2020年、仮想通貨“10大”イベント

仮想通貨は変化が速い。唯一、安全に思える予測は、今日は重要に思えるストーリーや指標が、ものの数カ月で新しいアイデアに取って代わられるということ。

それでも、新しい1年と新しい10年のスタートに際して、2020年に注目すべき重要なイベントや問題を時系列順に見ていこう。

1. 半減期

5月のどこかの時点でビットコインは、ネットワークを維持しているマイナーに分配されるブロック報酬の半減期を迎える。つまり、ネットワークのセキュリティにコンピューティング能力で貢献しているマイナーが、ビットコイン・ブロックチェーンに記録したデータの各ブロックに対して受け取るビットコインの数が半分になる。

ビットコイン価格は、どの程度まで供給側の経済によって決まるのだろうか? 半減期そのものをめぐる投資(と幻滅)に予測可能なパターンはあるのだろうか? 我々はそれを見つけたいと思っている。

関連記事:ビットコインの価格は半減期でも上昇しない?──次回は2020年5月頃

2. SEC vs テレグラム

メッセージング・プラットフォームのテレグラム(Telegram)は2018年、これまでで2番目に大規模な新規コイン公開(ICO)を行った。ICOは米証券取引委員会(SEC)の例外規程のもとで行われ、購入者は同社のブロックチェーンベースのネットワークが運営を開始した際に、仮想通貨トークンを受け取ることができる。

2019年、SECはトークン販売の停止を求めて訴訟を起こし、テレグラムは異議を申し立てている。この問題は2020年に解決するとは思えない。だが解決に向けた紆余曲折は、開発者や投資家が新しいコインやトークンの配布と利用をどのように捉えているかについて、活発な議論を巻き起こすだろう。

3. フェイスブックのリブラ、ローンチ

フェイスブック(Facebook)のリブラ(Libra)は、2020年6月までにローンチするという当初の計画を守るだろうか? 仮に予定どおりなら、我々は、銀行口座を持たない人々にサービスを提供するという約束をリブラが実現できるのかどうかをしっかりと見守っていく。

そして、民間企業による通貨発行に対して政府が表明した懸念が、現実に根拠を持つものなのかどうかを知りたいと思う。

関連記事:フェイスブック・リブラの可能性を探った──莫大なリターンを生むか

4. 景気後退とボラティリティ

ビットコインはその始まりから、金融政策を通じた景気刺激は悪いアイデアだという考え方と結び付けられていた。世界中で金利がマイナスになったことに伴い、多くのビットコイン保有者は、差し迫る世界的景気後退の兆候をうれしそうな視線で見ているようだ。

ビットコインは「デジタル・ゴールド」と言われている。そのため、不況の際には資本の安全な避難先として機能しなければならない。ビットコインはそのストーリーを証明するだろうか、誤りであることが明らかになるだろうか、それとも、判断を下すのは時期尚早だろうか? グローバルなマクロの出来事やビットコイン市場の反応が、その答えを教えてくれるかもしれない。

5. アメリカの政党

2019年、ホワイトハウスや米連邦準備制度理事会(FRB)がビットコインについてコメントした。フェイスブックが仮想通貨に参入したことで、デジタル通貨は議会にも登場した。

二極化したアメリカの政治状況において、仮想通貨のように意見が対立した問題が超党派の問題になる可能性は低い。選挙の年に各党がそのスタンスを固めるなか、それぞれの仮想通貨に対するスタンスを見守っていこう。

6. オフチェーンの資産

2019年、ステーブルコイン「テザー」の利用が増加し、取引量は、オンチェーンのネットワーク効果やまだ定義されていないファンダメンタルズから価値を生み出す資産ではなく、ドルなどのオフチェーンの資産に裏付けられた仮想通貨に傾いた。

これは転換点だったのか、それとも一時的なものだったのか? この疑問は、まだ答えの出ていない難題にとって極めて重要になる。すなわち、この魔法のインターネットマネーは、一体、何のためにあるのだろう?

7. 分散型金融の普及

「DeFi」、いわゆる「分散型金融(decentralized finance)」は、分散型アプリケーションやスマートコントラクトが「株式会社」に匹敵する発明だと信じているイーサリアムを支持する未来主義者の心を捉えた最新のストーリーだ。

今のところ、DeFiはイーサリアムをすでに保有している人が少しの利息を稼ぐための方法となっている。これは仮想通貨に新しいユーザーを惹きつけるだろうか? 銀行員のいない銀行は、グローバルエコノミーの一部分となれるだろうか?

関連記事:MakerDAO、複数の仮想通貨を担保にできる新しいステーブルコインを11月にローンチ

8. 中央銀行デジタル通貨

2019年、中国はデジタル人民元に関する発言を繰り返し、独自のデジタル通貨を発行する道を歩む、最初の主要経済大国となった。デジタル人民元はトランザクションの認証と所有において、ある程度、ビットコインのモデルに基づいている。

デジタル人民元は仮想通貨をどのように変えるだろうか? 経済力のバランス、そしてグローバルな基軸通貨としての米ドルの地位をどう変化させるだろうか? 他国が先に動くだろうか、それとも中国に追従するだろうか? リバタリアンの間で最初に普及した資産カテゴリーの、新章の始まりを目撃することになるかもしれない。

関連記事:中国人民銀行、デジタル通貨のローンチに「迫る」

9. 「機関投資家」の流入

ビットコインETF(上場投資信託)はまだアメリカでは承認されていないが、ビットコイン先物など、他の仮想通貨デリバティブは規制当局のチェックと監視を通過した。CFTC(米商品先物取引委員会)のヒース・ターバート(Heath Tarbert)委員長は、イーサリアム先物市場の承認もそれほど遠くはないと示唆した。

2020年、こうした新しい金融ツールは、機関投資家の仮想通貨への参入レベルにどれほどの影響を与えるだろうか? 少なくともバックト(Bakkt)の先物市場の取引高を見ると、その答えは「それほど多くない」というものになりそうだ。しかし2020年には変わるかもしれない。そして、大きな成長のサインを見守る価値は十分にある。

関連記事:仮想通貨デリバティブ:誤解を招く、その指標

10. イーサリアム2.0のローンチ

イーサリアムは2015年に誕生して以来、世界最初の仮想通貨ビットコインと同様のセキュリティ・スキームで運営されてきた。コンセンサスモデルと呼ばれ、イーサリアムもビットコインも現在「プルーフ・オブ・ワーク」コンセンサスモデルで運営されている。

2020年初頭、イーサリアムの開発者たちはこの設計を全面的に見直し、新しく「プルーフ・オブ・ステーク」と呼ばれる仕組みに変更した。すでにプルーフ・オブ・ステークを使ったブロックチェーンの構築を試みている仮想通貨は存在するが、時価総額で見ると、イーサリアムはその中でも圧倒的な規模を誇る仮想通貨となる。

翻訳:山口晶子
編集:増田隆幸
原文:10 Things to Watch for in Crypto in 2020