「リブラ」よくある6つの質問──「仮想通貨?」 「フェイスブックとの関係は?」ほか【19年11月更新、Libra】

仮想通貨・暗号資産にあまり関心がないという人も巻き込み、大きな話題になっているFacebookのLibra(リブラ)。「そもそも仮想通貨なの?」「ビットコインみたいなもの?」「結局何ができるの?」など素朴な疑問を抱いている人は少なくないだろう。10月にはカリブラのキャサリン・ポーター氏が来日、ブロックチェーンカンファレンスでリブラ構想について語った。リブラに関してよく挙げられる疑問に答えてみよう。

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Q1 リブラは仮想通貨なのか?

→A1 位置づけは依然あいまい。金融庁は「仮想通貨ではない可能性」

リブラはまだ構想がホワイトペーパーの形で発表されただけで、不透明な部分も大きい。そもそもその構想がすべて実現するとも限らない。また「仮想通貨」(暗号資産)の定義も国や地域によって異なるため断定できない。

ホワイトペーパー公表後、資金決済法上の仮想通貨の定義からして「本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建て資産を除く」の条文に該当せず、仮想通貨に分類されるとの見方があった。

しかし金融庁は、リブラが米ドルやユーロなどの法定通貨を裏付けとしていることから、 「暗号資産(仮想通貨)にあたらない可能性が高い」との見解に傾いているようだ。このため、法的には一般的な資金取引や送金とみなされる公算が大きいと日経は報じている

依然、評価が定まっていないこともあって、現状では仮想通貨ではなく「デジタル通貨」という表現を用いられることも多い。

ちなみに単位は「Libra(リブラ)」で、「天びん座」の意味を持つ。

Q2 ビットコインとの大きな違いは?

→A2 価格が固定したステーブルコインであること

ビットコインなどの仮想通貨・暗号資産は価格が大きく変動するため、支払い・決済には使いづらいという側面がある。こうした点を解消する目的で発行されているのがステーブルコイン。

ステーブル(stable)とは「安定した」という意味で、通常、米ドルなどの特定の法定通貨を担保に価値を裏付け、価格を安定させる。代表的なものに「テザー」「ジェミニダラー」(ともに米ドル)などがある。世界最大の仮想通貨取引所バイナンスも発行を計画している。

ステーブルコインに対する期待は大きく、IMFも報告書でデジタルマネーや法定通貨にペッグされた仮想通貨が普及が進むにつれ、現金や銀行預金が取り残される可能性を示唆している。

リブラはまた、単一の法定通貨を担保にするのではなく、複数の国の通貨(米ドル、ユーロ、英ポンド、日本円)や短期国債を担保にしているバスケット型であることも特徴だ。このリブラの裏付け資産を総称して「リブラリザーブ」と呼ぶ。

Q3 Facebookが発行するのか?

→A3 発行は独立したNPO「リブラ・アソシエーション(リブラ協会)」。その中にFacebook(子会社カリブラ)が含まれる。

リブラ協会Webサイトより
リブラ協会Webサイトより

「カリブラとフェイスブックは別」

フェイスブックは「Calibra」という子会社を作っている。同社が、リブラのネットワークをベースにした金融サービスの開発と運営を行なう予定で、 リブラのやりとりに使用するデジタルウォレットを提供する。

カリブラのキャサリン・ポーター氏はブロックチェーンカンファレンスb.tokyoに参加するため来日、2019年10月2日に登壇して以下のように述べている。

「カリブラは、フェイスブックから完全に独立している。金融データはSNSとは切り離す。リブラのデータは、フェイスブック上のターゲット広告には使わない」

Q4  リブラ協会とはどんな組織なのか?

→A4 Facebookを含む28社が創立。本部はスイス。VISAやマスターカード、eBayやUber、スポティファイなどが名を連ねる。

リブラを運営するのはリブラ協会で、その本部はスイス・ジュネーブ。上述の企業のほかに、ライドシェアのリフト(Lyft)や大手ベンチャーキャピタルのアンドリーセン・フォロウィッツ(Andreessen Horowitz)、電気通信のVodafoneグループなどが含まれる。 

リブラ協会は、リブラブロックチェーンを監督し、リブラの価値の安定をはかるべく、リブラリザーブを管理する。

協会には大きく分けて「評議会」「理事会」「諮問委員会・経営陣チーム」があり、評議会が実際の協会運営を行う。そのメンバーになるには、リブラとは別の暗号資産「Libra Investment Token(LIT)」を最低1000万ドル購入するなどの条件がある(購入者には1000万ドルのLIT購入につき、1議決権が付与される)。

【追記】VISA、マスターカードが脱退の意向を示していると大手メディアで報じられたほか、PayPalは正式に脱退した。ツイッターのジャック・ドーシーCEOはリブラへの参加を「絶対にない」と表明している(2019年10月27日記事)。

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Q5 ブロックチェーンは使っているのか?

→ A5 今後開発する「Libraブロックチェーン」を使う

ホワイトペーパーによると、構想の基盤となるブロックチェーン「Libraブロックチェーン」は今後、開発が進められる。その開発には、スマートコントラクトを実装するために新しく開発されたプログラミング言語の「Move」が使用されるという。

初期の段階では、特定の参加企業がノードを運営して承認をおこなうコンソーシアム型のブロックチェーンだが、目標として、ネットワークを誰でも運営に参加できる非許可型にすることを掲げている。

Q6 何ができるようになるのか?

→ A6 アプリを使って国境を越えた送金ができるようになる

カリブラが、リブラのやりとりに使用するデジタルウォレットを提供する予定。Facebookは2015年から、18歳以上のユーザーを対象にMessengerで個人間送金できる仕組みを提供しており、ここでも使えるようになると見られるが、個人間送金機能は日本では提供されていない。

なおFacebookの利用者は世界で23億2000万人とされる(2018年12月末時点での月間アクティブ利用者)。

銀行口座を持たない世界中の人のためになる

なお前述のポーター氏は、銀行口座を持たない人たちが企業側にアクセスしやすくすることの重要性を指摘しており、「これまでお金を貯める機会のなかった人たちをグローバルなビジネスに導くことになる」などと述べている。なお世界銀行によれば、世界で約17億人の成人が金融へのアクセスを欠く状態にあるという。

中国の政府関係者が軒並みリブラを否定

元中国議会高官が、中国の中央銀行が独自の国家デジタル通貨を最初に発行する可能性が高いと述べ、「リブラ(Libra)」は失敗する運命にあると主張した(2019年10月28日記事)。

また中国の規制当局高官も2019年10月28日、リブラは国際為替規則に従わなければならず、そうでなければ「禁止されるべき」と述べた(2019年10月29日記事)。

カリブラのビジネス責任者が来日、10月のイベントに登壇

リブラの構想が発表された後、世界各国の首脳や金融関係者が即座に反応している。その内容は厳しくネガティブなものも多い。支援する企業の一部が、規制当局からの高まる圧力を理由に手を引くことを検討していると報じられている

実際にホワイトペーパーに書かれた構想・計画がどれだけ実現されるのは未知数といえよう。リブラ協会には、日本からはマネックスグループが加盟申請しているが、 2019年8月29日時点では日本企業は名を連ねていない。日本ではFacebookメッセンジャーの送金機能も提供されておらず、リブラに関する情報もあまり入ってこないのが現状だ。

こうした中、10月2・3日に都内で開かれたブロックチェーンカンファレンス「b.tokyo」に、Calibraビジネス開発ディレクターのキャサリン・ポーター氏が来日、登壇した。フェイスブックの関係者が公の場で、リブラ構想について日本国内で語るのは初めてのことだった。

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文、構成: 濱田 優
編集: 小西雄志
写真:Shutterstock