「The Merge」:ETH価格に好材料は本当か?【コラム】

「The Merge」:ETH価格に好材料は本当か?【コラム】

私は普段、資産価格について短期的予測を立てることはしない。しかし、金融市場は時折、予測しやすい要素を提供してくれる

アーサー・ヘイエス(Arthur Hayes)氏やマーク・キューバン(Mark Cuban)氏、トラビス・クリング(Travis Kling)氏など、注目度の高いデジタル資産の投資家たちは、進行しているイーサリアムのアップグレード「The Merge(ザ・マージ)」が、イーサ(ETH)価格にとってどれほど好材料となるかについて、極めて公に語ってきた。

私は、その反対の可能性が高いと考えている。

デジタル資産史上、最も待ち望まれたイベント

おそらくイーサリアムの「The Merge」について、聞いたことはあるだろう。デジタル資産の歴史(ビットコイン誕生以来)史上、最もニュースになっている技術的イベントかもしれない。これだけ待ち望まれている理由は、次の通りだ。

・ネットワーク価値の点で、イーサは2番目に大きなデジタル資産である。

・イーサリアムネットワークに大きな変更が加わり、実施にはかなりのリスクも伴う。

・何度も延期されており、市場参加者たちは何年もかけて分析することができた。

このように幅広く待ち望まれたイベントの見通しについて、人々は興奮して、値上がりにつながると考えがちだ。しかし、そのようなイベントは、「ニュースで売れ」的なイベントとなる傾向がある。

「ニュースで売れ」:「噂で買ってニュースで売れ」という投資戦略。あるイベントに関して、市場に好結果を期待する向きが多い場合は、先んじて資産を購入しておき、イベントが終了して、その結果がニュースになった段階では、早々に売却した方が賢明であるという考え。

過去にあったこのようなイベントは、例えば、ビットコイン(BTC)先物の規制を受けたアメリカの取引所での取引開始、あるいは初のビットコイン先物ETF(上場投資信託)承認などである。

これらのイベントは幅広く期待されていただけでなく、ビットコインのドル建て価格、ひいてはデジタル資産全般で長期的なピーク価格をもたらした。

しかし、ビットコイン市場の発展における分岐点となるようなこれらの重要なイベントは、市場の構造における変化も象徴していた。ビットコイン先物とビットコイン先物ETFの例で言えば、原資産となる現物ビットコインを買うことなく、ビットコインを販売するための新しいツールが導入されたのだ。

イーサリアムのMergeも、デジタル資産の市場構造を変えるという点で、同様だ。

供給ショック

デジタル資産の投資家や投機家(大半のデジタル資産は純粋な投機である)は、様々なコンセンサスメカニズムから選ぶことができる。時価総額が圧倒的に多い(そして私の見解では最も安全でもある)のは、プルーフ・オブ・ワーク(PoW)である。

PoWは現在おそらく、存在するあらゆるデジタル資産の時価総額の4分の3ほどを占めている。(資産価値を時価総額で測ることは完璧な手法ではないが、今回の分析には十分なはずだ)

イーサリアムがプルーフ・オブ・ステーク(PoS)に移行すると、PoWを採用するデジタル資産のネットワーク価値のおよそ5分の1が、PoSになる。

誤解しないで欲しいのだが、ビットコインとイーサは、まったく異なるものだ。私からすれば、メタ(旧フェイスブック)株が金(ゴールド)の代わりにならないくらい、イーサもビットコインの代わりにはならない。どちらも資産であることに変わりはないが、まったく違うものなのだ。

ポートフォリオ内で部分的に代替できると考えるほど、BTCとETHの間に類似性を認める市場参加者が多くないと推定するのは、甘い。

それでも、イーサリアムがPoSに移行することで、ETHとBTCとの類似性(そして代替性)は弱まる。同時に、カルダノ、ソラナ、トロン、アバランチ、アルゴランドなど、様々な主要PoS資産との類似性(および代替性)は高まるのだ。

つまり「The Merge」は、PoW資産の供給量の減少、PoS資産の供給量の増大につながる。他のすべての条件が同じだとすると、PoW資産の供給量減少は、残りのPoW資産(主にビットコイン)価格の上昇に、PoS資産の供給量増加は、PoS資産価格の下落につながる。

現在の時価総額に基づくと、最大のPoS資産はイーサになるはずだ。

どっちに転んでも

「The Merge」の結末は、2つ考えられる。上手くいくか、いかないかだ。失敗に終われば、それがイーサ価格に好材料となる可能性は低い。しかし、上手くいったとしても、イーサ価格に好材料となる可能性は低そうだ。

PoSのイーサは、その他の様々な主要PoSデジタル資産と、投資家/投機家のマーケットシェアをめぐって直接に競い合うことになるからだ。

イーサのドル建て価格が、現在から「The Merge」実施までの間に、どちらに向かうかはまったく分からない。これだけ長く延期されてきたことを考えると、そもそも「The Merge」が実施されるのかも、私にはまったく分からない。

しかし、ある日「The Merge」が実施されたというニュースを見たとしたら、そのニュースは売れるだろうと考えている。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Sell the Ethereum Merge

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