ドバイ:グローバル金融ハブを目指して暗号資産規制機関を設立【クリプト・ハブ2023】第5位

暗号資産(仮想通貨)の大物たちが、アラブ首長国連邦(UAE)最大の都市ドバイに集まっているようだ。

バイナンス(Binance)の共同創業者チャンポン・ジャオ(Changpeng Zhao)氏とヘー・イー(He Yi)氏はドバイを本拠地としており、コインベース(Coinbase)のブライアン・アームストロング(Brian Armstong)CEOはドバイ規制当局と会談した。

また、インド最大の取引所の1つであるWazirxは本社を移転する予定。ニューヨーク、ロンドン、香港に続き、世界の金融センターのトップに躍り出ようというドバイのマスタープランはうまくいっているようだ。

規制整備で台頭

ドバイはこの数十年、イノベーションを取り入れることで、中東のビジネスと金融サービスのハブとして成長してきた。それは特に、熟慮と意図をもって暗号資産に取り組んだことに表れている。

ドバイ政府は2014年、IBMに新技術に関する助言を依頼したと、当時IBMのドバイにおける公共部門コンサルタント責任者だったサクル・エレイカット(Saqr Ereiqat)氏は語った。議論がブロックチェーンに集中したことから、最終的にドバイは2016年、暗号資産の法的フレームワークを議論していることを公式に発表するに至ったとエレイカット氏は説明した。

そして6年後の2022年3月、ドバイは世界初の独立した暗号資産規制機関「Virtual Asset Regulatory Authority(VARA)」を設立。アメリカで明確な規制を求める暗号資産業界の要求に対して、SEC(米証券取引委員会)が次々と訴訟によって応じるなか、UAEは有力な代替オプションとして台頭している。

「アメリカの暗号資産に対する現在のポジションは残念なものだ」と、バイナンスMENA(中東・北アフリカ)のエグゼクティブディレクター、バダー・アルカルーティ(Bader Al Kalooti)氏は語り、次のように続けた。

「しかし、だからといって、世界の他の地域が暗号資産に対してオープンではないというわけではない。ドバイやアジアの他の市場は門戸を開いている」

ドバイ統計センターによると、2022年時点で、UAEの総人口350万人のうち320万人以上が非UAEの人々であり、「人種のるつぼ」となっているとアルカルーティ氏は説明する。

このような多様な人口を抱えるドバイでは、ドバイで働く人々のための送金や、彼らによる自国への送金、不安定な経済から避難する人々のための資金逃避のサポートなど、ブロックチェーン技術には多様なユースケースがある。

幅広いユースケース

ドバイとアラブ首長国連邦が「クリプト・ハブ」としてユニークなのは「そうしたあらゆるタイプのユースケースに居場所を提供している」とアルカルーティ氏。

実際、VARAを設立した直後、政府はドバイ・メタバース戦略を発表し、「世界トップ10のメタバース経済圏の1つ、そしてメタバース・コミュニティのグローバル・ハブ」を作る意向を示した。ドバイは、2030年までにブロックチェーンおよびメタバース企業を1000社誘致し、4万人の雇用を創出することを目指している。

北アフリカ、アジア、ヨーロッパに近接するドバイは、ビーチでの休暇を求める人々の旅行先としてだけでなく、グローバルなネットワーキングとコラボレーションを促す場所でもある。

ドバイは、ブロックチェーンとWeb3を18の重点分野に含めた大規模なテックカンファレンスであり、現地報道では2022年の参加者が17万人を数えたGITEX(ガルフ・インフォメーション・テクノロジー・エキシビション)の開催地となっている。その他、バイナンス・ブロックチェーン・ウィークやドバイ・フィンテック・ウィークなど暗号資産関連のイベントには事欠かない。

エレイカット氏はIBMを退職後、ドバイを拠点とするCrypto Oasisを共同設立。同社は、CoinDeskの「クリプト・ハブ2023」で第1位となったスイス・ツークの「クリプトバレー」をモデルに、ブロックチェーンエコシステムを開発している。

ドバイでチームを作ろうとしている人々にとって「UAEの最もユニークな要素は人材へのアクセス。(中略)3時間以内に30億人にアクセスできる」とエレイカット氏は語った。

|翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸
|画像:ドバイ(Shutterstock)
|原文:Dubai: Launching a Crypto Regulatory Arm to Become a Global Financial Power