イーサリアムの価格推移は? これまでの値動きと今後の予想を紹介

仮想通貨取引をしている人なら必ず耳にする人気銘柄のひとつがイーサリアム(Ethereum)。本記事では、ビットコインに次ぐ時価総額を誇るイーサリアムの価格推移、将来性などを解説する。
イーサリアムの価格推移と今後の予想

上記のチャートは、イーサリアムの2016年~2022年の値動きを表している。イーサリアムの価格推移と今後の予想は以下の通りだ。
- 2016年 TheDAO事件
- 2017年 バブル状態
- 2018年 バブル崩壊
- 2020年 コロナショック
- 2021年 史上最高価格更新
- 2022年 仮想通貨市場全体の下落
- イーサリアムの今後の価格推移予想
それぞれについて、詳しくご説明しよう。
2016年 TheDAO事件

2016年は仮想通貨の知名度が上昇する前の年であり、年初から順調に価格が上昇を続け3月には約1,600円を記録。しかし、この年はイーサリアムにとって歴史的な出来事であるTheDAO事件が発生している。TheDAOはイーサリアム上にトークンを発行し、ICOを行ったところ6月にハッキングされ、約360万ETH(約52億円)が盗まれる事態となった。
送金してから一定期間の間は資金を使用できないことから、ハードフォークにより送金記録を取り消すことで問題を解決した。これに納得しなかった人々により、イーサリアムクラシック(ETC)が生まれている。TheDAO事件はTheDAOのシステムに欠陥があったことが原因であることや、資金が盗まれたという事実を無くす対応を取ったことから、以降の年末までの価格は大きく下落することなく横ばいに変動した。
2017年 バブル状態

2017年は、仮想通貨元年と呼ばれ、ビットコインを始めとする多くの仮想通貨が急激に値上がりした年である。イーサリアムも例に漏れず、なんと2018年の1月には18万円以上にまで価格が高騰した。
2018年 バブル崩壊

2017年にはバブル状態にあったイーサリアムだが、2018年にバブルがはじけ、大暴落に陥る。2018年には、イーサリアムの価格は1万円代にまで落ち込んでいる。この年は、G20サミットにて仮想通貨規制に関する議論が繰り広げられるなど、仮想通貨が世界的に大きな注目を集めた年であった。
2020年 コロナショック

2020年には、さまざまなDeFiサービスが注目を集め、基盤として使われているイーサリアムの人気も高まった。しかし、グローバルな疾病面と経済面の複合危機である「コロナショック」により、爆発的な値上がりは起こらなかった。
2021年 史上最高価格更新

2021年には、イーサリアムが史上最高価格を更新した。具体的には、53万円台にまで高騰したのだから驚きである。しかし、5月末に大手電気自動車テスラがビットコイン決済を停止したり、中国政府が仮想通貨への取り締まりを厳しくしたりといった要因から一度価格が下落している。
2022年 暗号資産の冬

2022年の仮想通貨市場は冷え込みを見せ、この1年間は「暗号資産の冬」と評されている。世界金融は年明けからロシアによるウクライナ侵攻で不安定となり、アメリカの政策金利の上昇で市場は冷え込んだ。仮想通貨業界にスポットを当てれば、アメリカの大手仮想通貨取引所の出金停止問題のほか、5月のTerra(LUNA)の崩壊「テラショック」が起き、さらに6月には「セルシウスショック」が畳み掛けた。
これらによって仮想通貨全体の価格が暴落し、もちろんイーサリアムも例外ではなかった。2022年の初頭は42万円台だった価格は、6月には一時13万円台を割り込むまで落ち込んだ。
その後、徐々に復調を見せ、8月には約26万円にまで回復した。イーサリアムはアップデート前後の時期に価格上昇が起きやすく、9月にアップデート「The Merge」を控えていたため、その期待感が価格に表れたかたちだ。
だが、14日のアップデート実施後は価格が下落し、20万円台を切った。これは期待感を先取りした「買い」から価格は上昇したものの、実施後、いわゆる「事実売り」が発生したということだ。その後も低調が続き、仮想通貨業界は雪解けの気配を見せないまま、2023年を迎えた。
2023年の値動き予想

年明け後、価格は1,550ドル(約20万円)あたりで推移していたが、2月に入ってからは上昇傾向にある。前段でも触れた通り、イーサリアムはアップデート前後の時期に価格上昇が起きやすい。2023年は大規模アップデートが2つ予定されており、そのうちの一つが3月に控えている。今後の値動きには十分な注意が必要だ。
予定されているアップデートは、「Shanghai(上海)」(2023年3月頃)、「The Surge(シャーディング)」(年内)である。
「Shanghai(上海)」は、The Merge後初のアップデートであり、実施によってステーキングされたイーサリアムの引き出しが可能になる。このため、価格への影響が注目されている。ステーキングされているのは供給量の13.2%に当たる1,600万イーサリアム(約3兆1,800億円相当)で、また、ステーキング参加者には年利4%〜6%の報酬が分配されている。いずれもShanghaiアップデート後に初めて引き出しが可能となる。なお、ステーキングされているイーサリアムは含み損状態にあるため、出金されても売却される可能性は低いというのが大方の見方ではあるが、引き続き値動きには注視が必要だ。
また、Shanghaiよりも注目されていると言って良いのが、「The Surge(シャーディング)」だ。これは、長年イーサリアムを悩ませてきた「スケーラビリティ問題」を根本的に改善するアップデートである。スケーラビリティ問題の解消によって、イーサリアムのトランザクション手数料が下がり、処理速度が早くなる事が見込まれている。
このアップデートに先駆けて昨年9月に行われた「The Merge」は、イーサリアムのメインネットをPow(プルーフ・オブ・ワーク)からPoS(プルーフ・オブ・ステーク)に移行させるものだった。これはスケーラビリティ問題を改善するための基盤となるアップデートであり、前段で触れた通り、注目を集めたが、今年のThe Surgeはその最終形態となるためのアップデートと言え、The Merge以上の注目が寄せられることになるだろう。
イーサリアムの今後の価格推移予想
イーサリアムの最高値は約54万円(2021年11月)、最安値は約50万円(2015年10月)だ。短期的に見れば価格は乱高下し、現在については低調が続いているものの、2015年から2021年の約6年間で見れば価格は大幅に上昇している。今後も、長期的に考えれば、上昇していくことが予想できる。そのため、買いやすい今のうちにイーサリアムを保有しておくことをおすすめする。
海外の仮想通貨価格予想サイトが公表している2031年時点のイーサリアムの価格予想は次の通りだ(いずれも2022年7月の為替レートで計算)。「DigitalCoinPrice」は6,382ドル(約87万円)、「TechNewsLeader」は81,358ドル(約1100万円)、「PricePrediction」は83,492ドル(約1130万円)だ。2022年7月と比べて、2031年には約5〜75倍に高騰するという予想になっている。
また、米価格予想サイト「CoinPriceForecast」も、イーサリアムの価格は年々上昇傾向にあり、2025年末には3,098ドル、2028年には4,000ドルを超えると予測している。
イーサリアムの共同創設者であるヴィタリック・ブテリン氏は、イーサリアム開発の進捗状況を2022年時点で50%だと説明し、「The Merge」の完了で60%に達したと言われている。イーサリアムはさらなる進化を遂げる事が期待されており、特に今年はこれまでイーサリアムの将来性を左右するポイントとして挙げられてきた「スケーラビリティ問題」の解消が予定されているため、飛躍的に価格が伸びる可能性もある。今のうちに購入しておいて損はないだろう。
イーサリアムの将来性を左右するポイント
イーサリアムの将来性を左右するポイントは、以下の4つだと考えられる。
- スケーラビリティ問題を解決できるか
- 仮想通貨の普及・実用化が進むか
- DeFiやNFTのサービスが普及するか
- イーサリアムキラー銘柄よりも優位でいられるか
それぞれについて、詳しくご説明しよう。
スケーラビリティ問題を解決できるか
スケーラビリティ問題とは、ネットワークの利用負荷が増大することで発生する問題であり、イーサリアムにおけるスケーラビリティ問題は、利用者の増加による処理速度の遅延と手数料の増加だ。イーサリアムが普及して利用が増えるほど問題が大きくなるため、スケーラビリティ問題を解決できるかどうかがイーサリアムの将来を決めるといっても過言ではない。
解決策として期待されている方法には、ブロックチェーンの外に新たなネットワークを構築し、取引を効率化させるライデンネットワーク、イーサリアムを補完する形で新たにブロックチェーンを形成するセカンドレイヤー・ソリューションのPolygon(MATIC)が挙げられる。
仮想通貨の普及・実用化が進むか
サトシ・ナカモト氏によって論文が発表され、2009年1月に世界初の仮想通貨であるビットコインが誕生した。その後、さまざまなアルトコインが誕生し、仮想通貨に関心を寄せる人や実際に仮想通貨を保有する人は増えていると言えるだろう。
しかし、そうはいってもまだ仮想通貨を保有していない人が全人口のうちの大半を占めている。また、仮想通貨を支払いに使えるサービスは少ないため、仮想通貨を保有している人のほとんどが投資や投機を目的としていると考えられる。
今後仮想通貨が広く普及し、ほとんどの人々が法定通貨のように仮想通貨を所有する世の中が実現すれば、イーサリアムの価格も高騰するだろう。仮想通貨の普及・実用化が進むかも、イーサリアムの将来性を左右するポイントのひとつだと言える。
DeFiやNFTのサービスが普及するか
先述したとおり、イーサリアムのブロックチェーンは、さまざまなDeFiおよびNFTサービスに利用されている。ちなみに、DeFiとNFTについての概要は以下のとおりだ。
DeFiとは
DeFiとは、仮想通貨を利用した金融サービスのことである。銀行などの従来の中央集権型金融サービスとは違い、ブロックチェーン上に構築しているため分散型の構造となっている点が特徴的だ。詳しくはこちらの記事を参照していただきたい。
中央集権型ではない故に、手数料が安かったり世界中で利用出来たりといったメリットがある。また、「流動性マイニング」や「レンディング」といった方法をとれば、DeFiを利用してお金を稼ぐことも可能だ。ちなみに、DeFiのアプリケーションとして特に有名なものとしては、以下の3つがあげられる。
- WBTC(Wrapped Bitcoin)
- Compound
- MakerDAO
NFTとは
NFTとは、代替不可トークンという意味を持つ用語で、偽造が不可能なデジタルデータのことである。これまではデジタルデータに価値を付与することは難しかったが、NFT技術の登場によりデジタルアートや音楽が高価で取引されるようになった。NFTを利用したゲームも注目されており、ゲーム内で現実世界のお金を稼いだり、異なるゲーム間でキャラクターやアイテムを使いまわしたりできる。詳しくはこちらの記事を参照いただきたい。
これらDeFiやNFTのサービスが今後さらに普及すれば、基盤を形成しているイーサリアムの人気も高まり、価格が高騰すると考えられるだろう。以上のことから、イーサリアムの将来性を左右するポイントのひとつに、「DeFiやNFTのサービスが普及するか」があげられる。
イーサリアムキラー銘柄よりも優位でいられるか
数あるアルトコインのなかには、「イーサリアムキラー」と呼ばれる銘柄が存在する。イーサリアムキラーとは、イーサリアムが抱えるスケーラビリティ問題を解消している仮想通貨のことだ。例えば、以下の銘柄がイーサリアムキラー銘柄だと言われている。
- ADA(エイダコイン):仮想通貨のなかで初めて安全性が完全に確立されたとされている。
- SOL(ソラナ):DeFi領域で活発な活動が見られる仮想通貨銘柄。
- Fantom/FTM(ファントム):金融分野に精通している。ステーキング向きな仮想通貨銘柄。
- Polkadot/DOT(ポルカドット):Web3.0を目指しており、高い技術力を有している。
イーサリアムが今後も人気を博し続けるためには、上記のようなイーサリアムキラー銘柄よりも高い技術力を持ち続けなければならない。「イーサリアム2.0」へのアップデートなどを積極的に行うことで、ライバル通貨よりも優位に立てれば、イーサリアムの将来は明るいだろう。
イーサリアムキラー銘柄よりも優位でいられるかという点も、イーサリアムの将来性に大きく関わるポイントだ。
イーサリアム基礎情報
ビットコインやリップルなどの仮想通貨には発行枚数の上限が設けられているが、イーサリアムは主要な暗号資産のうち唯一発行上限が設けられていない点が特徴だ。発行上限があるビットコインでは発行枚数の急激な増加を防ぐためにマイニング報酬を半分にする「半減期」も設定されているが、上限のないイーサリアムにおいてはそのような措置がないため、安定供給を実現できると言われている。
また、イーサリアムは仮想通貨であるだけではなく、ブロックチェーンプラットフォームとしての役割も持っている。そのため、分散型アプリケーション(Dapps)を構築することや、独自トークンを発行する事ができる。また、スマートコントラクト機能も備えている。
分散型アプリケーションは中央管理者なしで分散管理されるアプリケーションのことを指し、スマートコントラクトは管理者が不在でもブロックチェーン上で取引を自動化して、アプリケーションを動作することができるシステムだ。これらによって情報漏えいのリスクやデータ改善などの内部不正を防ぐことができることから、イーサリアムはDeFiやNFTアート、NFTゲームなど多くの用途に実装されている。
まとめ
イーサリアムは、スマートコントラクト機能などの優秀な技術が搭載されている人気の仮想通貨だ。一方で、スケーラビリティ問題やイーサリアムキラー通貨などの存在によって、地位が脅かされるのではないかと懸念している人もいる。今後「イーサリアム2.0」へのアップデートが完了し、他の仮想通貨に比べ圧倒的な技術力を持つことができれば、イーサリアムの地位は確かなものとなるだろう。また、DeFiやNFT関連のサービスの普及も、イーサリアムの価格推移に関係するものと思われる。
ぜひ本記事で紹介した内容を参考に、これからも進化を遂げるであろうイーサリアムを保有してみてはいかがだろうか。
関連FAQ
イーサリアムとは?
イーサリアムは仮想通貨であるだけではなく、ブロックチェーンプラットフォームとしての役割も持っている。分散型アプリケーション(Dapps)や独自トークンを構築でき、スマートコントラクト機能も備えている。それらの特徴からDeFiやNFTアート、NFTゲームなど多くの用途に実装されている。
イーサリアムの2023年の動きは?
2023年は大規模アップデートとして、「Shanghai(上海)」(2023年3月頃)、「The Surge(シャーディング)」(年内)が控えている。アップデートの前後には価格が上昇する傾向にあるため、値動きに注目したい。
イーサリアムアップデート「Shanghai(上海)」とは?
「Shanghai(上海)」は、ステーキングされたイーサリアムの引き出しを可能にするアップデートで、3月中に実施される予定だ。供給量の13.2%に当たる1,600万イーサリアム(約3兆1,800億円相当)と、ステーキング参加者に分配される年利4%〜6%の報酬の引き出しが可能となる。
イーサリアムアップデート「The Surge(シャーディング)」とは?
「The Surge(シャーディング)」とは「スケーラビリティ問題」を根本的に改善するアップデートである。この問題の解消によって、トランザクション手数料が下がり、処理速度も上昇する効果が見込まれている。これまで、スケーラビリティ問題の解消がイーサリアムの将来性を決める鍵と言われてきたため、このアップデートに大きな注目が集まっている。
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