スタンフォード大教授、ステーブルコイン一問一答──リブラ、デジタル人民元からJPMコイン、テザーまで【前編】

スタンフォード大教授、ステーブルコイン一問一答──リブラ、デジタル人民元からJPMコイン、テザーまで【前編】

ダレル・ダフィー(Darrell Duffie)氏は、スタンフォード大学経営大学院の教授で、金融市場デザインについて指導と研究を行っている。

学術界の格言「出版せよ、しからずんば死を」の精神を体現するダフィー教授は、盛んに著述活動をしており、研究内容は、金融エコシステムのモデリングから、(時折操作される、ローンの利子を設定するための基準である)LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)へ疑問を投げかけるに至るまで多岐にわたる。ダフィー教授はさらに、仮想通貨、特に法定通貨に裏付けられたステーブルコインのディスラプティブな必然性についても書いている人物だ。

メールを通じて数週間にわたり、ダフィー教授にステーブルコインについて多くの質問を投げかけた。ステーブルコインの基礎の基礎から、中央銀行デジタル通貨とは何か、そしてもちろんリブラに至るまで、 下記は、そのやり取りを要約したものである。

後編:『デジタル通貨は決済をどう変える——スタンフォード大教授、ステーブルコイン一問一答』


リブラの可能性、問題を抱えても人気のテザー

1. ステーブルコインとは何か。

ステーブルコインとは、法定通貨から見て価格が一定、もしくはほぼ一定で、暗号技術を利用して保有、移転されるデジタル資産のことです。

2. 何が、最初にステーブルコインへの教授の関心を引き付けたのか。

特にアメリカにおける、現在の決済システムの質の低さとコストの高さです。

3. 2019年における、ステーブルコイン関連で最大の出来事は何であったか。

決済フィンテックへの関心という私の観点から申し上げます。昨年最大の出来事は、テザーの準備金不足問題の露呈、フェイスブックのリブラによる初の提案、そしてFRB(米連邦準備制度理事会)による、決済システム改善の必要性を満たすアプローチの一つである、FedNow推進の決断です。

4. 自身がリブラに関与したり、リブラプロジェクトに注視しているか。

リブラ関係者とは何度か会いました。私は、決済分野ではどの企業とも協働してはいません。私はただ観察し、学んでいるのです。

5. EU当局者、アメリカ議会、中国の政治家からのリブラに対する規制上の反発についてどう考えているか。

リブラに対して次のように、規制当局が反応するのは当然で適切なものです。「いいや、ユーザー保護のために当局の規則を遵守している、と当局が確信を持てるまでは、このサービスを提供することはできない」

6. リブラには、決済システムを改善させる潜在性があるか。

リブラが規制を遵守するのなら、答えはイエスです。決済の効率性を改善し、決済コストを下げる可能性があります。それは有益な展開です。決済はより速く、より安くなるでしょう。

しかし、規制の遵守は簡単ではありません。そして規制当局による認識という点では、すでに墓穴を掘ってしまっています。

7. 先ほど言及されたテザーの騒動は、今後どのような影響を与えるか。

ニューヨーク検察は、テザーを裏付ける資産を保有するトラストから、関係者への貸付を行う際に利害の対立があったと主張しました。ですから、「ステーブルなコイン(安定したコイン)」が、実は安定していないと推測するかもしれません。このことは、安定した価値を持つという点で、その信頼性に疑問を投げかけます。

8. 仮想通貨エコシステムにおけるテザーの役割とは何か。

価格の安定性は、交換手段としての利用を促します。テザーがある程度人気なのは、今のところ、ある程度価格が安定しているからだと考えています。

(関連記事:テザーの取引高が過去最高を記録した理由

9. サークル(Circle)のUSDCやバイナンス・トークン(Binance Token)などの既に存在する他のステーブルコインについて、それらは自らのエコシステム外でより大きな役割を担うことになるか。

テザーは、その裏付けの質を独立して強力にコントロールできることを示すという点で、他のステーブルコインに対する要求水準をつり上げたと見ています。今までのところ、既存のステーブルコインは自らの技術について、強い主張をすることができていません。確かに、深刻なネットワーク外部性を考えると、様々なステーブルコインはお互いに効果的な競争状態にあります。普通は誰でも、他人が使っている決済手段を利用することを選好するでしょう。

10. ダイ(DAI)のような仮想通貨に連動したステーブルコインについてはどのように考えているか。

私は偏見は持っていませんが、仮想通貨に連動したステーブルコインは、決済アプリケーションにおいて最小必要数のユーザーを獲得するのに苦労すると見込んでいます。 

翻訳:山口晶子
編集:T. Minamoto
写真:Darrell Duffie, Distinguished Professor of Finance at Stanford
原文:Stanford Prof Darrell Duffie on Our Big Stablecoin Future

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