ビットコインの底値を判断する前に注目すべき3つの要素

ひと月にわたって希望が打ち砕かれてきた後、ビットコイン(BTC)はついに復活の兆しを見せ始めている。しかし専門家たちは、より広範な値上がりの再開と判断するには、時期尚早だと警告している。

テスラのCEO、イーロン・マスク氏が、マイナーが環境面での基準を満たすことができれば、同社はビットコイン決済を再開すると述べたことを受け、ビットコインは週末にかけて、3万6000ドル付近で取引された。そして15日には、2週間半ぶりの高値となる4万ドル超えを記録。

マスク氏のコメントは、大いなる強気要素となると考える観測筋もいる。5月の35%の値下がりの一因となった、マイニングの環境負荷をめぐる懸念が、一時的なものであったことを示すからだ。ビットコインを法定通貨として採用するエルサルバドルの決断を喜ぶ人たちもいる。

しかし、今週のFRB(米連邦準備制度理事会)の会合やビットコインのドミナンス(暗号資産全体の時価総額に占めるビットコインの時価総額の割合)、テクニカルチャートなど、強気筋に警戒を呼びかける要素も存在する。

それらを詳しく見ていこう。

FRBをめぐる懸念

連邦公開市場委員会(FOMC:Federal Open Market Committee)は、政策議論のために15日と16日に会合予定だ。そしてFRBのパウエル議長は16日、会合後に記者会見を開くことになっている。

FRBは主要政策を変更しない可能性が高いが、インフレ率の高まりを受けてハト派の姿勢を少し弱めるのではと懸念するアナリストもいる。

「FRBメンバーの大半は、物価の上昇が持続的である兆候を目にするまでは、断固として金利を維持するつもりであると、私たちは考えている。しかし、金利予測を高めに修正するメンバーが少数いるだろうとも見込んでいる」と、グローバルフィンテック・FXリスクマネジメント会社Eburyのシニアマーケットアナリスト、マシュー・ライアン(Matthew Ryan)氏は語った。

「それによって予測の中央値は、2024年まで金利上昇を見せなかった3月の予測に対して、2023年末までに上昇を見せるものとなる可能性が高い」と、ライアン氏は続けた。

暗号資産ファイナンスサービスを提供するアンバー・グループ(Amber Group)によれば、1年前に開始された、流動性を高めるための緊急経済刺激策を緩和する、あるいは徐々に解除するためのスケジュールが議論されるかもしれないという懸念もある。その懸念は、ブルームバーグが指摘した通り、金、銅、その他のコモディティ取引の弱気なトーンに如実に表れている。

量的緩和政策を早期に段階的に解除していく兆候、あるいは金利上昇の兆候が見られた場合には、金融市場におけるリスク回避が誘発され、まだ初期段階にあるビットコインの回復を潰す可能性がある。逆に、量的緩和を続ける決意が力強い言葉で表明されれば、ビットコインやその他の資産全般の価格にとっては喜ばしいニュースだ。

暗号資産とブロックチェーン領域で投資を行うベンチャーキャピタル、デジタル・カレンシー・グループ(Digital Currency Group)の共同創業者兼CEO、バリー・シルバート(Barry Silbert)氏のような著名投資家たちは、FOMCの会合後に株式市場のボラティリティが高まると予想している。そしてその一部は、ビットコイン市場にも流れ込む可能性がある。

「マクロでの混乱に備えるために、VIX銘柄でロングポジションを取った」と、シルバート氏は14日にツイート。VIXとはシカゴ・オプション取引所ボラティリティ指数のことだ。

「根本的には、広範なアメリカの株式での反発に関連するものと、規制上の逆風に関連するもの、(ビットコインにとって)これら2つの値下げリスクを見ている」と、LMAXデジタル(LMAX Digital)の通貨ストラテジスト、ジョエル・クルーガー(Joel Kruger)氏は語った。

ビットコインのドミナンス

値上がりへとトレンドが反転したことを確定するには、ビットコインのドミナンスが継続的に高まることが必要だ。

時価総額トップの暗号資産であるビットコインは通常、最初に値上がりを始め、その後に代替暗号資産(アルトコイン)が続くからだ。つまり、2020年10月に見られた通り、資金はビットコインを通じて暗号資産の世界に流れ込み、アルトコインへと移動するのだ。

TradingViewによると、ドミナンスは1月初旬に70%でピークに達し、当記事執筆時点では、50%を下回っている。 JPモルガンのアナリストは、ビットコインのシェアがいまだにかなり低いことは、弱気のサインだと指摘した。

ビットコインのドミナンス
出典:TradingView

「現在の弱気市場が終焉したと安心して宣言するには、暗号資産市場全体におけるビットコインのシェアが正常化し、(2018年のように)50%を上回る必要がある」と、JPモルガンのアナリストらは、6月9日に発表されたレポートで述べた。

スタック・ファンズ(Stack Funds)の共同創業者兼COO、マシュー・ディブ(Matthew Dibb)氏は、この先数週間で暗号資産市場におけるビットコインのシェアが増していくと見込んでいる。

「アルトコインからビットコインへの循環に伴い、さらにはマイクロストラテジー(MicroStrategy)による大口のビットコイン購入が迫っていることから、ここ数週間でビットコインのドミナンスは高まり、一方のアルトコインは停滞するかもしれない」(ディブ氏)

重要な抵抗線はいまだ健在

ビットコインは4万ドルまで、見事な「リリーフラリー(安堵感からの上昇)」を見せたが、上昇傾向の復活に向けて道を開くための重要な価格のハードルはまだ乗り越えていない。

「底を打ったと呼ぶには、理想的には4万1000ドルで週を締めくくりたい」と、スタック・ファンズのディブ氏はコメントした。

マルチアセット投資プラットフォーム、イートロ(eToro)の暗号資産アナリスト、サイモン・ピーターズ(Simon Peters)氏も、4万1000ドルを目標として挙げた。

「このレベルで価格が抵抗線に直面するのを、今年のより早い時期、当時の史上最高値付近で取引している頃にも見ており、価格の回復、さらには5万ドルを超えるまでの高騰に楽観的になるには、より力強い値上がりを目にする必要がある」と、ピーターズ氏は説明した。

ビットコインの4万1000ドルの抵抗線を示すグラフ
出典:TradingView

CoinDesk 20のデータによると、ビットコインは14日、一時的に4万1000ドルを突破したが、その後4万ドルを下回る水準まで値下がりした。

ディブ氏やピーターズ氏が4万1000ドルに注目している一方、ソーシャルメディア上では、現在4万2604ドルとなっている、200日単純移動平均(SMA)のハードルに着目している投資家もいるようだ。

暗号資産取引所デルタ・エクスチェンジ(Delta Exchange)CEO、パンカジ・バラニ氏によれば、3万ドル付近の安値からの最近の値上がりは、短期的な小休止に過ぎないかもしれない。

「値上がりは4万5000ドル台まで続くかもしれないが、上昇傾向は限定的に見える。そのような価格水準でも、さらなる売りを私たちは見込んでいる」とバラニ氏は語った。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:TradingView
|原文:3 Things to Watch for Before Calling a Bitcoin Bottom