世界で強まる暗号資産規制:技術革新の抑圧か、それとも新規参入者を呼び込むか?【コラム】

オーストラリア政府が8月22日、新しい暗号資産(仮想通貨)規制体制を発表した。今年4月には、イギリス政府がステーブルコインに対する新しい規制を導入する計画が報じられるなど、世界中で消費者保護の名目で、デジタル資産を監視・コントロールするための取り組みが急速に広がっている。

各国の取り組み

オーストラリアのジム・チャルマーズ財務相は声明の中で、「財務省は2022年、暗号資産や関連するサービスの規制方法を決定するのに役立つ『トークンマッピング』を優先事項としていく」と語った。

マッピングとは、資産の分類のために、暗号資産の基盤となっているコードや実際の用途を考慮する戦略。デジタル資産規制において、オーストラリアがより柔軟なアプローチを取ることができるようになると考えられている。

4月には、イギリスのリシ・スナク財務相が、「未来の企業、彼らが生み出す雇用を、イギリス国内で目にしたい。効果的に規制を行うことで、長期的に考え、投資するのに必要な信頼を彼らに与えることができる」と語った。

世界中で規制当局は、オープンソースの暗号資産の様々な用途を考慮しつつ、イノベーションを潰してしまわないような規制の策定という、難題に直面している。

例えばイギリスの財務省は、決済のためのステーブルコイン使用に関する規制を明確にするための法案を可決させる計画。ステーブルコインを規制の枠組みに取り込むために、英金融行動監視機構(FCA)などの当局を監視するための政府の権限を強化し、イギリスを「暗号資産ハブ」にしようとしている。

EUは今年6月、待ち望まれた暗号資産規制法案「Markets in Crypto Assets(MiCA)」を提案。この法案は、デジタル資産とステーブルコインを規制するためのもので、デジタル資産企業は、自社プラットフォームで行われるすべての暗号資産取引を公開することが義務付けられる。

これに先立ち4月には、米証券取引委員会(SEC)が暗号資産取引所はSECに登録し、関連するすべての金融取引関連の法律の遵守を義務付けられるべきと述べた。

イノベーション潰し?消費者保護?

世界中の当局者たちが、これらの動きは、消費者保護と、様々な政府機関が、変化を続けるデジタル資産分野の最前線に立ち続けられるようにするためのものだと主張。

しかし、ブロックチェーン支持者や専門家らは、新しい規制が、ブロックチェーンテクノロジーを成功させているイノベーションを抑えつけ、保護しようとする消費者の安全すらも脅かす可能性があると懸念を表明している。

EUのMiCA草案はとりわけ、46もの主要暗号資産企業から批判を受けた。この法案の一部が、デジタル資産の保有者、具体的には彼らのプライバシーや個人情報の安全性をリスクにさらすものだというのが、彼らの言い分だ。

EU加盟各国の財務相宛ての書簡に署名したこれら46の企業は、この法案によってEUは他国とズレた存在となり、暗号資産スタートアップにとってはるかに魅力のない国となり、EU諸国で優秀なテック人材が活躍することを阻むことになると主張した。

皮肉なことに、法定通貨の発行者としての伝統的な政府の役割に対する不信感こそが、ビットコインの誕生のきっかけとなり、世界中でデジタル資産市場の爆発的な成長を支えたのだ。

暗号資産、NFT(ノン・ファンジブル・トークン)、その他のデジタル資産を受け入れる人たちが驚くほど増加してきたという事実は、ユーザーたちがボラティリティの高いデジタル資産市場に伴うリスクを甘んじて受けるつもりであることを示唆している。

残念なことに、厳しい規制や法律の施行は、「もし施行されたら」という仮定の話というよりは、「いつ施行されるのか」という時期の問題のようだ。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Will Global Regulations Stifle the Crypto Industry or Encourage New Users?
※編集部より:本文を一部修正して、更新しました。