BASEはアマゾン・楽天の経済圏外で個人の価値をつなげる──EC化・DX化する日本でどう攻める?

オンラインショップを簡単に開設できるEコマースプラットフォームを運営するBASE(ベイス)が、収益を急拡大させている。新型コロナウイルスのパンデミックによる巣ごもり需要が高まるなか、日本のあらゆる業界におけるEコマース化がペースを速めている。

BASEは独特の顧客ターゲットを設定し、アマゾン・ドット・コムや楽天などが作りあげる巨大な経済圏の外で活動する、個人や小さな事業主に向けたサービスを強化している。BASEで最高執行責任者(COO)を務める山村兼司氏が、coindesk JAPANの取材で答えた。

BASEは昨年1月~9月期の売上高を2倍の約60億円に伸ばし、約11億円の営業利益を計上。前年同期の2億8000万円の営業赤字から黒字転換させた。コロナ禍の巣ごもり消費と実店舗のオンラインシフトが加速し、国内のEC市場の拡大ペースはさらに速まった。BASEの収益を押し上げたかっこうだ。

コロナ禍でオンライン化した飲食店

2020年4月の東京新宿・歌舞伎町(Shutterstock)

山村氏は「(2020年)2月、3月頃からコロナの影響が強まり、特に飲食店がオンラインショップを開設するケースが急増した」と話す。「BASEは、個人がそれぞれの価値観をインターネットで発信できて、独自のファンコミュニティを形成するためのプラットフォーム。BASEの変わらないフィロソフィだ」と述べる。

BASEが行ったアンケート調査のデータにると、BASEを利用するショップオーナーの9割は個人もしくは4人以下のスモールチームだ。また、オーナーの7割はネットショップのみの運営を行っている。年代別では30代が最も多く、33%。次いで40代が28%で、20代と50代がそれぞれ15%となる。

「日本の労働者人口は減り続けているが、サラリーマンが副業を始めたり、個人がインターネットで事業を始めるケースは年々、増えてる。例えば、自分のアパレルブランドを作るであるとか、自身で制作した商品を気にいった人たちに販売したいという個人が増加している」

アマゾンと楽天の二極化とBASEの存在

東京・八王子にあるアマゾンの物流拠点(Shutterstock)

BASEを利用して開設したショップの数は130万を超えた。ショップオーナーの多くは、大規模なショッピングモールで横並びに出店することを嫌い、自身の世界観を大事にしながら、敢えて経済活動の拠点をBASEに置いていると山村氏は言う。

「アマゾンと楽天の大きな経済圏を中心に、これからさらに二極化は進んでいくでしょう。プラットフォームとしてのBASEは、フラットな存在であり続けたい。ショップオーナーを囲い込むことをせず、個人の価値観をつなげるエコシステムであるべきだと思っています」と山村氏。

BASEは今月、多くの個人ユーザーが利用するメディアプラットフォームの「note(ノート)」と資本業務提携を締結。BASEとnoteは、noteを活用して商品やブランドの背景にあるストーリーや思いを発信できて、共感したファンがBASEで開設されたネットショップで商品をスムーズに購入できる機能開発を共同で進めていくという。

ネットショップがこれから増える業種

BASE・最高執行責任者(COO)の山村兼司氏。

2021年に入っても新型コロナウイルスの感染拡大が続く。同時に、あらゆる業種におけるデジタル化とeコマース化(EC化)は、ペースをさらに速めて進んでいくことが予想される。BASEを利用してネットショップを開こうとする個人は今後、どんなストーリーと共にどんな商品を販売していくのか。

「増加傾向にあるのは依然としてアパレル。好きな人たちに好きなものを、少量の決めた数だけを販売するオーナーさんは多い。食品や野菜はこれから増え続けていくだろう」(山村氏)

日本のEC市場の規模は2019年末時点で、約19兆4000億円(経済産業省の統計)。過去5年で年率5%~7%のペースで拡大を続けている。EC化率で見ると、食品・飲料・酒類のカテゴリーは2.9%と最も低いグループに入る。一方、事務用品・文房具のEC化率は最も高く42%で、次いで書籍・映像・音楽ソフトが34%。衣類・服装雑貨のEC化率は14%だった。

急拡大したPAY事業とBANK事業

「インターネットの空間では、個人が活躍できる世界がもっと広がっていくだろう」(山村COO)

BASEの事業基盤は、ネットショップを開設するBASE事業を主軸に、ショップオーナーが利用できるオンライン決済の「PAY.JP」と、オンライン決済を利用するユーザー向けのID決済「PAY ID」で構成されるPAY事業がある。

昨年1月~9月期、PAY事業の売上高は前年同期比で39%の増加を記録した。PAY事業の損失は、前年同期の1億円から7200万円に縮小した。また、BASEは小規模の事業主に資金を提供する「YELL BANK」サービスを展開しているが、YELL BANKを含む「その他事業」の売上高は6倍以上に膨れた。

「EC化率はあらゆるセクターで上昇を続けていく。BASEはこれからも、個人がより活躍できるプラットフォームを作り上げていきたい。インターネットの空間では、個人が活躍できる世界がもっと広がっていくだろう」と山村氏は話した。

|インタビュー・文:佐藤茂
|写真:BASEの山村兼司COO(撮影:多田圭佑