Facebook「リブラ」はクレイジーでない:非営利団体幹部

Facebook「リブラ」はクレイジーでない:非営利団体幹部

Brady Dale
公開日:2019年 10月 13日 08:00
更新日:2019年 10月 16日 17:04

要点:

  • リブラ(Libra)が規制上曖昧な状態にある中で見失われてしまっているのは、世界中の貧困層を現代の金融システムに取り込むという、リブラの公式ミッションである。
  • 多くの非営利団体がまさにこの問題に非常に長い間取り組みを続けてきた。フェイスブック(Facebook)の名誉のために言うとすれば、同社は最も先進的な考えを持つ複数の組織をリブラ協会に迎え入れた。
  • こうした非営利組織はすでに、対象とする人々の役にさらに立つために、ブロックチェーン技術に潜在的な強みを見出している。
  • それらの慈善組織は、見せかけの飾りだけのために連れてこられたのだろうか。ウィメンズ・ワールド・バンキング(Women’s World Banking)とマーシー・コー(Mercy Corps)は、自分たちのミッションにリブラが役立たない場合には、留まることはないとCoinDeskに語った

真の国際的ファイナンシャル・インクルージョンを成し遂げることができるのは誰だろうか。多くの者が失敗したが、もしかしたら、あるハーバード大の中退者が成功するかもしれない。

6月に公表された発表資料によると、マーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)氏のフェイスブック(Facebook)の生み出したステーブルコイン「リブラ(Libra)」の最優先事項は、非銀行利用者層に手を差し伸べることだ。しかし、ウーバー(Uber)、マスターカード(Mastercard)、ストライプ(Stripe)、イーベイ(eBay)といった創立パートナーの多くは、先進国にばかり焦点を当てている。

それではリブラの運営・管理を目的としたリブラ協会(Libra Association)は、金融上のアクセスで最も苦労している人々がどのようにして、ボラティリティの低い仮想通貨リブラを手に入れられると考えているのだろうか。リブラ協会に参加している4つの非政府組織(NGO)が鍵となってくるかもしれない。

27(PayPalが離脱するまでは、28であった)の創立パートナーの中には、非銀行利用者層に手を差し伸べることに重点をおいている4つの非営利組織が存在している。マーシー・コー(Mercy Corps)、ウィメンズ・ワールド・バンキング(Women’s World Banking=WWB)、キヴァ・インターナショナル(Kiva International)、そしてクリエイティブ・ディストラクション・ラボ(Creative Destruction Lab)だ。

これまでのところ、リブラの展開が実際どのように進んでいくかについては、手がかりのようなものしか存在していない。それは部分的には、6月以降関心のほとんどが、規制当局によるプロジェクトへの全面的な反対に向けられてきたからだ。リブラの命運が米議会欧州中央銀行の手中に握られているときに、リブラはウガンダ、パキスタン、インドネシアのような場所のために作られたものであるということは忘れてしまいがちである。

しかし、インパクトパートナー(社会的影響を目的とした非営利組織のパートナー)らは、リブラの可能性を慎重ながらも楽観視しており、他のパートナーにとって義務となっている1,000万ドル(約10億7,500万円)のガバナンストークンであるリブラコイン(Libra Coin)を購入しないにも関わらず、リブラ協会が彼らに交渉の場での完全な地位を与えてくれといることに満足している。

「この少数のNGOグループは、(中略)飾りとして仕立て上げられている訳ではありません」と、WWBの最高執行責任者のJ・トム・ジョーンズ(J. Tom Jones)氏は、CoinDeskとのインタビューで語り、次のように続けた。「リスク分析の観点から非常に重要だったのです」

注目の集まる10月14日

リブラ協会は現在、協会の運営方式について決定を行なっている最中であり、CoinDeskの取材に応じた2つの非営利組織パートナーは、交渉の場で完全な立場が与えられていると考えている。リブラ協会のメンバーは10月14日、スイスのジュネーブに集まって、公式に憲章を承認する予定である。

「すべての疑問に答えが出ていて、すべてが固まっているものに参加するチャンスを与えられていたとしたら、それは私たちを引きつけはしなかったでしょう」と、マーシー・コーのジェネラルカウンシルのジェレミア・セントレラ(Jeremiah Centrella)氏はCoinDeskとのインタビューで語った。

ジョーンズ氏としては、リブラを軌道に乗せることを手伝うことが彼の組織に特に危険となるとは思えなかった。

「究極的にWWBや他のインパクトパートナーは、離脱できるという点で最終決定権を握っています」とジョーンズ氏は述べ、次のように続けた。

「我々が離脱をすれば、大きなメッセージを送ることになると、固く信じています」

PayPalの離脱以降、マーシー・コー、WWB、キヴァの広報担当者は、リブラ協会に留まる意向を表明した。クリエイティブ・ディストラクション・ラボは、CoinDeskからのコメントの求めに回答していない。

そうは言っても、WWBが離脱をすることになったら、ジョーンズ氏は次の通りに約束する。

「静かに去っていくことはありません。もし上手くいかないと考えたら、理由を明らかにします」

インパクトパートナーに対して浮かぶ当然の疑問はこれだ。フェイスブックやリブラ協会から、財政上の支援を受け取っているのだろうか。ジョーンズ氏はコメントを拒否した。マーシー・コーの広報担当者は、「実際の運営に関しては、助成金の話が出ました。現在の交渉の一部にもなっています」

ミッションステートメント

リブラ協会はそのインパクトパートナーを、ファイナンシャル・インクルージョンプログラムで少なくとも5年の実績があり、5000万ドル(約53億7300万円)の運営予算がある団体に限定している。

マーシー・コーとWWBはともに、それぞれが対象とする人々に対する財務的結果を高めることを強く重視している。

マーシー・コーは介入に対していつでも、市場主導型アプローチをとってきた、とセントレラ氏は説明し、次のように述べた。

「フェイスブックが我々に接触してきたときには、すでに分散型台帳技術に取り組む幹部作業部会を発足させていました」

マーシー・コーは、マイクロファイナンスやファイナンシャル・インクルージョンといったものに取り組み、災害からの復興や経済成長の達成のためのコミュニティー主導の方法を模索してきた。2017年には、非営利セクターにおけるブロックチェーンの可能性についてホワイトペーパーも発表している。

しかしなぜ、初期から関心を寄せているのだろうか。マーシー・コーは一般的には、差し迫る課題に打ち勝つのを支援するためには現金が一番と考えている。他のアプローチよりも有効かもしれないが、現金にはそれなりの課題もある。

例えば現金は、市場全体が破壊された場合には機能しない。現金を実際に届けること、地元通貨で現金を届けることも、困難な場合がある。さらに、非営利組織は実績を記録するために書面上の記録が必要だが、書面で記録を残すという点では現金は最悪だ。

そのためリブラは、紙幣の欠点に対処するという点で希望を与えてくれる。

リブラは、様々な仮想通貨の最高の特徴を利用して作り上げられており、初期に誰が参加できるかについて非常に選択的なプルーフ・オブ・ステークシステムを中心に構成されている。その構造は最近問題も露呈したが、リブラ協会はそのガバナンスについて頑なであるという兆候は示しておらず、時間とともに参加を広げていくことに関心を持っていることを示唆した。

WWBのジョーンズ氏も同様の点を強調した。WWBは、自らが貸し手として機能するのではなく、非常に小規模の事業経営者に対する非常に少額の貸付を行うマイクロファイナンスを円滑に行うための支援を行なっている。それには、借り手が店を数日閉店する必要がある場合に、デフォルトに対して短期ローンに保険をかけるといったサービスを提供することが含まれる。

そして世界の最貧困層は、国際金融システムの手数料によって最も苦しむ人々だ。

「コスト構造が存在しないことは、大きな勝利だ」と、ジョーンズ氏はリブラについて語った。

さらにリブラは、WWBが促進するシステムをより速く機能するようにする可能性を秘めている。借り手にとっては、ゆくゆくは銀行への行き来を省くことができ、事業により多くの時間を割くことができるようになる。保険事業については、リブラが補償金の即時支払いを可能にすることができる。

実際このスピードの力は、WWBとマーシー・コー双方の取材で度々話題に上った。

セントレラ氏は、次のように述べて最も鮮明な例を挙げた。

「ハリケーンに襲われて、その最中に口座にお金を受け取ることができるかもしれません」

大手企業に影響を与える

しかし、フォーチュン500(Fortune 500)企業が、非営利組織のアドバイスに従ったりするのだろうか。

ジョーンズ氏は、リブラ協会の完全なメンバーとしてWWBが受けている扱いに嬉しい驚きを覚えていると語った。

「少なくとも私が参加して見てきたところによれば、すべては意見の一致によって進んでいます」とジョーンズ氏は語った。

セントレラ氏は、開発途上国における大手テック企業の取り組みは必ずしも上手くいってこなかったと指摘した。プロジェクトを導くために非営利組織を迎え入れることは、同様の失敗に対してある程度の保証となる。

「私は多くの企業パートナーと仕事をしていますが、非常にかけ離れたものであったとしても、企業パートナーは皆、取り組みに最善の意図を持っていると思います」とジョーンズ氏は述べ、次のように続けた。

「1つ言っておかなければなりません。(フェイスブックのブロックチェーン責任者)デビッド・マーカス(David Marcus)氏と彼のチームとの継続的なやり取りを通じて、彼らは本当に情熱的に、なんとか解決策を見出したいのだということを示し続けてくれています」

規制上の大混乱を通じて、セントレラ氏は世界が、リブラ協会に対してこうした問題に挑戦するチャンスを与えてくれることを望んでいる。

「リブラがローンチすることを望んでいますし、もしローンチすれば、変革を起こすようなポジティブな力を持っていると期待を寄せています」とジョーンズ氏は語った。

ジョーンズ氏は推進役としてのフェイスブックに向けられた疑念を認めつつも、次のように述べて、同様の希望を示した。「世界中の素晴らしいアイディアはすべて、どこかの時点で上手くいかないと言われてきたものです」そして次のように続けた。

「挑戦してみない理由が、いったいどこにあるのでしょう」

翻訳:山口晶子
編集:T.Minamoto
写真:Jakarta, Indonesia image via Shutterstock
原文: For Non-Profits Working With Facebook, Libra Isn’t Such a Crazy Idea
執筆協力:Ian Allison