HTCのブロックチェーンスマホが法定通貨で購入可能に。Web 3.0時代のリーダー目指す

台湾のスマートフォンメーカーHTCは、支払い手段を仮想通貨のビットコインとイーサリアムに限定していたブロックチェーン・スマートフォンのエクソダス(EXODUS 1)を、米ドルなどの法定通貨でも買えるようにした。

発表はスペイン・バルセロナで開催されたモバイル・ワールド・コングレス(MWC)の期間中の2019年2月26日に行われた。HTCは同機種の購入に使用できる仮想通貨の種類を増やし、ライトコインやバイナンスの取引所が扱うBNBトークンによる支払いを可能にした。

同機種は2018年末に発売されたが、「ディセントラライズド・チーフ・オフィサー(Decentralized Chief Officer)」の肩書きを持つHTCのフィル・チェン氏は、「今回の取り組みは、同機種の本質的なスタートになる」と話した。

定価699ドル(約7万8000円)のエクソダスは、当面の間、オンラインのみの販売を続ける。HTCは、店頭販売も視野にキャリア各社との交渉を進めているという。

Web3.0をつくり上げる

また、HTCは同日、エクソダスにノルウェーのOperaが開発したウェブブラウザを加えたと発表。HTCが「Zionウォレット」と呼ぶ仮想通貨ウォレットを使うユーザーは、Operaブラウザ上での少額決済が可能になる。

エクソダスの開発は、世界が「Web3.0」を構築しようとする流れに沿って始まったと、チェン氏は言う。ある時点までに、人気のある分散型アプリ(DAPPS)の8割がエクソダスで使えるようにしていくという。

Web3.0は、プラットフォームなどの中央管理者が不在で、誰もがインターネット上で価値の移動や所有権を持つことができるというもの。ブロックチェーンの開発が進み、Web3.0は世界的に浸透していく可能性があると言われている。

Operaブラウザで仮想通貨製品部門を統括するチャールズ・ハメイル氏は、エクソダスと連携することで、暗号通貨のセキュリティーとユーザビリティ(有用性)のスタンダードを築いていきたいと、発表文の中で述べた。

「我々はウェブの新世代の入り口にいる。そこには、現体制に挑戦する新たな非中央集権的サービスがある。HTCとOperaは共に、この大変換を起こすための勇敢な決断を下した」(ハメイル氏)

安全性の面(セキュリティー)では、ユーザーが秘密鍵を紛失したときに備えて、HTCは2018年、ソーシャルキー・リカバリー・システムを導入している。ユーザーが数名の信頼できる連絡先を選び、それぞれに秘密鍵の一部を渡しておくというもの。スマートフォンを失くしてしまったり、またはアクセスできなくなった場合、ユーザーはそれぞれの連絡先(コンタクト)から秘密鍵を取り戻すことができる。

し烈な競争が始まる

チェン氏は、エクソダスの販売台数に対してかなり野心的な目標を掲げている。しかし、ライバル企業との競争は激化することが予想される。

目標台数は、2019年末までに100万台だという(HTCの2017年のスマートフォン販売総数は98万台近辺との報道がある)。2018年の同社の総販売台数は開示されていない。

エクソダスが最初に発表されたのは2018年5月、CoinDeskが主催するConsensusの期間中。その後、同機種は初期の販売フェーズを経たが、チェン氏は「仮想通貨のコミュニティーからの評価が得られた」と述べた。

一方、世界最大の携帯電話メーカー、サムスンは2月、フラッグシップ機の新機種ギャラクシーS10(Galaxy S10)を発表。同機種は、秘密鍵専用のストレージ機能が含まれているという。エクソダスとは対照的で、S10は最初からマス向けに広く販売される。

S10の基本モデルの価格は899.99ドル。安価なモデル「S10e」は749.99ドルで、エクソダスよりも50ドル高く設定されている。スマートフォンに保存された秘密鍵のバックアップ対策として、S10ユーザーはサムスンの「Find My Mobile」サービスを利用することになる。

サムスンの他にも、ブロックチェーンを開発するベンチャー企業が、スマートフォンの開発・販売を進めている。例えば、Sirin Labsは「世界初のブロックチェーンスマートフォン」と称してFINNEYと名付けた機種を999ドルで販売している。

翻訳:CoinDesk Japan編集部
編集:佐藤茂、浦上早苗
写真:HTC EXODUS 1 image via Nikhilesh De for CoinDesk
原文:You Can Now Buy HTC’s Exodus Blockchain Phone Without Paying Crypto