大和証券がブロックチェーン技術使い「デジタル社債」発行、払い込み・利払いはフィンターテックのデジタルコイン

大和証券がブロックチェーン技術使い「デジタル社債」発行、払い込み・利払いはフィンターテックのデジタルコイン

大和証券とグループ会社の大和フード&アグリは2月26日、ブロックチェーン技術を活用してデジタル社債を発行したことを明らかにした。大和証券グループ本社 <8601> とデジタルガレージ <4819> などが取り組んでいる、ブロックチェーン技術を活用した有価証券発行の実証実験の一環で、トータルの発行額は1100万円分。

デジタルガレージの子会社・Crypto Garage(クリプトガレージ)が持つブロックチェーン基盤「Liquid Network」でのアセット発行、DvP 決済などの技術を活用している。投資家の保有情報はLiquid Network上に記録され、発行体も投資家も保有状況を確認できるため、管理コストの削減が期待される。

DVPとは、Delivery Versus Paymentの略で、証券の引渡し(Delivery)と代金の支払い(Payment)を相互に条件を付け、一方が行われない限り他方も行われないようにすること

日本銀行

フィンターテックが発行したデジタルコインを対価として払込み

発表によると、大和証券の「大和証券デジタル社債」は発行総額1000万円(原則、デジタルコインによる払込み)、利率は年0.03%(原則、デジタルコインによる支払い)、自己募集。一方、大和フード&アグリの「大和F&Aデジタル社債」は発行総額100万円で、利率は年0.10%、募集は大和証券による私募。いずれの社債も発行・払込み日は2月25日、償還日は3月26日だ。

大和証券デジタル社債のスキーム(プレスリリースより)

「大和証券デジタル社債」に関しては、投資家である大和証券グループ本社は、Fintertechが前払式支払手段としてLiquid Network上に発行したデジタルコインを対価として払込みを行っている。この社債の利払い、買入消却でも対価はデジタルコインとなる。大和証券グループ本社などによると、ブロックチェーン上に記録された前払式支払手段を対価とした、有価証券の発行や買入消却は日本で初めてという。

Liquid Networkは、カナダの Blockstream 社が提供しているビットコインブロックチェーンのフォーク。ビットコインのセキュリティを継承しながら、プロ間取引用の決済インフラとして機能性を充実させた半コンソーシアム型チェーンとされる。現在、世界59社の金融関連企業が参画している。

Fintertechは大和証券グループ本社とクレディセゾンが設立したスタートアップで、暗号資産を担保に融資が受けられるサービス「デジタルアセット担保ローン」も展開している。

ブロックチェーン技術を活用した権利移転や、デジタル通貨を活用した有価証券の発行・譲渡・利払い・償還などが行われるようになれば、「透明性・正確性・効率性の高い有価証券の発行・管理が可能となり、これまで証券化されてこなかったアセットの証券化や、有価証券流通市場の効率化につながる」(大和証券グループ)という。

大和F&Aデジタル社債のスキーム(プレスリリースより)

また「大和F&Aデジタル社債」では、償還時に保有している投資家に対して、大和F&Aが資本参加する、株式会社みらいの畑が生産する農産品が特典として付与される予定という。

大和証券グループは、「ブロックチェーン技術を活用し、発行会社が投資家情報を直接管理することで、所有期間や所有数量による、施設やイベントへのアクセス権、特典・ポイント付与などの多彩なサービスを提供することが可能となる」としている。

野村、SBI、みずほFG……デジタル社債発行の動きが活発化

ブロックチェーン技術を活用したデジタル社債発行の動きは昨年から活発化しつつある。

野村ホールディングス <8604> 傘下の野村證券と野村総合研究所(NRI)は昨年3月、国内では初となる、ブロックチェーンの基盤を使ったデジタル債券の発行を行っている。発行総額は3000万円。発行されたのは2種(デジタルアセット債、デジタル債)で、いずれもNRIの発行。

また、みずほフィナンシャルグループ <8411> は昨年2月にデジタル社債のシステム基盤のプロトタイプを使った実証実験を行なっている。これにはみずほFGのほか、みずほ銀行、みずほ証券、Blue Lab、ヤマダ電機 <9831> 、オリエントコーポレーション <8585> 、ファミリーマート、松井証券 <8628> 、楽天証券などが参加している。

このほかにも、SBI証券が昨年10月、デジタル社債の公募の取扱いを検討している旨を発表している。SBI証券がデジタル社債の引受人などを務め、顧客である個人投資家に発売するというもので、ブロックチェーン基盤「ibet」を活用する考え。ibetは、野村證券とNRIが共同で設立したブロックチェーン企業・ブーストリーが開発したもの。SBIホールディングス <8473> は同社の株式を一部取得している。

社債の発行額は増加している

社債による資金調達に対する企業の注目は急速に高まっている。超低金利が長く続く中で、借り入れや株式の発行などから債券の発行にシフトしつつあると見られ、2020年の日本国内の社債発行額は約16兆円。日経によると、15兆円を超えるのは初めてのことだ。18年には約10兆円だったことを考えると急速に伸びていることが分かる。最近もNTTが12月に国内市場で過去最大となる1兆円の普通社債の発行を発表している。

こうした変化の中で、社債に限らずあらゆる有価証券をブロックチェーン技術などを使ってデジタル化する動きは今後ますます活発化する可能性がある。コストをおさえながら流動性や透明性を高め、企業や個人がより柔軟に資金調達や投資ができるようになると期待されるからだ。

|文・編集:濱田 優
|画像:Shutterstock.com

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