イーサリアムを多く保有しているのは誰だ?再注目される資産の分散度

イーサリアムに特化したブロックチェーンソフトウェア技術企業コンセンシス(ConsenSys)を立ち上げたジョセフ・ルービン(Joseph Lubin)氏は、どれほどのイーサ(ETH)を保有しているのだろうか?

誰にも分からないし、本人も口を開こうとはしない。

ルービン氏の保有ETH

「いや、それを自ら公表することはない」と、かつてはイーサリアムの「リッチな後援者」とも呼ばれていたルービン氏は、米CoinDeskのイベント「コンセンサス 2022(Consensus 2022)」のステージ上で語った。

今回、テキサス州オースティンの会場でこのよくある質問をしたのは、暗号資産(仮想通貨)投資企業ギャラクシー・デジタル(Galaxy Digital)のクリスティーン・キム(Christine Kim)氏であった。

イーサリアムのコンセンサスアルゴリズムを全面的にアップデートするための数年にわたる取り組みが終わりに近づく中、ルービン氏の保有するイーサの数は確かに、これまで以上に大きな関心事となっている。

新しいセキュリティプロトコルとなるプルーフ・オブ・ステーク(PoS)では、人々が資産をステーキングすることで、スマートコントラクトブロックチェーンとしては時価総額最大のイーサリアムの安全を確保する。

キム氏は、「保有資産が、誰がブロックの生成、トランザクションの提案、ネットワークコンセンサスの形成に参加できるかに直接影響を与える」と指摘。つまりルービン氏が、世界で最も使われているブロックチェーンをコントロールできてしまう可能性があるのだ。

ステージ上でルービン氏は、自らの保有資産が「1%の半分近くになったことなど一度もない」と「安心して」言うことができるとした。

これは、ルービン氏の保有量がある時点では、イーサ全供給量の5〜10%にあたるというこれまでの推計とは異なる。フォーブス誌は2018年、暗号資産界で2番目にリッチな人としてルービン氏を挙げた時に、そのような数字を引用した。米証券取引委員会(SEC)のゲンスラー委員長もその数字を信じていたが、このデータは確かに、今となっては古いものだ。

クオンツヘッジファンドを創業し、ゴールドマン・サックスでテクノロジー担当バイスプレジデントを務めたこともあるルービン氏は、イーサリアムに誕生時から寄り添ってきた。

初期の貢献者

1800万ドルの新規コイン公開(ICO)でも、ルービン氏はイーサの主要な買い手の1人だった可能性が高い。さらに、イーサリアムのCOOとして、イーサリアム財団が「初期のプロジェクト貢献者」に配分した推定600万のイーサのうち、かなりの量を受け取った可能性も高い。

しかし、事態はそれほど単純ではないだろう。ルービン氏は過去5年間、コンセンシスを通じて、何百ものイーサリアムスタートアップやオープンソースプロトコルに資金提供してきたが、多くの場合、手持ちの資金を使っていた。さらに、熱心なエコシステムリーダーであることは確かだが、手持ちのイーサの一部を法定通貨に替えてもいるはずだ。

「トークンを広めてきただけだ」とルービン氏は語り、「イーサリアム誕生以来、新たにトークンを獲得したことはない」と続けた。イーサリアムが稼働し始めたのは2015年。その前に、最初の供給の60%をあらかじめ分配する「プレマイニング」が行われた。

自らが保有するすべてのブロックチェーンアドレスを公開しない限り、ルービン氏がこのような主張を証明することはできないが、それは銀行口座の詳細を公開するに等しい。

「開放性」と「検証可能性」がデジタル資産業界の指針だが、個人レベルでは、私たちの関知すべきことではないのだろう。

ルービン氏は確かにイーサリアムに影響を与えており、浪費的かもしれないが気前の良いリーダーであり、支援者であり、投資家と見られている。

かつての従業員から訴訟を起こされ、JPモルガンに擦り寄って、インキュベーション的ではなく、お金を投げ捨てるような投資戦略を採用することでコンセンシスを破産の寸前にまで追い込んだと批判されてきた。しかし、ルービン氏のビジョンや資金は、イーサリアムの中核となっているのだ。

当初は借り入れをせず、投資も受けず、破産しかけたコンセンシスをルービン氏は、愛情を込めて「グローバルな有機体」と呼んだ。しかし、初期には1年に1億ドルものキャッシュを使い切ってしまった有機体なのだ。無料で使えるメタマスクなどの重要なソフトウェアを手がけもしたが、その営利目的の事業の多くは失敗に終わっている。

ギャラクシー・キャピタルのキム氏によるリサーチによれば、流通しているイーサは、当初は極めて集中していたが、今ではより分散している。プレマイニングされたイーサの大半を受け取ったアカウントの多くが、かなりの量のイーサを中央集権型取引所に送ったことも、分析によって明らかとなった。

「逆に、移動されずに保有されたままなのは、わずか160万ETH(プリマイニングされたイーサの2.3%以下)だ」と、キム氏は指摘。イーサリアムが別れを告げようとしているマイニングというプロセスも、最初期のユーザーの間でイーサを分散させるのに貢献した。

「私の知る限り、最初の保有者の間にイーサが集中しているという懸念はない」とルービン氏は語った。

PoSへの移行とステーキング

イーサリアム内で資産が平等に分配されていないことは、それを公平さの指標とする人たちにとって、長年批判の対象となってきた。しかし、PoSに移行すれば、資産の分散度が、イーサリアムの検閲耐性や中立性に直接影響を与えるのだ。

PoSによって理論的には、ネットワークの検証に誰でも貢献し、報酬を受け取ることができるようになる。対照的に、現行のプルーフ・オブ・ワークでは、専用のマイニング機器を購入するためにかなりの資金が必要となる。

すでに、PoSで採用されるステーキングから利益を上げる新しい層が出現している。バリデーターになるには32ETHかかるからだ。暗号資産取引所のコインベース、クラーケン、バイナンスのステーキングシェアは、全体の20%強に過ぎない。

流動性のあるステーキングプロトコルのLidoは、漸増するETHの預け入れを可能にする初期参入者であったが、今では「ステーキングされたETHを管理する単独で最大の組織」となっている。

LidoにステーキングされたETH「stETH」は現在、ETHよりも5%割安で取引されている。その一因は、後に額面金額で交換可能な債券のように機能するからだ。

しかし、市場の低迷サイクルの中、Lidoを使って資産を担保にしたが、顧客の資産を完全に換金することができないかもしれないセルシウス(Celsius)のようなプロトコルにまつわる、流動性の懸念もある。

ステーキングしている人たちの間での資産の集中は、ルービン氏の保有するイーサよりもはるかに大きな問題だ。PoSシステムにおいては、ステーキングされた資産はさらなる資産を生み出すことができる。つまり、ネットワークはすでに1番多く資産を持っている人に、最も大きな見返りを与えることになるのだ。

「コンセンシスは新しいタイプの企業であり、業務の中で何千もの様々なトークンを扱う」とルービン氏は語り、「(PoSへの移行である)The Mergeに備え、イーサを集めるために最善を尽くしている。(中略)The Mergeは上手くいくだろうと想定している」と続けた。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:How Much ETH Does Joe Lubin Hold?