「ビットコインじゃなくて、ブロックチェーンに興味がある」という人に教えたい「ブロックチェーン」の語源の話

「ビットコインじゃなくて、ブロックチェーンに興味がある」という人に教えたい「ブロックチェーン」の語源の話

Brady Dale
公開日:2019年 5月 29日 21:00
更新日:2019年 5月 29日 21:00

「ブロックチェーンに興味がある。ビットコインではない」

この言葉を数千回ではなくても、数百回は聞いたことがあるだろう(あなたが言ったかもしれない)。確かに、あなたが「ビットコインを支えるテクノロジー」について話していることは皆、知っている。そして、十分、スマートに聞こえることも。

金融の世界で、ビットコインと同じような方法で暗号技術が使えることが理解されると、あるいは少なくとも、そう思われるようになると、誰もがこうしたフレーズを言い始めた。このフレーズは ── ビットコインから生まれたのだが ── 今もパワフルだ。

もっともらしく聞こえる? 確かに。だが、興味深いことに「ブロックチェーン」という言葉は2008年に出された最初のビットコインのホワイトペーパーには実際、使われていなかった。むしろ白書では「ブロック」と「チェーン」という言葉が別々に何度も使われていた。

白書は「ブロック」という言葉を、一つにまとめたビットコイン・トランザクション(取り引き)の乗り物(ビークル)と記述していた。そして、そうしたブロックはつなぎ合わされ、「ブロック」の「チェーン」を形成する。


ビットコインホワイトペーパーのキャプチャ(強調部分は編集部で追加した)

さて、だれがブロックチェーンという最強のバズワードを作ったのだろう?

当初は否定的な響きを持つ言葉

ブロックチェーンという言葉の誕生は、それほど革命的ではないことは分かった。

「ブロックチェーンという言葉は、初期にはまったく使われていなかった」と元ビットコイン開発者のマイク・ハーン(Mike Hearn)氏はCoinDeskに語った。だが、ハーン氏は、ビットコインの生みの親であるサトシが、フォーラムでの議論でビットコインの「プルーフ・オブ・ワーク(proof-of-work chain:意思決定の仕組み)」に言及していたことを認めた。

サトシが2010年7月に始めたビットコインをテーマにしたフォーラムBitcoin Talkに初めて「ブロックチェーン」という言葉が登場したのは、ビットコインがリリースされてから1年以上が経過した頃だったようだ。

そして当時、この言葉はテクノロジーの革新性を示すものではなく、ビットコインの「ブロックチェーン(ビットコインの取り引きの全履歴)」のダウンロードにかかる時間の長さに不満を表すものだった。

あるBitcoin Talkのユーザーによると、ダウンロードはその後かなり速くなったようだ。「初期のブロックチェーンのダウンロードはかなり遅かった」。

言い換えれば、当初、ブロックチェーンは今のような魅力的な言葉ではなかった。

ブロックチェーンマニア

ブロックチェーンという言葉がいつ定着したのかを正確に特定することは難しい。

だが、この言葉への関心は、ドラッグや闇経済で使われる通貨というビットコインの負のイメージを理由に、ビットコインに関わることを迷っていたプロフェショナルな組織や個人から出てきたようだ。

「人々がワシントンDCに行き始め、基盤となるアルゴリズムから切り離すことでビットコインの価値を高めようとした頃に人気が出てきたと思う」とハーン氏は述べた。

多くの人にとって、通貨としてのビットコインとブロックチェーン・プロトコルとしてのビットコインは別のものとなった。そこで、暗号通貨とは無関係な、いわゆる「プライベート・ブロックチェーン」という全く新しい産業が生まれた。確かに2015年頃、グーグル検索によると、ブロックチェーンという言葉は急上昇している。


出典:グーグルトレンド

「当初、人々は『ブロック・チェーン(block chain)』と言っていたが、その後、素晴らしいPRキャンペーンのおかげで、我々は『ブロックチェーン』というシングルワードの、大幅に改善された言葉の恩恵を受けた。おそらくBitcoin Talkフォーラムとその周辺のコミュニティー全体の努力のおかげだろう」と長年、暗号通貨の開発に取り組んできたグレッグ・スレパック(Greg Slepak)氏は語った。

シングルワードになっただけでなく、ビットコインのブロックチェーンではないブロックチェーンを「ブロックチェーン」と表現することが流行となった。ビットコインは「ブロックチェーン」という用語をそのまま使い続けた。これはビットコインが一番最初であるという証拠となった。

ブロックチェーンはビットコインから分離した言葉となったが、それでも仮想通貨の価格が上昇し始めると、2つの言葉は通常、似たような上昇を見せた。例えば、2017年後半、ブロックチェーンという単語はグーグル検索で急上昇した。


出典:グーグルトレンド

世界初のブロックチェーン?

しかし、アイデア自体がどこから始まったのかは正確には分からない。ビットコイン以前にもブロックチェーンは存在していたが、当時、ブロックチェーンという言葉は使われていなかった。

例えば、自身のタイムスタンプに関するホワイトペーパーがビットコインのホワイトペーパーに引用されている暗号技術者のスチュアート・ハーバー(Stuart Haber)氏は、世界初のブロックチェーン「Surety」を作ったと主張している。

ハーバー氏によると、サトシが彼のホワイトペーパーを引用していることが何よりの理由 ── ビットコインのホワイトペーパーの中に引用は9つしかないが、そのうちの3つがハーバー氏の白書からの引用だ。Suretyはタイムスタンプを記録する目的で1995年にリリースされ、現在もまだ運用されている。

だがハーバー氏は、同氏が作ったブロックチェーンはビットコインのブロックチェーンと同じメリットを持っているわけではないと認めた。中央集権型で、1社が運営しているためだ。

そしてこれは、ブロックチェーンについて話をすることの難しさを浮き彫りにしている。つまり、テクノロジーの単一の定義について、必ずしも合意が存在しているわけではない。

メリアム・ウェブスター辞典は実際、ブロックチェーンのかなり古い定義を載せている ── 「端に自由に回転する薄いサイドリンクを取り付けた幅の広いブロックであるリンクが、(サイドリンクを介して)一つおきにつながっているチェーン。自転車など、スプロケット(歯車)を使って動力を伝える時に使う」。

一方、グーグルのブロックチェーンの定義は以下のとおり。

ピア・ツー・ピアで結ばれたコンピューター上で、ビットコインや他の暗号通貨の取引記録を保持するシステム

しかし、この分野のベテランにとっては、この定義でさえ問題がある。新しく登場したプライベート・ブロックチェーンの多くは、取り引きを公にしていない。

「この単語は非常に広範囲に使われるようになったため、すぐに意味を失う」と今年初めにThe Vergeは記した

インドの寓話

ハーバー氏は、両立しない状況を説明することに役立つ、インドの寓話を例にあげた。

寓話では、目の見えない人たちのグループがはじめて象に触れ、それが何かを確かめようとする。

象のどの部分に触れたかによって、答えは変わる。例えば、ある人は象の鼻に触れて、蛇だと思う。一方、他の人は象の脚に触れ、木の幹だと言う。

ブロックチェーンの定義もそれと似ているとハーバー氏は述べた。

同氏はCoinDeskに次のように語った。

「ある定義はまったく馬鹿げていて、人々は自分が行っていることを理解していないことを示している。だが、ブロックチェーンの膨大な取り組みのさまざまな部分についての正確な記述もたくさんあるだろう」

このように、同氏は意味は一つだけではないと述べた。

ビットコインに関わる人たちは、ブロックチェーンとはビットコイン・ブロックチェーンでしかないと信じている。しかしそれでも、言葉のように定義は常に進化し、変化する。

翻訳:Masaru Yamazaki
編集:佐藤茂、浦上早苗
写真:Blockchain shirt image via CoinDesk archives
原文:Bitcoin and Blockchain: The Tangled History of Two Tech Buzzwords