金融機関のセキュリティトークン販売を支援すべく、カストディアンと連携のR3──STO普及に資するか

アジアの銀行にとって朗報だ。R3のコルダ(Corda)でセキュリティ・トークンを発行するのに興味あるアジアの銀行は、地場のカストディアンという選択肢を持てるようになった。

香港に拠点を置くヘックス・トラスト(Hex Trust)は、セキュリティ・トークン発行のためのさらなる選択肢を顧客銀行に提供するため、エンタープライズ・ブロックチェーン企業R3と連携している。カストディアンのヘックス・トラストは、顧客の1社がコルダ上でデリバティブ向けのコラテラル・トークンを発行したのを契機に、R3との協働を始めた。

「新しく寄せられる多くの需要は、コルダベースのトークンやその他の同様なブロックチェーンベースのプロトコルに対するものだ」と、ヘックス・トラストのCEOであるアレッシオ・クアグリーニ(Alessio Quaglini)氏は語った。ヘックス・トラストは、R3が世界で協働する約10社のカストディー企業に名を連ねる。

ヘックス・トラストは、2019年7月にリリースされた、トークン向けのコルダのソフトウェア開発キット(SDK)を通じてR3と繋がる。R3の顧客は、ヘックス・トラストのカストディー・ソリューションを活用できる一方、ヘックス・トラストの顧客は、コルダ・ブロックチェーンを活用することができる。

どちらの企業も具体的な名を挙げることはなかったが、ヘックスは「アジアで最大規模の銀行」の1つと協働しており、R3は複数のセキュリティ・トークン・プロジェクトに取り組んでいる。

世界中でセキュリティ・トークンの需要拡大?

ヘックス・トラストの技術は、銀行や他の従来型金融機関を念頭に開発された。IBMのハードウェア・セキュリティー・モジュールを提供し、SWIFT(国際銀行間通信協会)の支払いネットワークと繋がっており、時価総額で上位10までのブロックチェーン・プロトコルと統合している。

ヘックス・トラストはさらに、信託企業の免許を持ち、香港の資金洗浄防止・テロリスト資金供与防止規則のもとで信託または企業サービス・プロバイダー(TCSP)のライセンスも保持している。ヘックス・トラストは、シンガポール金融管理局のサンドボックスに参加し、シンガポールで資本市場カストディ免許を申請している。ドイツの連邦金融監督庁(BaFin)から、仮想通貨カストディ・サービスを提供するための一時認可も受けており、ドイツでの仮想通貨カストディ免許も申請中である。

「免許取得は、カストディ・プレイヤーの役割を特定し、銀行やアセット・マネージャーなどの従来型機関のために何ができて、何ができないのかを見極めるうえで役立つ」と、R3のアジア太平洋地域担当戦略的アカウント・ディレクターを務めるドリス・テオ(Doris Teo)氏は語った。

ヘックス・トラストは、セキュリティ・トークンに対する需要が高まることを見込んでいる。香港やシンガポールがそのような資産を取引するために取引所向けのサンドボックスを開き、EU加盟国が仮想通貨カストディ向けの新たな免許の枠組みを構築している。

「最も重要なのは、資産のライフサイクルだと考えている」と、ヘックス・トラストのクアグリーニ氏は述べた。「ブロックチェーン上でデジタルに作られたトークンによって、取引が24時間265日可能になる。トークンのライフサイクルをスマートコントラクトに直接プログラムし、自動で配当金を支払い、投票機能を自動化することができる」

翻訳:山口晶子
編集:T. Minamoto
写真:Breitling
原文:R3 Teams With Custodian Hex Trust to Help Asian Banks Sell Security Tokens