ビットコインは準備資産3.0か?【コラム】

ビットコインは準備資産3.0か?【コラム】

クレディ・スイス(Credit Suisse)の短期金利ストラテジストを務めるゾルタン・ポズサー(Zoltan Pozsar)氏は今月、新たな世界通貨秩序についての文書を発表した。私をはじめとして、様々な人が衝撃を受けた。

一見すると、この文書はビットコイン(BTC)とは関係ないように見えるのだが、それについては後半で触れよう。

ポズサー氏は「ユーロドルシステムを弱体化させ、欧米でのインフレの勢いを加速させる、東側のコモディティベースの通貨を中心とした新しい世界(通貨)秩序、ブレトン・ウッズ3の誕生」を見ている。彼の世界分析が正しいとしたら、それが私たちにとって何を意味するのか、ビットコインはどのように作用してくるのかを見ていこう。

ブレトン・ウッズ体制のおさらい

ブレトン・ウッズ体制とは、第二次世界大戦後期、1944年に確立された通貨管理システムである。各国間の金融関係のルールが定められ、IMF(国際通貨基金)、世界銀行、WTO(世界貿易機関)が設立された。つまりブレトン・ウッズは、中央銀行や政府が金融の面で守るべきルールを設定したのだ。

ブレトン・ウッズ体制については、それだけで何冊も本が書かれているほどなので、当記事で何が起こったのかを詳細に紹介することはしないが、ブレトン・ウッズ1から3へどのように移行したのかを振り返るのは、有益だろう。

まず、大切なコンセプトの1つを説明する必要がある。「国の準備資産」という言葉が、ほとんど説明もなしに色々なところで使われている。この言葉は単純に、政府が保有する様々な通貨、証券、コモディティなどのことを意味する。

この準備資産によって、国家は経済で起こっている事態に対応する。例えば、自国通貨が弱そうならば、外国通貨を売って、自国通貨を買う。準備資産がなければ、政府や中央銀行は反応することができない。各国は、好きなものを準備資産として保有することができる。

ブレトン・ウッズ1とも呼ばれる最初のブレトン・ウッズ体制は、1オンスの金(ゴールド)を35ドル(現在価格より約5600%安)と交換できる、金本位制だった。しかし1971年、様々な要因が絡み合って、アメリカはドルの変動為替相場制へと移行。ドルは政府の信頼、巨大な軍隊、そして石油によって裏付けられることとなった。

1944年以降の金価格(1オンス当たり)
出典:TradingVire

そこから、ブレトン・ウッズ2が誕生した。ドルが支配的なままだが、「インサイド・マネー」が主に使われるシステムだ。インサイド・マネーとは、誰か他の人の負債となるものに対する権利で、アウトサイド・マネーは、誰の負債でもない資産だ。

つまり、通貨システムはおおむね、負債を基盤とするものになったのだ。中国が米国債を保有する場合、それはインサイド・マネー。ロシアが米ドルを売ってゴールドを買えば、アウトサイド・マネーだ。

これまでしばらく使われてきたこの体制は、多くの混乱を生じさせる可能性がある。中国が米国債を保有し、中国に対して多くの負債を抱えるのは、アメリカ国民にとって必ずしも悪いことなのだろうか?そうかもしれないし、そうではないかもしれない。アメリカが国債をコントロールしているからだ。米国債は結局のところ、インサイド・マネーなのだ。

これは、国際金融の仕組みを、不愉快なほどに複雑にしてしまう体制である。経済的に激しいライバル関係にある各国が、あらゆる業界における支配権をめぐって、時に汚い手段を使ってまで争いつつも、経済的頑強さのために互いを頼っているのだから。その証拠に、中国は1兆1000億ドルの米国債を保有している。一緒に上手くやっていくのは無理なくせに、互いの存在無くしては生きられない状態なのだ。

ビットコインは究極のアウトサイド・マネーか?

ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、諸国はロシアの外貨準備の多くを凍結した。CoinDeskのコラムニスト、ニック・カーター(Nic Carter)氏が言う通り、バイデン米大統領は「ロシアに金融核爆弾を投下した」のだ。

経済制裁において1つ重要だったのは、ヨーロッパが石油と天然ガスでロシアに依存していることから、エネルギー関連の決済を取り扱う銀行が、国際送金・決済システム「SWIFT」からの排除を免除された点だ。

これがなぜ大切かと言うと、石油や小麦などのコモディティ価格が急騰しているからだ。そのため、中国はコモディティ危機において自国通貨を強められる思いがけないチャンスを手に入れた。

ロシアは世界でも最大規模のコモディティ輸出国の1つであり、経済制裁のために、ロシアのコモディティは、他国のコモディティよりも望ましくないものとなった。

押収可能な、アメリカ発のインサイド・マネーを大量に保有する中国人民銀行は、米国債を売って、「サブプライム」のロシアのコモディティの購入費用に充てることができる。そうなれば、中国がインフレをコントロールできるようになるだけでなく、西側諸国におけるコモディティ不足と不景気につながる可能性もある。

これは、軽視するべき問題ではない。ロシアはここ数年、米ドル資産を売却してゴールドなどを購入してきたが、ブレトン・ウッズ2の基盤がバラバラになってしまったのだ。

ロシア中央銀行の保有する外貨準備と金の推移
出典:ロシア中央銀行

SWIFTからのロシアの部分的排除に、アメリカのインサイド・マネーの押収という新しいリスクが加わって、新しい通貨体制「ブレトン・ウッズ3」が始まっているのかもしれない。各国が準備資産を強化する中、ゴールドやその他のコモディティをはじめとする、アウトサイド・マネーに重点が置かれるかもしれない新しい世界に直面しているのだ。

あるいは、ビットコインへと注目が向かう可能性も排除できない。

この点が、当記事執筆のきっかけとなった。ポズサー氏は、次のように締めくくっている。

「この戦争が終わったら、『マネー』はもう同じものではなくなる。(中略)そしてビットコインは(ウクライナ戦争後も存在していれば)おそらく、このような展開から恩恵を受けるだろう」

ビットコインに対する支持の表明とは言えないが、最大の賛辞と言っていいのではないか。

|翻訳・編集:山口晶子、佐藤茂
|画像:Shutterstock
|原文:Bitcoin: Gold 2.0? Try Reserve Asset 3.0

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