの管轄内に引き込むためのオプションとなっている。今回の提案が、そのような規制設定のためのSECの最初の取り組みだとすれば、暗号資産業界の方としても、多くの言い分が生まれてくるはずだ。

暗号資産業界側の懸念の最たるものは、このルールがSECの権威を超えるものではないか、という点だ。SECは取引所を規制するが、取引所とは従来、買い手と売り手が実際に売買を行うプラットフォームのことを意味し、付随的なサービスやプラットフォームは含まれなかった。

今回のルールは、その範囲を売り手と買い手が売買について単に話し合うだけのプラットフォームへと広げるものだ。これは大きな変化であり、SECはそのような変更を行う許可を、議会から得てはいない。

さらに今回の提案は、非現実的だ。CPSを「可能にするもの」に登録を義務づけるのだが、「可能にするもの」の意味するところは、謎である。

DeFi問題

その問題は、仲介業者抜きで金融サービスを改革しようとするDeFiにおいて、さらに複雑となる。分散型貸付、取引所、情報プラットフォームは時に、開発者たちの国際的かつ緩やかな共同体によって作られ、グローバルなオンラインコミュニティによって維持されている。

オープンソースプロジェクトに貢献したソフトウェア開発者たちが、プラットフォームが買い手と売り手のやり取りを助けるからといって、SECに登録すると、誰が信じられるだろうか?

コミュニティはどうやって登録するのか?あるいはコミュニティのメンバーの誰が登録するのか?中央集権的な権威がいない場合に、誰が記録、監視、報告の責任を負うのか?

今回の提案は、中央集権的権威に依存した規制の枠組みを、分散型システムに押しつけることに内在する問題を浮き彫りにしている。

さらに、ルールは具体的なプロセスに沿って発せられるべきで、今回の場合、そのようなプロセスが多くの面で不十分だ。

まず、SECはコメントのための十分な告知とチャンスを与える必要がある。証券流通市場の規制を大幅に拡大し、(暗号資産に言及せずに)暗号資産も含む可能性のある、654ページの提案に対するコメントに数週間の猶予しか与えないのは、まったくもって不十分だ。

次に、SECの提案は、そのルールのコストとメリットを、経済的観点からも含めて、分析しなければならない。そのような分析が欠けているが、今回の提案の範囲と曖昧さを考えれば、驚くことでもない。

そのような分析をすれば、成長を続けるアメリカの暗号資産システムに対するコストははっきりするだろう。アメリカ発のDeFiプロジェクトは、アメリカを去るよう促されるが、それはDeFiプロジェクトをはっきりと禁止するのと同じ結果をもたらす。

アメリカ国民は伝統的金融サービスよりも効率的で公平、アクセスしやすいことが証明されてきている暗号資産プラットフォームへのアクセスを失い、SECはおそらく意図せずに、既存の金融大手企業の優越性を強化するような、規制による堀を築いてしまうことになるだろう。

憲法修正第1条との折り合い

これまで述べてきたような欠点が十分でなかったとしても、今回の提案は、アメリカの憲法修正第1条とも相容れない。この提案はそのままだと、中身に基づいて言論を規制するものだが、それは憲法違反と思われる。

SECがそのような形で言論を規制するためには、やむを得ない理由を持つ必要があり、規制の境界線を非常にはっきりとしたものにしなければならない。しかし、そのどちらも当てはまらないようだ。これは、致命的欠陥である。言論の自由に対する影響について、提案の中で触れなかったことも、同様に致命的なミスだ。

SECは、証券の流通市場を規制するという、非常に困難な責務を負っている。技術的進歩に対処し、法的な明確さを提供し、規制によって条件を公平にすることで、市場での競争を支えるためのSECの努力は、称賛されるべきだ。

しかし、その努力が十分でない場合には、問題を列挙し、対応しなければならない。アメリカの法律は、そのチャンスを国民に与えており、4月18日までに意見を表明することで、そのチャンスを活かさなければならない。

明確かつ毅然として、しかし礼節は忘れずに、私たち一人一人が、最終的な規制の対象から暗号資産をはっきりと除外するよう、SECに頼む必要がある。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:lev radin / Shutterstock.com
|原文:A New SEC Definition for ‘Exchanges’ Has Big Implications for Crypto