ブロックチェーンのスケーラビリティ(スケーリング)問題とは? 仮想通貨ごとに解説

ビットコインイーサリアムなどの代表的な仮想通貨(暗号資産)は将来性の高さから注目されているが、普及を拡大する上で問題を抱えている。そのなかでも代表的なものがスケーラビリティ(スケーリング)問題である。

現状のシステムでは利用の増大に対応することは難しく、処理速度の低下と手数料の増加を招きやすい。仮想通貨を決済手段、DappsNFT分野での利用を拡大させるためには解決が必要な課題だ。本記事では仮想通貨が抱えるスケーラビリティ問題について解説し、現在有力とされている解決策についても紹介する。

ブロックチェーンのスケーラビリティ(スケーリング)問題とは?

スケーリング、スケーラビリティとは「拡張性」という意味であり、システムやネットワークが利用負荷の増大に対応できる度合いのことを指す。ブロックチェーンにおけるスケーラビリティ(スケーリング)問題とは、利用者の増加によるシステム負荷の増大によって懸念されるリスクのことだ。スケーラビリティ問題を放置すると、仮想通貨を利用するにあたって支障をきたすことから、今後の普及のためにも問題の解決が急務とされている。

懸念されるリスク

スケーラビリティ問題で懸念される具体的なリスクとして、処理速度の低下と手数料の増加が挙げられる。代表的な仮想通貨のブロックチェーンでは、利用者の増加によって処理速度が遅くなり、円滑に取引が進まなくなってしまう。支払う手数料も高額になり、普及が進むほど決済手段としての利便性を失ってしまうのだ。

ブロックチェーンは、従来の銀行などとは異なり、中央集権的な管理者が存在しないシステムとなっている。そのため、仲介手数料がかからず低いコストで利用できるというメリットがあるのだが、スケーラビリティ問題により手数料が増加すればその利点は失われる。スケーラビリティ問題が解決できなければ、仮想通貨を利用する魅力が低下することにつながるのだ。

スケーラビリティ(スケーリング)問題を抱える代表的な仮想通貨

スケーラビリティ問題を抱えるのは、ビットコイン(BTC)イーサリアム(ETH)の代表的な2種類の仮想通貨だ。それぞれが抱える問題について解説する。

ビットコイン(BTC)

ビットコインが抱えるスケーラビリティ問題はブロックサイズにある。ビットコインのブロックサイズは1MBであることから、記録する取引量がブロックの限界に達しやすい。ブロックの容量が重くなるほど処理速度は遅れる。このような状況で処理速度を上昇させると、取引の記録と承認を行うマイニングにかかる手数料が膨れ上がる。結果的に、ビットコインの利用者が負担する手数料も増加してしまう。

イーサリアム(ETH)

イーサリアムは、スマートコントラクトによってトランザクション(取引)の実行を自動化できるが、ネットワークにより取引の承認を行う必要がある。利用者が増えるほど承認にかかる時間も増加し、処理能力を低下させてしまう。イーサリアムは、Dapps、NFT、Defi分野でも注目されていることから利用者が増加しやすく、近年ではネットワークへの負担も大きく増加し、ガス代と呼ばれる手数料も高くなっている。

ビットコインのスケーラビリティ問題の解決策

ライトニングネットワーク

ビットコインのスケーラビリティ問題を解決するには、できる限りブロックの容量に負担をかけないことが重要である。例えば、取引をブロックチェーンの外で行うオフチェーンにしてしまい、取引の結果のみをブロックに記録してしまえば、処理速度の向上と手数料の低下が期待できる。このようなオフチェーン取引を円滑に進めると期待される仕組みがライトニングネットワークだ。

オフチェーン取引では、取引を行う二者の間に取引を行う度にペイメントチャネルを立ち上げる必要があるが、ライトニングネットワークは新規に立ち上げる必要をなくし、既存のチャネルをつないで取引を行えるようにしている。ペイメントチャネルによる新たなネットワークを構築し、取引を効率化させることが期待される。

サイドチェーン

サイドチェーンはブロックチェーンの側鎖となる概念であり、メインのブロックチェーンとは異なるブロックチェーン上でトランザクションを処理する仕組みだ。この仕組みでは、ビットコインを直接アップデートしなくても、ビットコインの機能を拡張できる。サイドチェーンはビットコインをメインチェーンとして、ペグという方法で結びついている。

具体的な例を挙げると、Liquid (リキッド)はビットコインの取引を円滑に進めるためのサイドチェーンであり、Rootstock (ルートストック)はビットコインにスマートコントラクトを導入し拡張性を高めている。

イーサリアムのスケーラビリティ問題の解決策

ライデンネットワーク

ライデンネットワークは、ビットコインのライトニングネットワークと同様のアプローチでの解決策であり、ライトニングネットワークをイーサリアムに対応させたものである。ライトニングネットワークと異なる点は、ICOを行い独自トークンを発行しており、Githubにオープンソースを公開して透明性を高めていることだ。ただし、どちらのネットワークも取引の効率化が期待されるのは少額取引であり、高額決済への対応が難しいという問題を抱えている。

セカンドレイヤー・ソリューション

セカンドレイヤー・ソリューションは、メインブロックチェーンを補完する形で存在するブロックチェーンのことである。イーサリアムをレイヤー1として、セカンドレイヤー(レイヤー2)上で取引を実行する。具体的な事例としては、Polygon(MATIC)が挙げられ、毎秒65,000件の取引処理速度と、イーサリアムよりも安い取引手数料からイーサリアムのスケーラビリティ問題を解決するプロジェクトとして注目を集めている。

ハードフォークもスケーラビリティ問題の解決策の1つ

ハードフォークはブロックチェーンを分岐させることで新たな仮想通貨を誕生させることであり、分裂させることで取引の効率化が期待できる。具体的には、ビットコインではビットコインキャッシュ(BCH)、イーサリアムではイーサリアムクラシック(ETC)が挙げられる。

ビットコインキャッシュは、ブロックの容量不足に対して容量を増やすアプローチでの解決を計り、1ブロックの容量を8MBに拡大させた。現在はアップデートで32MBまで容量を増やしている。イーサリアムクラシックはイーサリアムのTHE DAO事件を経緯にハードフォークが行われているため、必ずしもハードフォークの目的がスケーラビリティ問題の解決とは限らない。

スケーラビリティ問題を意識するなら、幅広い仮想通貨を購入する

代表的な仮想通貨であるビットコイン、イーサリアムもそれぞれ問題を抱えている。近年ではビットコイン、イーサリアムの問題を解決すると期待される仮想通貨も複数あるが、将来的にどの仮想通貨が問題を解決するかはまだわからない。スケーラビリティ問題を意識するなら、ビットコインとイーサリアムだけでなく関連銘柄を広く購入することを推奨する。