「投資と消費の境界線が曖昧に……」北米で知った暗号資産とNFTの現在地【イベントレポート】

「投資と消費の境界線が曖昧に……」北米で知った暗号資産とNFTの現在地【イベントレポート】

アメリカで今年6月、相次いで開かれた暗号資産イベントConsensusとNFT.NYC。そこに日本から参加した人たちが、現地の空気感を報告するイベントが7月、都内で開催された。

コインチェック常務執行役員の天羽健介氏と新規事業開発部の川嶋邑氏、創・佐藤法律事務所・代表弁護士の斎藤創氏、HashPort代表の吉田世博氏が登壇、猛スピードで変化するクリプトとNFTの業界最前線をレポートした。

主催はbtokyo members、coindesk JAPANがメディアパートナー。代表の神本侑季がモデレーターを務めた。

目立つ、女性参加者たちの姿

創・佐藤法律事務所・代表弁護士 斎藤創氏

テキサス州オースティンで3日にわたり開催されたConsensus2022(主催:米CoinDesk)。現地に行った斎藤弁護士は「アメリカの暗号資産業界の市場規模は、日本と比べ10倍以上あるイメージだが、今回はそれ以上の熱気を感じた」という。

会場は2000人規模のメインステージを中心に、数百人規模のステージが複数、小規模ステージも多数用意されていた。周辺ホテルにはNFTやDAOなどをテーマとしたホールもあり、非公式サイドイベントも複数同時開催。企業展示ブースは200を超える規模感だった。

斎藤氏は、日本での暗号資産業界イベントに比べて「女性の参加比率が高い印象」で、「スピーカーは3〜4割、参加者は2〜3割が女性だった」と振り返る。参加者の年齢層についても「かなり若くカジュアルで、夜のパーティも野外・クラブのイベント風で盛況だった」と指摘していた。

セミナーはウォールストリート系(金融系)、技術、NFT、DAO、レギュレーション、初心者向け、取引所、リベラル系など多数あり、「硬い層から柔らかい層まで幅広い人たち」がいたという。

数多くのセッションの中で印象に残ったのは、規制議論の日米文化差で「アメリカでは法規制があっても諦めず『(法規制は)憲法違反だと主張して争おう』みたいなスタンスがある」と話していた。

「暗号資産の中心地は、やはり北米だ」

HashPort代表 吉田世博氏

HashPort吉田氏は「テックの聖地であるサウス・バイ・サウスウエストを意識していると感じた。夜も有名人を招いたフェスが開かれていた。街全体を通じて、ポップな雰囲気作りがされていた」と会場付近の印象を述べた。

一方、来場者は金融機関や法律家など「お堅い」人たちも多い印象だったそうだ。吉田氏は会場の雰囲気についてこう締めくくっていた。

「海外のVC関係者らとランチやディナーをすると、会場近くのステーキ屋は満員で、きっちりジャケットを着た人たちが難しそうな話をしている雰囲気だった。世の中のトレンドとしては『ポップ』なほうに寄っているが、逆にファイナンス業界の人たちが、この領域に興味を持って寄ってきているのかもしれないという印象を持った」

吉田氏は「暗号資産の中心地は北米だと、あらためて強く感じた」という。

「最近はAxie Infinityなどアジア発のサービスが世間で盛り上がり、アジアの投資家がリードしているプロジェクトが数多く出ている。しかし、今回のカンファレンスには、アジアのいかなるカンファレンスよりも大勢の人が集まっていた」

「著名な登壇者も多く、BinanceのCEOがレギュレーションについての質問に回答したりしていた。また、登壇していなくても、名のあるブロックチェーンの創業者が何人も現地に入っていた。その背景には、大きな金融資本がいまクリプトの世界に入ってきていて、彼らを中心にビジネスが回っていることがあるのだろう」

タイムズ・スクエアが「ジャックされていた」NFT.NYC

報告会後半のトピックは、ニューヨーク・マンハッタンで開催されたNFTの祭典「NFT.NYC」について。

コインチェックの川嶋氏は、会場近くの様子について「たまたま旅行に来た通りすがりの大学時代の友人が『NFTのイベント』と気づくレベルで、まさに街をジャックしているという雰囲気」だったと語った。

「ニュースによるとNFT.NYCの公式参加者は15000人となっていたが、体感としてはもっと人が多かったような印象だ。マンハッタンで一番有名な『タイムズ・スクエア』では、常にNFT、Web3関連の広告が映し出されていた」

目立っていた「サイドイベント」

コインチェック新規事業開発部 川嶋邑氏

「NFTビジネスの最先端を知ろう」というテーマで、ニューヨークを訪れたというコインチェック・チーム。彼らが注目したのは2つの「サイド・イベント」だった。

その1つ目は、「Bored Ape Yacht Club(BAYC)」を運営する、Yuga Labsが主催した「ApeFest」だ。

「おそらくNFT.NYCの中で、最大規模のイベント。会場はマンハッタン中心部から少し離れたPier17で、BAYCの世界観を再現していた」と川嶋氏。

このApeFestは「BAYC」「MAYC」のホルダーだけが参加可能なイベントで、チケットは「Token Proof」というサービスで発行されていた。川嶋氏はNFTウォレット「メタマスク」との連携で、「ものすごく簡単にチケットが手に入った」と振り返る。

川嶋氏によると、イベントの最大の特徴は「世界観」がしっかりとお金をかけて作り込まれていたこと。たとえば会場で提供されるドリンクも、すべてApeにちなんだテーマで作られていたという。

また、「エクスクルーシブ感」も強く印象に残った。そもそも参加には高価なNFTが必要なため、参加者はかなり絞られている。会場でしか買えない限定グッズショップには行列ができていて、参加者は大量購入していたそうだ。サプライズ・ゲストとして、Snoop Dogg や Eminemなどのビッグ・ネームも来場していたという。

The Sandboxの存在感

もう一つ川嶋氏が注目したのは、The Sandbox主催のクラブイベント。The SandboxはNFTを活用したメタバースゲームのプラットフォームで、イベントは主にパートナー企業、クリエイターや投資家らに向けて開催された。

こちらも会場の作り込みが豪華で、テーマ・ドリンクの提供など、世界観の再現に余念がなかったそうだ。クラブイベントのため、込み入った会話には向いていなかったそうだが、それでもクリエイター同士の交流が盛んで「コミュニティ感をより強く感じた」という。

一方でイベントでのNFTの「ユーティリティ」については、「まだ黎明期で、Ape FestもSandboxのイベントも、NFTを使ったのは入場のときぐらいだった」と指摘する。

川嶋氏によると、BAYCなどのNFTは「ある世界に入るためのチケット」として、パスポートのような役割を果たしている。「特定のNFTを持っていることで、見られる世界がある。それがコミュニティに人を引きつける魅力となっている。しかも、その世界は発展途上なので、自分たちで参加して創っていける。そこに面白みを感じている人が集まって、コミュニティができている」と川嶋氏は語っていた。

NFTは進化している。

コインチェック常務執行役員 天羽健介氏

コインチェックの天羽氏は「コインチェックがNFT事業を始めたとき、グローバル市場の規模は300億円ぐらいだった。それがおよそ1年後の2021年には5兆円弱。すごいスピードで膨れ上がった」と振り返る。

ここしばらくのNFT取引からは2021年時の勢いこそ失われている。しかし、天羽氏は「業界はかなり動いている。有名なIPホルダーやゲーム業界が「本気」のIP・誰もが知っているキャラクターを使って、水面下で準備している印象だ」と述べた。

市場だけでなく、NFTそのものも「とてつもないスピードで進んでいっている」と天羽氏。

「この1年半でさまざまな動きがあった。初めの頃はCryptoPunksという、ドット絵のNFTが流行し、ツイッターアイコンなどに活用された。その次の世代がBored Ape Yacht Clubのような、コミュニティへのアクセス権としてのNFT。次世代はさらにプラスアルファして、直接的なリターンを得るようなユーティリティが追加されるようなものが出てきている」

その変化に対応するのは「サーフィンのような感覚」で、「波のスピードを捉えていないと、失敗してしまう。早期に参入することは大事だが、新規事業をするとき、軌道修正を前提とした進め方が重要だなと、改めて思う」と天羽氏は強調していた。

ラグジュアリーNFTを表示したアップルウォッチをネックレスに

NFT.NYCにも参加したHashPortの吉田氏は、「投資と消費の境界線が曖昧になっている」と感じたという。

たとえばSandboxのパーティでは、アップルウォッチを連ねたネックレスを首にぶら下げ、そこにBAYCを表示している人と遭遇。NFTが次世代ラグジュアリー商品として「記号消費」されているのを目の当たりにしたそうだ。

従来のラグジュアリー商品と比べ、NFTの優れている点は「流動性が高いところ」だと吉田氏。

「たとえば1個1000万円の時計や車は、なかなか売れない。そもそも取引場所まで持っていかなければいけない。しかし、BAYCなら2000万円で取引されているものでも、適正価格でOpenSeaに並べておくと、数週間もすれば普通に売れてしまう」

結果的にCryptoPunksや、BAYC、CLONE-Xといったブランドは、ラグジュアリー的に消費されるだけでなく、「極めて流動性の高い投資商品にもなっている」と吉田氏は語った。

一方で、北米ではゲームNFTについての評価は「思ったより高くなかった」と指摘。「ゲームは今後もアジア発が主流を占めるのではないかと考えている。ここは、日本企業にとってもチャンスがあるところなのでは」と分析していた。

目まぐるしく進化しているクリプトの世界。

吉田氏は、「1998年のインターネット・ユーザーの数は、いまのクリプト・ユーザー数と同じ。ユーザーは熱狂していたが、まだまだ少数派だった」と指摘。そのうえで、「その後、インターネットが社会実装され、市場も拡大したことを踏まえると、Web3やブロックチェーン、仮想通貨も、いままさに市場が始まるタイミングに立ち会っているのではないか。多くの方がこの領域にかかわって、多様性のあるエコシステムが構築されればいい」と期待を込めていた。

|テキスト:btokyo members
|編集:coindesk JAPAN
|写真:N.Avenue

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