バイナンスUSDの需要減少、ステーブルコイン競争は新局面へ──暗号資産のキラー・ユースケースとなるか

バイナンスUSDの需要減少、ステーブルコイン競争は新局面へ──暗号資産のキラー・ユースケースとなるか

世界最大の暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンスは昨年、独自ステーブルコインのバイナンスUSD(BUSD)を大プッシュしていた。

しかし、バイナンスの健全性にまつわる憶測が飛び交う最近は、1カ月で55億ドル(約7360億円)相当のBUSDが換金され、成長に陰りが見えているようだ。BUSDの需要の落ち込みと同時に、バイナンスに預け入れられていた暗号資産の流出を示すデータも12月に明らかとなった。

CoinGeckoのデータによると、BUSDの時価総額、つまり流通しているBUSDの数×価格(理論的には1ドル)は1月3日、164億ドル(約2兆1960億円)と11カ月ぶりの低水準まで低下。12月初めは221億ドル(約2兆9590億円)だった。ちなみに時価総額はステーブルコインの中で第3位を維持している。

BUSDを発行しているのは、ニューヨークにある金融テクノロジー企業パクソス・トラスト・カンパニー(Paxos Trust Company)で、準備資産の現金と米国債に裏付けられて1ドルとのペッグを保つことになっている。テザーのUSDTやサークルのUSDCといった競合ステーブルコインと同様、BUSDの目的も伝統的な法定通貨をデジタル資産に替え、取引を円滑化することにある。

トップ2への挑戦

バイナンスは2022年9月、競合ステーブルコインのサポートを停止し、預け入れられたステーブルコインを自動的にBUSDに変換したことで増加した流通分は、最近の流通数の減少によって相殺されてしまった。

バイナンス関係者は当時、その取り組みをプラットフォームでの取引ペア集約が目的と語っていた。しかし一部のアナリストは、時価総額トップ2のUSDTとUSDCへの挑戦者として、BUSDをプッシュすることにあったと考えている。

バイナンスの戦略によって、BUSDの時価総額は11月に230億ドル(約3兆800億円)まで増加した。ちなみにBUSDへの自動的な変換が始まる前の8月は時価総額は180億ドル(約2兆4100億円)だった。

しかし先月、監査法人Mazarsの準備資産についてのレポートによって、バイナンスの安定性に対する信頼が揺らぎ、ユーザーからの引き出しが相次いだ。特に当時、業界は11月のFTX破綻を受けて不安な状態にあったことが影響した。その後、Mazarsは暗号資産関連の顧客との取引をすべて停止し、バイナンスのプルーフ・オブ・リザーブ(PoR:準備資産証明)をウェブサイトから削除している。

「バイナンスによる自動でのBUSDへの変換は、諸刃の剣だった」とデジタル資産投資プロダクトを手がける21.coのアナリスト、トム・ワン(Tom Wan)氏は指摘した。

バイナンスのユーザーは資産を引き出す際、USDTとUSDCで引き出したため、バイナンスはBUSDをライバルのステーブルコインに替えて、引き出しに備えなければならなかったとワン氏は述べた。

BUSD時価総額の推移(BUSDへの自動変換実施後、約20億ドル増加したが、バイナンスからの引き出し増加を受けて60億ドル減少)/出典:CoinGecko

ステーブルコイン競争

BUSDの時価総額が60億ドル(約8060億円)減少している間に、USDTとUSDCのマーケットシェアは拡大した。CoinGeckoのデータによると、USDTの時価総額は8億ドル(約1070億円)ほど増加して663億ドル(約8兆9060億円)になり、USDCの時価総額は10億ドル(約1343億円)ほど増加して、655億ドル(約8兆7980億円)となった。

それでも2022年通期では、BUSDはシェアで見れば、USDTよりも拡大幅が大きかった。

CoinGeckoのデータによると、BUSDの時価総額は2022年、20%増加。一方、USDCの増加幅は4%、USDTの時価総額は15%減少した。さらにMakerDAOのステーブルコイン、ダイ(DAI)の時価総額は43%減少、FRAXの時価総額も44%減少した。そしてもちろん、テラ(Terra)のステーブルコイン、USTが最も大きく暴落した。

「中央集権型取引所において、BUSD、USDT、USDCの間でステーブルコイン競争が始まったばかり。注目すべき指標はレバノンやベネズエラなど、自国通貨の価値が低下しているために米ドルを必要とする人たちからの需要だ」(ワン氏)

USDT(黒)、USDC(黄)、BUSD(グレー)の時価総額の推移/出典:DefiLlama

暗号資産のキラー・ユースケース

暗号資産調査企業Kaikoのアナリスト、コナー・ライダー(Conor Ryder)氏は、法定通貨の価値低下に悩まされがちな途上国におけるステーブルコインの普及は「暗号資産のキラー・ユースケース」となり得ると指摘。

「ステーブルコインは、暗号資産の中でも最善のプロダクトマーケットフィットの例だろう。途上国における多くの人の暮らしを確かに改善している」(ライダー氏)

かつては3兆ドル(約402兆円)に達した暗号資産全体の時価総額は、8400億ドル(約113兆円)まで減少したが、ステーブルコイン市場は比較的よく持ちこたえており、2022年は1880億ドル(約25兆円)から1380億ドル(約18兆円)への縮小にとどまった。

つまり、法定通貨連動型のステーブルコインが弱気相場において、多くのトレーダーに安全な避難先と見られていることを示している。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:Danny Nelson/CoinDesk
|原文:Declining Demand for Binance’s BUSD Represents New Chapter in Stablecoin Wars

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