医療×ブロックチェーンの可能性──サスメド・経産省が「課題と規制」を議論【btokyo members】

医療×ブロックチェーンの可能性──サスメド・経産省が「課題と規制」を議論【btokyo members】

ブロックチェーンのビジネスコミュニティ「btokyo members」によるオンラインイベント「デジタル医療に学ぶ『ブロックチェーン活用の最前線』──トレーサビリティ、臨床試験、データシェアリング」が2020年6月3日、開催された。医師でありデジタル医療のスタートアップ「サスメド」を起業した上野太郎氏、経済産業省の新規事業創造推進室 室長補佐の太田賢志氏、さらに飛び入りで同じく経済産業省同室の外山望氏が参加し、デジタル医療におけるブロックチェーン活用のポイントや課題などについて議論した。

CoinDesk Japanがメディアパートナーを務めた本イベント。次回はオンラインで6月11日(木)午後、「アフターコロナの世界において企業が求められている『新たなDX』とは何か?」のテーマで開催される予定だ。

課題は「データ改ざんのインセンティブ」が存在すること

サスメドは、医師でもある上野氏が代表を務めており、不眠症治療用アプリやデジタル医療基盤を開発している。国立がん研究センターと乳がん患者向けアプリの共同研究を行うなど、デジタル医療のフロントランナーとして、これまで第一生命保険、エムスリー、スズケンほかSBIやソニーのベンチャーキャピタルから投資を受けてきた。

2019年4月に日本政府が主導する「規制のサンドボックス制度」に認定。「ブロックチェーン技術を用いた臨床研究モニタリングの実証」を行っており、ヘルスケア領域において<医療×ブロックチェーン>の研究開発を進める数少ないプレイヤーの一つだ。

上野氏は、医療の課題として第一に、臨床試験・治験のコストが増加傾向にあり、製薬産業におけるR&D(研究開発)の投資効率が低下していることを挙げる。

上野太郎氏のスライド資料より(以下同)

その理由として、臨床試験データの17%で不正の可能性が指摘されており、データの信頼性を担保するために医薬品開発業務受託機関 (CRO:Contract Research Organization)のモニターが全国の病院を訪問して臨床データを確認するという「労働集約的」な業務になっていることに言及。

治験以外の臨床試験についても問題となっている「データの誤り・改ざん」に対応するため、厚生労働省は2018年4月施行の臨床研究法により「臨床試験データのモニタリング実施」を義務づけた。つまり、データの信頼性を担保するためにチェック・確認するコストが増大しているのだという。

上野氏は課題を感じた経緯について「私自身もいち医療者として承認された医薬品を使う立場だったが、デジタル医療を開発する立場になり、治験の委託を外部にお願いするとコストが高いと感じていた」と語り、新技術活用のポイントを「データを改ざんするインセンティブ(動機)が発生し得る中で、人手をかけずにデータの信頼性を担保するためにブロックチェーン技術を応用した」と整理した。

サンドボックス制度のゴールは「規制の見直し」

サスメドは、規制のサンドボックス制度の中で行っている「ブロックチェーン技術を用いた臨床研究モニタリングの実証」の論文を発表するなど、その成果を形にしつつある。

そもそも規制のサンドボックス制度は、どのようなものか。現場担当である太田氏は「AI・IoT・ブロックチェーンなどの新技術を社会実装しなければならない時代の中で、事業者と規制当局の双方がコミュニケーションを取れる場としてサンドボックス制度がある」と考えを述べた。

太田賢志氏のスライド資料より(以下同)

また最終的なゴールは実証を行うだけではなく、実証により得られたデータを用いて「規制の見直し」につなげることだと太田氏は語った。

また、サスメドが参加するヘルスケア領域だけではなく、広くフィンテックなど金融領域も見ている外山氏は「ステークホルダーが多いほど、データを改ざんするインセンティブは生じるものだ。ブロックチェーン技術は、そもそもデータを改ざんするコストを高めることができるという意味で有用であり、医療や金融に限らず、物流やサプライチェーン、モビリティなどでの活用に可能性を感じる」とコメントした。

(左上から反時計回りに)上野太郎氏、太田賢志氏、外山望氏、久保田大海

オンラインイベントでは上野氏のスライドによる詳細な<医療×ブロックチェーン>解説のほか、「ブロックチェーンに記録された治験・臨床試験のデータは改ざんされないが、そもそもでデータを入力する際の誤りや真偽をどう判断するのか?」「医療機関や製薬会社がサスメド社のシステムを導入する目的は、コストの削減が主なのか?」など、オーディエンスからの質問に答えるQ&Aセッションが行われた。

6月11日のテーマは「アフターコロナの世界で企業が求められる『新たなDX』」

次回のオンラインイベントは、6月11日(木)午後3時より、KPMG Ignition Tokyo 代表取締役社長兼KPMGジャパン チーフ・デジタル・オフィサーの茶谷公之氏、東京大学の「ブロックチェーンイノベーション寄付講座」代表であり同大学院工学系研究科教授の茂木源人氏を招き、「アフターコロナの世界において企業が求められている『新たなDX』とは何か?」をテーマに開催する。参加は無料。

文:久保田大海
編集:濱田 優
撮影:N.Avenue

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